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田舎の定義と、最大の選択ミス

『田舎』という言葉は、使う人の立場によって定義が大きく変わる、非常に罪深い単語だ。

東京などのいわゆる『ガチの都会』人間にとっては、地方の県庁所在地でさえ容赦なく「田舎」だろう。だが、地方の住民にとって、自分の県の県庁所在地は決して田舎ではない。バリバリの都会とは言えないまでも、それに準ずるランクにはいるという気持ちがあるのではないだろうか。

それでも、東京の人間も県庁所在地民も、満場一致で「……ここは田舎だな」と口を揃える場所は確実に存在する。車を十分走らせてもポツポツと数軒の集落が続くばかりで、見渡す限りコンビニ一つ、お店一つないような場所だ。

僕が生まれ育った岩手の海辺の街は、そこまでの真の田舎ではなかった。沿道にお店が並び、全国チェーンも数軒はある。ただ、ちょっとしたレジャー感覚で買い物をしたければ、車で一時間以上走って大きなお店へ向かう。僕たち家族にとって、それはもはや小さな「旅行」だった。

そんな街で高校まで過ごせば、自ずと「都会」への憧れが芽生える。自然が嫌いなわけじゃない。けれど、YouTubeやテレビ越しに見る都会の暮らしは、子供の僕にはどれも眩しく見えた。それに、大学に行かなければ、変わり映えのしない、この閉塞感のある暮らしが一生続くのではないか、という漠然とした恐怖もあった。

そうした恐怖心に駆られて受験勉強に励んだ僕は、受験がうまく進んだこともあって、晴れて「田舎脱出!」を果たした。岩手から二つ南の、福島県にある大学へ。

……と、ここで「素直に東京の大学を選べばよかったのでは?」なんてツッコミが聞こえてきそうだ。答えはシンプルである。田舎育ちで人混みに耐性がない僕に、ガチの都会(東京)は恐ろしすぎた。都会への憧れはあれど、人が多すぎる場所は怖い——そんなヘタレで人見知りの僕が、ビビり散らかした末に選んだのが、人口数十万ほどの「ちょうどよさそう」な県庁所在地にある大学だった。

とはいえ、キャンパス周辺は地元と同じか、それ以上にお店がない、田舎のような場所で、街の中心街へ出るには、電車で二駅揺られなければならない。それでも、車で一時間以上かけなければ味わえなかった「街」が数十分で行けるのだから、悪くはない。何より、初めての一人暮らしだ。親に叱られることなく心ゆくまでゲームができる、天国のような環境に、僕はすっかり酔いしれた。

実際、入学してからの二週間ほどは、最低限の講義に出る以外、アパートに直行してゲーム三昧だった。待ちに待った大好きなシリーズの新作が四月一日に発売され、連日徹夜でプレイした。フラフラの状態で講義にだけ出ては、またコントローラーを握る。総プレイ時間が百時間に達し、ようやくクリアした頃には、四月も中旬になっていた。

……だが、ある日、学食で周囲の賑やかな声にふと目を向けた僕は、ある事実に気づいてしまった。

(あれ……もしかして、みんなもうグループ作ってる……?)

そう思って注意深く講義にきている人たちを観察していると、多くの人が隣の席の誰かと親しげに話している。そういえば……大学に入ってから、僕って誰かとまともに話したっけ? 記憶を掘り起こしても、売店や食堂のレジでお礼を言ったくらいだった。

頭の中がゲーム一色で周りを気にする余裕もなかったが、ようやく正気に戻ってみれば、僕はいつの間にか見事な「ぼっち」になっていたのだ。

高校の頃は、ゲームや漫画の話で盛り上がれる友人がいたおかげで回避できていたが、彼らもそれぞれ別の大学へ進んでしまった。ここでは、一から友人作りを始めなければならない。

別に一人でも構わない……と思えるのは、漫画の主人公レベルの強靭なハートの持ち主だけだ。あいにく僕は、どこにでもいる小市民だった。

焦った僕は、まだ校内で続いているサークルの勧誘を見て、「これだ!」とばかりにどこかのサークルに入ることを決意した。ただし、ハードな活動はごめんだ。ゲームの時間はしっかり確保しつつ、「友人や先輩を作る」という目的を果たせる、ゆるいサークルが理想だった。

アパートに戻り、勧誘で渡されたチラシをパラパラと眺めてみたが、どれもピンとこない。そこで、大学のページで公認サークルの一覧を探し、スマホで眺めてみることにした。

(さて、どこにするか……)

運動系は練習が多そうで、ゲームの時間が削られるかもしれない。あくまで勝手な思い込みだけど、ひとまず除外だ。文化系の一覧を上から下へとスワイプしていったが、漫画やゲームに関するサークルは見当たらない。

少し残念な気持ちでもう一度、名前をきちんと見直していくと、あるサークル名に目が止まった。

『旅行同好会』

旅行サークルなら、旅行に行く時以外はそこまで拘束されないんじゃないか? ライフスタイルをゲーム優先にしたい自分には、ちょうど良さそうだ。少し考えた末、ちょっと覗いてみるかと、サークルの活動場所をスクリーンショットに収め、いつものように日課のゲームを始めたのだった。


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