子
王立巨人対策局特設第五部隊
通称G5
G5設立の翌日、トーマの妻は息を引き取った。
「やめろ!!トーマ!!」
「離せぇええええ!!」
叫ぶトーマ。
その手には剣。
局員達がトーマを抑える。
「あいつを、あいつをぶっ殺してやる!!!」
「離してやれ・・・」
男の声。
「エドガーさん・・・でも・・・」
「いいから離してやれ」
「で、でも・・・」
「いいから離せ!!」
局員たちは手を離す。
◆
「ぶっ殺してやるよ」
巨人の前に立つ、トーマ。
その目には涙、その手には剣。
「はにゃ?」
不思議そうに赤ん坊はこちらを見ている。
「うぉおおおおおお!!!」
一心不乱に斬りかかる。
その時、トーマの脳裏にある光景が浮かんだ。
妻と行った、お花畑。
綺麗な花々が、風に乗って飛んでいた。
「ねぇトーマ・・・」
「なんだジャスミン・・・」
「私、子供が欲しいわ・・・」
「無邪気で可愛い、暴れん坊で、泣き虫の子が」
トーマの剣が一瞬止まる。
トーマの大声に赤ん坊が反応していた。
「ふぇ・・・」
「来るぞ!!!」
轟音にそなえる局員たち。
すると。
「えへへ・・・えへっえへっ」
巨人が笑う。
「なんだ!?」
トーマが剣の峰で
赤ん坊の足をくすぐっていた。
「えへっえへへへ・・・」
小人の国に、つかのまの平穏が訪れた。
「捕まえろ!!」
独房に入れられるトーマ。
◆
トーマは独居房の中、鉄格子の間から
星空を眺める。
「なぁジャスミン・・・」
「俺は決めたよ・・・」
「俺は奴が大人になるのを、この目で見届ける」
虫の声がかすかに聞こえる。
「その時奴が、この国を滅ぼそうとしようものなら」
「俺が奴を殺してやる・・・」
◆
王立巨人対策局特設第五部隊
通称G5
「頭が冷えたか、トーマ」
独房の前に現れた男。
「エドガー・・・」
十数年前、二人は同期だった。
エドガーは貧民の生まれで
トーマは一般家庭の生まれ。
身分の違いはあれどかつては同期。
独房の前に座り込むエドガー。
「なぁトーマ・・・」
「あの頃のおまえはどこにいったんだ・・・」
「なに・・・?」
「国のために命を惜しまず、自らの理想を語る。そん熱い志を持っていた青年のお前だよ」
「お前に言われたかねーよ、エドガー」
エドガーは下を向く。
「最初の任務を覚えているか、トーマ」
「・・・」
王立巨人対策局に入った二人が最初にやらされた任務は、後始末。王立巨人対策局のお偉い方が飲んだ場を片付ける後始末の仕事。食いかけの食べ物、飲みかけの飲み物、吐瀉物に、汚れた避妊具。
「忘れもしねぇさ、あれはクソだった・・・」
「あぁ、そうとも・・・この組織は腐ってる・・・俺はそう思っていた・・・」
エドガーは石を拾って、それを見つめる。
「王立巨人対策局、大層な名だが、蓋を開けてみりゃただの天下りのクソ組織。誰もまともに仕事していない、どころか、巨人が現れるなんてこれっぽっちも思っちゃいない・・・」
「エドガー・・・」
「知っているか、トーマ」
「なにを?」
エドガーは石を地面に叩きつける。
「局のお偉いさん方は、みな隣国へ亡命したそうだ」
「なんだって・・・?」
「残ったのは局長ただひとり・・・」
トーマは目を細める。
「まさか・・・」
「そうだ・・・巨人の育成を決めたのは、他でもない局長だ・・・」
上層部が全員他国に亡命。
小人の国は巨人という爆弾を抱えている。
「巨人が暴れに暴れ、この国が崩壊した後に、この国を乗っ取るつもりだ」
「乗っ取るったって」
「核で吹き飛ばす」
「なんだって!?そんなバカな・・・」
「そんなことしたら・・・」
「あぁ、小人の国は地獄と化すだろう」
エドガーは独房の錠を解く。
「だから、トーマ・・・お前の力が必要なんだ」
「おまえ・・・」
トーマは独房の外に出る。
「G5には、お前が必要なんだ」
こうしてトーマは
王立巨人対策局特設第五部隊
第一課 食糧配給課 課長の職務を
与えられたのであった




