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食糧配給課

トーマの目の前には

数百人をも超える女の姿。


十代後半から三十代後半

様々な年代の女性たち。


昼下がりの王城の庭に

一同に集まっている。


足元にはバケツ。


「おい、エドガー、一体何が・・・」


エドガーは女たちの方を向いている。


「はじめろ!!」


エドガーの一声で、女たちが一斉に乳を放り出す。


「な、なにを!?」


慌てて目をそらすトーマ。


次の瞬間。


チーチーーチーチーーーーチーーーーー!!!


そこら中で鳴り響く、乳搾りの音。


「エドガー!?これは一体!?」


「・・・」


「やめ!!」


エドガーの一声で女たちが手を止め、乳をしまう。


王城の庭が静寂に包まれる。


「第二陣!!前へ出よ!!」


役目を終えた女たちが、後ろに並んでいる女たちと入れ代わる。


チーチーーチーチーーーーチーーーーー!!!


「エドガー!!」


男たちが次々とバケツを回収して、どこかへ運んでいる。


「トーマ、お前の仕事はこれからだ」


トーマの前に馬車が止まる。


「エドガー様!!準備万端です!!」


馬車の中から女が叫ぶ。


「行け、トーマ。任務を果たすのだ」


言われるがまま馬車に乗り込む。

ドドドッドドドッ

ずいぶんスピードが速い。

馬車の中は二人きり。

中は結構狭い。


「おっと!」


トーマの身体が女によりかかる。


「すまない!!」


慌てるトーマ。


「だ、大丈夫です・・・」


女は、やけによそよそしい。


「?」


黒縁眼鏡に、黒髪ロング、そして巨乳。

切れ長な目。


「やけに・・・エロいな」


「ふぇ?!」


トーマの不意の一言に女が狼狽する。


「す、すまない!!そんなつもりじゃ」


先程の女たちの異様な光景。

人生で見ることのないであろう、大勢の女たちの乳房。そして、汗の匂いと香水、母乳特有の異様な匂い。

トーマのエロスイッチはいつの間にかオンになっていた。


ドドドッドドドッ

馬車はさらにスピードを上げる。


「仕方ないですよね・・・あんな光景見せられたら・・・誰だっておかしくなってしまいますよね・・・」


女は頬を赤らめている。


「・・・」


二人は無言に。

馬車らしからぬ、重たい空気。


「ところで、君の名は?」


沈黙を破ったのはトーマだった。


「私の名は・・・」


その瞬間

キキッ!

馬車が止まった。


「着いたぞ!!とっととすませちまいな!!」


操縦士が二人に声をかける。

表へ出る。


そこには、倒れている

いや、仰向けの巨大な赤ん坊がいた。


「でかい・・・」


改めて見ると、でかい。


やっぱりでかい。


「トーマさん!!仕事してください!!」


見入ってしまったトーマに女が話しかける。


「こっちです!!」


女に案内されて、階段を上がる。


「まだか!?」


階段を上がる。


「まだなのか!?」


ひたすら、階段を上がる。


「ここです!」


そこは巨大な火の見櫓のてっぺん。

下には赤ん坊の顔が見える。


「これを持って!!」


「え?」


どでかいホースのような物を渡される。


「早くやってください!」


「え?」


女の口調が強くなる。


「やるって、なにを!?」


「ミルクに決まってるでしょうが!」


女の口調がさらに強くなる。


「やれって言ったって意味が」


「いいから、早くやれよ!」


女にケツを蹴られるトーマ。


一回りは下であろう、黒縁巨乳の眼鏡女にケツを蹴られた。


「え・・・えぇーーーーーーーーー!!!」


火の見櫓から、トーマは蹴落とされたのである。


「あぁーーーーーーー!!!」


赤ん坊の顔面めがけて、ホースごと落下していくトーマ。


ピタッ!!


ギリギリのところで身体が止まる。


「俺は・・・助かったのか・・・?」


「ふにゃ?」


赤ん坊がトーマに気づく。


そして、口を大きく開けた。


「食われる!!」


とっさにホースの先端を赤ん坊に向ける。


その瞬間。


火の見櫓から、あの女の声。

忌々しい巨乳女の声。


「ミルク砲、発射!!!」


プシャアアアアアーーーーーーーーー


「うぉおおおおおおお!!!」


赤ん坊の口に向かって放たれる

白い液体。


ホースの勢いに思わず手が離れそうになる

つかさず、力を入れる。


赤ん坊は嬉しそうに

液体を飲んでいる。


この独特な香り・・・間違いない


「赤ん坊の食糧(しょくりょう)だ」


液体の勢いが一瞬弱まる。


「追撃砲、発射!!!」


プシャアアアアアーーーーーーーーー


再び、ホースの勢いが増す。


「ぐっ・・・」


プシャアアアアアーーーーーーーーー


あまりの勢いに

持っている手が痺れてくる。


「もう・・・無理だ・・・手の感覚が・・・」


液体の勢いが、再度弱まる。


火の見櫓から声が聞こえる。


「これで最後だ・・・」


トーマは最後の力を振り絞り、ホースを握る。


「ファイナル・・・ミルクラッシュ!!!!!」


「うぉおおおおおおおおお!!!!」



「お腹いっぱいになって・・・寝たようですね」


女がトーマに話しかける。


「ハァハァハァ・・・死ぬかと思った・・・」


二人の目の前には

眠る巨人の赤ん坊。


「むにゃむにゃ」


目を閉じながら

口を動かしている。


「ところで・・・ドSメガネ女王さ・・・いや、君の名は・・・?」


トーマは隣の女に訊く。


「彼女の名は、ドエス・クリスティーナ、通称"ドエス"」


後ろを振り向くと、そこにはエドガー。


片手で黒縁メガネを外す、巨乳女。

顔を左右に振り、艷やかな黒髪をなびかせる。


「彼女は、王都大学を首席卒業」


「なんだって!?国一番の名門大学じゃないか!」


「その後、隣国への二年間の留学を経て王立巨人対策局へ入局」


「超エリートじゃないか!」


ドエスが口を開く。


「そして、自らの意志で特設第五部隊へ入隊したってわけ」


ドエスはトーマの肩に手を置き

耳元でささやく


「よろしくね、トーマ課長(かちょう)さん」


「フッ」


そして、蝋燭を消すかのごとく、優しく耳に息を吹きかけられた。



「むにゃむにゃ」


赤ん坊は、ぐっすり眠っているようだが


俺の()()は、まだ眠りたくないようだった。



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