第20話 ペンギン使い
試合は引き続き、新座西の先鋒・姫星さん対、甲府国際の中堅・太田さんとなった。
試合前、甲府国際の石井さんは太田さんに耳打ちをする。
太田さんの顔が引き締まった。
試合はまたも拮抗したがわずかに太田さんが勝利した。
姫星さんも善戦したのだが。
次は中堅戦となり、理恵と太田さんの試合だ。
序盤から理恵が圧倒して、21-8と太田さんを破った。
「私を出したことを後悔させてあげるよ」と石井さん
「私で終わらせる」と理恵も負けてはいない。
中堅理恵対大将石井さんだ。
コイントスで石井さんの先攻になった。
石井さんは1投目を穴の手前で止める。
理恵の1投目は、エアメールショットを狙うが穴の右側に落ちて止まった。
石井さんの2投目は穴の手前でやや左側で止める。
理恵の2投目エアメールショットが決まった。
石井さんの3投目は、穴の手前にある自分のビーンバッグへ重ねるように止まった。
「これは!」と思わず声が出た。
穴の周囲にビーンバッグを集め、最後に一気に落とす。
悪魔の左手が使った技だ。
横からさおりさんが言う「ペンギンというのは穴の周りに固まったバッグの“かたまり”を指す呼び名です」
ただ悪魔の左手と違うのは穴を塞ぐ形ではなく、前方に固めている点か。
理恵が戸惑う。
3投目もエアメールショットを狙うが、手前のビーンバッグが気になるのか、穴を越してボードから落ちてしまった。
そして石井さんの4投目。
手前2つを押し出すように投げ、手前にあった2つと今投げたものの3つが穴に入った。
一気に3つを穴へ沈めたのである。
4投目、理恵はスライドショットで入れたが7-10で石井さんが3ポイント獲得した。
次も石井さんは同じ手で来る。
これが山梨のペンギン使いだ。
「理恵さん、ゲットアラウンドショットです!」とさおりさん
理恵がハッと気づき、石井さんのペンギンブロックを回避しながら穴に入れる。
石井さんの顔が歪む。
理恵はゲットアラウンドショット中心に投げていく。
理恵の健闘むなしく試合は15-21で石井さんが勝った。
しかし石井さんに余裕は全くない。
「ごめん」と言いながら理恵が戻ってきた。
私で勝つ。
石井さんとの大将戦だ。
石井さんは穴の前にブロックを作ろうとする。
ビーンバッグを縦気味に持ちカットショットを投げる体制にする。
そして投げたビーンバッグは回転し石井さんのビーンバッグを左に弾いて穴に入った。
「なっ……」石井さんは声が出ない。
カットショットと押し出すプッシュショット。
さらにビリヤードのように角度を利用して弾く変化を組み合わせた複合技、楓スペシャルである。
これにより、穴の正面にビーンバッグを置き、ブロックする優位性が無くなる。
勝負は一方的な展開になった。
21-5。
私が完勝した。
石井さんはショックで見送りにも来なかった。
こうして実りある遠征となった。




