第12話 博士
私と理恵は目を合わせた。
そして、お互い「やるぞ」とアイコンタクトを交わす。
コイントスで博士が先攻になった。
博士はボードの穴の前でビーンバッグを止め、ブロックを作った。
「だったら」
エアメールショットが決まった。
どうだと思って博士を見るが笑みを見せている。
会場もエアメールショットを見ても無反応だ。
博士は自分のビーンバッグを押し込んで穴に入れ、今投げたビーンバッグを再びブロックの位置に止めた。
同じ展開ならと再びエアメールショットが決まった。
しかし先ほどと同じ反応である。
3投目も全く同じ。
博士は先ほど投げたビーンバッグを押し込み落とす。
そしてまたブロック。
私もエアメールショットで現在9-7でリードをしている。
博士の4投目。
今度は強めに低く投げ、前のを押し込むと同時に今投げたのも穴に入れた。
4バーガー。
会場が湧く。
私はそんなと思った。
押し込んだうえで、今投げたビーンバッグまで入れる。
そんな高等テクニックを初めて見た。
私の4投目。
壁は無くなった。
エアメールでいくか手堅いスライドショットでいくか。
一瞬迷った。
壁がないならリスクが高いエアメールショットよりもスライドショットでいくべきだ。
穴の手前で落とし、スライドして穴に入……らない。
穴の手前で止まった。
「ふふふ。今日初めてのスライドショットなのに、バッグの中身を均等にしなかったね。初歩的なミスだよ」
バッグの中身を均等にしないと回転がぶれる。
そのことを指摘された。
2ラウンド目も博士は同じ作戦で投げていく。
私は1投目、博士のビーンバッグの近くにブロックを作ることにした。
しかし勢い余って、博士のビーンバッグを押し込んで穴に落としてしまう。
「ふふふ。ビーンバッグは絵柄を上にすると滑りやすく、逆にすると滑りにくい。今のは逆向きで投げるべきだったね」
博士の言葉に会場が湧く。
でも今は私のビーンバッグがブロックしている。
これなら博士はどうでるか。
その時信じられないことが起こった。
博士が投げたビーンバッグは私のビーンバッグの手前で落ち、なんと乗り越えて穴に入っていった。
会場が大歓声になった。
「ロールショット!」さおりさんが言う。
そんな技、見たことも聞いたこともなかった。
その後は完全に博士ペース。
試合は5-21と大敗で私は負けた。
「ふふふ。君はまだ経験不足だね。エアメールへの依存度が高すぎる」
小野玲奈とは違う、圧倒的な強者感。
これが全国レベルなのかと改めて思った。
「おや、君の相方は健闘してるみたいだね」
隣を見ると、理恵と浅野さんがまだ戦っている。
現在18-16と接戦だ。
理恵がんばれ。
心の中で叫ぶ。
試合が終わった。
21-18の接戦で理恵の勝利だ。
理恵が私に抱き着いてくる。
「やった。私勝ったよ」
「理恵おめでとう」
こうして千葉遠征は終わった。




