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PERFECT WORLD  作者: ヤトミ
26/27

第二十六話 【螺旋】

シルフ「ふっ、二人ってまさか...」

アリス「あの黒髪と白髪の...」

ゼイ「そうだ。今回の敵、片方は空間的古代魔法【螺旋】。そしてもう片方は意識的古代魔法【幻像】だと推測する。」


再び過ぎる脳裏の記憶。片方が黒髪ウルフカットの女性。もう片方が白髪を後ろで結った透き通る白の瞳の女性。二人、正確には黒髪の方が【螺旋】。そして恐らく白髪の方が【幻像】の使い手である、と。更に敵が二人と言う事実に動揺する三人。その動揺に追い討ちをかけるかの様に、新たな事実が重ねられて行く。


?「Oh, So you were all here!此処にいらしたんですか皆さん!」


四人の背後から響く、朗らかな好奇心に塗れた女性の声。それに即座に気付いて振り向くのは、アリス。他の三人も同様に振り向き、四人の視界に飛び込んで来たのは、艷やかな白髪に映える白いシルクハットを被った女性。海原の様に蒼い瞳は変わらず深淵を宿している。


アリス「エーギルっ!?何であなたが此処に...」

エーギル「Hmm...閉じ込められちゃったんですよねぇ。諸事情で情報を探っていたら、突如として空間が渦巻いて、気付いたらこんな空間に。」

ゼイ「ほう、君がエーギルかい。噂通りの生徒だねぇ。」

エーギル「Wow, slightly creepy person. 私が転校生のエーギルです。」

ゼイ「仲良くしようじゃないか、私はゼイと言う。」


二人が握手をする光景を眺めつつ、アリスとシルフは驚愕を隠せない様子。この状況でエーギルに遭遇するとは到底想像が付かなかった。そしてダーリムは初対面と言う事もあり、分かりやすく距離を取っている。どうやら、二人が口に出した『ちょっと目を付けてる生徒』とは彼女の事を指すと理解したらしい。気怠げな瞳は睨みを利かし、警戒心を剥き出しにするダーリムは傍から見ても明らか。


アリス「ちょっと情報量が。えっと、今総勢はシルフ、私、ゼイ、ダーリム、エーギルの五人。ウィズン先生とラム先生は不明。取り敢えず、此処が何なのか知りたいわ。」

シルフ「確かに、ゼイ先生は【螺旋】の事を空間的古代魔法って言ってましたから、空間を創る...みたいな感じなんでしょうか。」

ゼイ「私も詳しい事は螺旋使いでは無いから不明だが、恐らくそう捉えて良い。【螺旋】は空間を螺旋状に、言わばループ空間を創造するのが主な特徴。あくまで私の本に書いてあった事だがね。」

エーギル「ループ、ですか。Hmm...随分と陰湿で趣味の悪い事をしますねぇ、古代魔法は。」

ゼイ「敵が複数と言うのも厄介だが、今私達のいる空間は完全な隔離空間だろう。それ故に、ウィズン先生やラム先生がこの空間に入って来る事は不可能と断定しても良いだろうね。つまり、この状況を打開する鍵は私達五人の手に委ねられた訳だ。」


五人が集結したこの状況、五人にはこの状況を脱出する以外の道は存在しない。仮にウィズンやラムが駆け付けようとも、この空間に侵入出来る保証は無い。なので、五人の力を結束させて突破口を見つける事が必須事項になるだろう。鎖で相手を縛り、やがて消滅させるシルフの古代魔法【鎖縛】、相手を強制的に昏睡させて衰弱させるダーリムの古代魔法【純夢】。魔法が使えない代償として、頭脳で突破するアリス。そして素性が不明なゼイとエーギル。本来なら此処に【豊穣】とラムのアルコールと雷魔法が加わっているのだが、今頼れるのはこの面子のみ。


ダーリム「結構なピンチじゃん、どうすんの。此処で死ぬとか嫌なんだけど。」

アリス「一旦歩きましょ、この空間を。此処で何かあっても困るし。」

エーギル「Yeah, let's do it like that. ですね、取り敢えず動かない事には何も。」

ゼイ「空間内が分からない以上は慎重に進むべきだ。さて、動こうじゃないか。」


各々が声を掛け合い、神話学準備室前から移動を開始する。歩幅を揃える五人だが、彼等の脳裏には先の脅威が鮮明に焼き付いている。脳が回転し続けて警告を鳴らしているのだ。敵は確実に古代魔法使い、それも複数人。一人ですら容易には扱えない古代魔法を同時行使出来ると言う事実に、シルフは固唾を飲んだ。

そうして歩み始める五人。真紅のカーペットを一歩、また一歩と踏み締めて行く。自分達の周囲は薄霧の中、窓を見ても外は鼠色の曇天。この偽りの魔法学校に閉じ込められる以前の外は晴れていた為に、この空間が創られた空間だと言う事実は本当だろう。ならばこの状況をどう打破しようと、脳内で策を巡らせるアリス。しかし彼女は一人でいる訳では無い。前方では軽い足取りのエーギルが先導して進み、その後方にシルフ。その両隣でアリスとゼイが並んで歩き、更に後方でダーリムが。今現在、不安は無い。今までの状況では主に自身とシルフのみだったが、今は仲間がいる。ゼイを仲間と呼ぶのは少々抵抗はあるが。特に素性を知らないエーギルはまだ仲間と言うには無理がある。


エーギル「Mmmm...la la laa...」

アリス「あなたは呑気ね、エーギル。」

エーギル「Yeah!だって案外進んでいませんか?もし仮に螺旋の様にループしているのなら、同じ光景が続くはずでしょう。でも、違う。歩いても歩いても、ループを感じない。」

アリス「確かにそうだけど、今回の敵は古代魔法使いの可能性が高くて、更に二人。ただ私達を閉じ込めるだけじゃ終わらないはず。」

ゼイ「その通りだアリス。この空間を探索するにしても、恐らく何処かに罠が仕掛けられているか、それか既に仕込まれている可能性が高いだろうねぇ。」

シルフ「罠...。」

ダーリム「眠すぎるんだけど...ふわぁ~あ...」


各々が自由行動、と言えば聞こえは良い。しかし互いに意識し合わなければならない状況。更に言えば、いつ何処から襲われるか不明。相手の創り出した空間の中で襲われるならば、勝率は空間の主に軍杯が上がるだろう。更には薄霧による少々の視界不良。その僅かな隙を狙うとなれば、相手方は有利。不利な状況、更に危険極まり無い状況の中で五人は歩みを進める。時折見渡しても、周囲に広がるのは人影の無い各教室と、真紅のカーペット。普段なら壁を照らす銀の燭台の炎も今は灯らず、ただただ置物化した燭台のみが存在する。そんな中で、ダーリムが歩みを止めてふと教室を覗き込んだ。


ダーリム「何だ時計あんじゃん...もう何時間歩いたの私達...」

シルフ「多分...まだ五分くらいじゃないですかね。だって長針が五分しか進んでませんし。」

ダーリム「はぁあ...?もう無理なんだけど...」


この空間に閉じ込められてから現在に至るまで、五分程度しか経っていない事実。ダーリムが覗いた教室の壁に鎮座する金色の円形時計。その長針は五分しか進んでおらず、気力を削がれる現実が襲う。しかしループしていないのならば、脱出してしまえば良い話。落ち込むダーリムを励ます様に放ったエーギルの意見。無理矢理にでも納得す様に自身を戒めるダーリムだが、問題が一つ。敵の所在。これが現状打破の最重要項目だろう。仮に出口さえ見つかれば脱出は容易だろうが、その出口をどうやって見つけるのか。正規のルートを使用すれば抜けられるのか、それとも別の手段があるのか。不明点が多いが、地道に探していくしかない。


アリス「とりあえず校庭出てみる?ずっと此処歩いてても何も無いわ。」

ダーリム「賛成。早く帰りたい。」

エーギル「That's right. ですね、私も同意しましょうか。」

シルフ「じゃあこの階段降りましょうか。」


五人がそれぞれ階段を降りて行く。彼等がいる階は三階。一階に辿り着くには階段を二つ降りなければならない。徐々に一階へと近付く五人。五人それぞれ表情が異なる中で、降り続ける彼等の前方に出口が見えた。大きな溜息を吐くダーリム、意気揚々と軽いステップを刻むエーギル、自身のコートのポケットに手を入れて歩くゼイ等、各々が思い思いの態度を見せながら。しかし、彼等の思考は同じ結論に行き着く。


『この空間から抜け出したい。』


その信念は揺らがない。そうした彼等はやがて、校庭へ続く一階へと辿り着いた。道をそのまま歩んで行き校庭へ続く門を潜る。身体を掠める風を感じる彼等だが、次の瞬間に抱いた感情は一瞬にして高揚を覚ました。


シルフ「えっ...」

エーギル「Huh?」

ゼイ「...やはりか。」

ダーリム「ダルっ...ふざけんなし...」

アリス「また...同じ場所...?」


再び、魔法学校の廊下へ辿り着いた。

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