表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PERFECT WORLD  作者: ヤトミ
23/27

第二十三話 【秘めたる物】


彼女の問いに呆然と、ただ言葉を失う2人。2人に問われた物、それは現在自分達が追っている問題。更に相手は転校して来たばかりの人間。古代魔法の存在は一般生徒に一切漏らしていない情報である。

教師陣側の人間であるゼイの情報を基に、ウィズン、ダーリムも推察した上で自分達が炙り出した。つまり、古代魔法使いの行方は自分達に託されている物。ならば、何故彼女は古代魔法の事を知っているのか。

硬直する2人へ、更に問う様にしてエーギルは言葉を紡いだ。青いリボンの巻かれた、白いシルクハットのつばを摘みながら。


エーギル「どうですか?古代魔法について、何か、知っている事、聞き覚えのある事は?」

アリス「...そっちは?」


咄嗟に出る機転の効く返し。可能性としては、単にエーギルが古代魔法に興味がある、または古代魔法に関して何かしらの知識を持っている可能性も存在する。だが、何故わざわざシルフとアリスに対して問うのか。

エーギルはシルフやアリスの事を転校して来た際、古代魔法について特別知っていた様な発言もしていない。なのに、彼女は何故自分達を選んだのか。その答えは彼女の言葉で語られる事になる。


エーギル「What's?何でしょうか、それは?」

アリス「逆に聞くけれど、貴方は知ってるの?古代魔法について何か。」

エーギル「Hmm...いくつかは、と言った所でしょうか。そちらは?」

アリス「奇遇ね。私達もいくつか。それで、私達が知っている事が明らかになった訳だけど、どうする気?何で聞いたのか知らないけど。」

エーギル「どうするか...ですか。それについては、後程。今は貴方達と交流が出来ただけ良しとしましょう。では。」


会話を終えたエーギルが、ご丁寧にお辞儀をしたかと思えば次の瞬間。彼女の足元が藍色に輝いては波打つ様にして煌めく。水面が反射する光の様な煌めきに包まれる様にして、彼女は一瞬で姿を消した。

そんな一部始終を、固唾を飲んで見守る事しか出来なかった2人。ただ、目の前の光景に目を奪われるしか無かったから。エーギルが消えた。姿を眩ませた。水が霧散する様に。その後、シルフは何があったのかと辺りを見渡して。

そしてアリスの方を見やれば、彼女の表情は何処か深刻そうで。


シルフ「えっと...な、何があったんですか本当に。情報量がとんでもないんですけど。」

アリス「取り敢えず整理すると、エーギルは私達に用があって話を持ち出した。それは古代魔法について何か知っている事はあるかどうか。私達があるといったら、向こうもあると。で、そしたら消えた。」

シルフ「やっ、やっと理解しました。取り敢えず、この話は持ち帰ってウィズン先生とかに話した方がいいですよね。」

アリス「えぇ。って言うか...私、仮の結論出たんだけど、話しても良い?」

シルフ「あっ、はい。アリスさんの意見、聞きたいです。」


彼女の出した結論とは如何に。確かにエーギルは古代魔法についての知識を持っている様な態度を見せた。その事実は無視できない。故に、彼女が出した結論は。


アリス「エーギル、古代魔法使いじゃない?」

シルフ「僕も...そんな気がします。その、明らかに魔法学校で学ぶレベルじゃない魔法ですよね。」

アリス「ええ。仮に彼女が元々在籍してた学校で身に着けた魔法だとしても、姿を一瞬で眩ますなんて相当熟練の魔法。あと流したけど、エーギルと初対面の時に雰囲気嫌って感じたのよ。一応口には出したけどそれを気にしてる余裕が無かった。

それとね、シルフ。貴方も気になってる事、あるわよね。」

シルフ「...はい。」


互いに目配せで意思疎通を図る2人。確かに今回の一件で驚く事は多い。エーギルの唐突な発言や、意図が不明な質問。そして姿を一瞬で消す魔法の行使。彼女の行動全て目を奪われたが、更に重要な情報に気付かない訳が無い。

古代魔法に限らず、エーギルに関連する憶測。


シルフ「何で僕達に用があって話かけたのか。その理由が古代魔法についてだった事。」

アリス「ええ、やはりそこ。それで彼女やけに貴方に擦り寄って来たでしょ?絶対何かしら理由があると思うのよね。

加えて私達へ古代魔法についての質問を投げ掛けるって事は、可能性としては彼女も古代魔法について何かしらの情報を持ってる可能性も否定出来ない。それでね、シルフ。私達は古代魔法の使い手を探してる。

その為には古代魔法の情報が必要。そうなると、私達はエーギルの情報を引き出すのが最善なんじゃないかって。」


アリスの口から紡がれる憶測の数々。確かに彼女の言い分には一理も二理もあり、更に状況は混乱を極めて行く。エーギル、彼女の存在が複雑怪奇な迷宮に迷い込ませるように2人を翻弄し、追い打ちを掛ける。

彼女が古代魔法の使い手だったら、妙にシルフへ擦り寄る態度に理由が存在したら、もし自分達と敵対する立場だったら。想像すればする程、思考が点と点を曲線で繋げる様にして膨らんで行く。最悪の想定とエーギルの持つ様々な可能性と。

その最果てを推測したアリスは、ある決断を下す。


アリス「監視しましょう、エーギルを。」

シルフ「かっ、監視?」

アリス「ええ、監視。彼女、私達に古代魔法についての詳細を聞いたわよね。でも私達の考えはノーヒント。そして彼女は後々私に絡んで来る事が確定してる。

そこまで古代魔法に執着する彼女が、古代魔法についての情報収集を私達だけで終わらせる訳無いと思うの。絶対他にも何かしらを探る。だから、彼女の動向を追う必要があると思って。」


彼女曰く、あそこまで古代魔法に執着する人間が一つの可能性に縋る訳が無い。エーギルはまだ調査の手段を手放した訳では無い、そう述べる。

彼女の言動には仄めかす意味合いも含まれるだろうが、それでもエーギルは確実にこの魔法学校に何かしらの事情を抱えて転校して来た事は可能性として存在するだろう。全て可能性の域を超えないのだが、確率は高い。

そこで、エーギルの監視。監視を経て得る情報により、彼女の正体の深層を暴くのが最適解と考えたアリス。下手に彼女を刺激しない様に。


シルフ「監視が大事なのは分かったですが、僕達だけで足りますか...?見てない所で何かアクションを起こされたら...」

アリス「ええ、危険性がある。だから、他の古代魔法使いに協力を願おうかなって。貴方なら、分かるでしょ?」

シルフ「えっと...ゼイ先生に、ウィズン先生...。後は古代魔法使いじゃないけど、圧倒的な実力ならラム先生とか...」

アリス「んー、半分正解。貴方、忘れてない?」

シルフ「えっ...あっ!」


彼の脳内の記憶が呼び起され、思い出される1人の人物。常に夢現の様な気だるげな雰囲気を身に纏う人物。彼女の古代魔法は相手を強制昏睡状態にし、かつ衰弱させる物。

まるで夢の中にいるかの様な眠りへ誘い込み、抜け出させてくれる気配の無い漆黒の闇。そして何より、特徴的な薄紫髪が印象に強く残っている。


シルフ「...ダーリムさん、ですね。」

アリス「そ、ダーリム。勿論ゼイ、ウィズン先生、ダーリム。そしてあわよくばラム先生に協力を願おうかなって。その方が私達も動きやすいし、余裕を持って動けるでしょ?」

シルフ「凄いですね、アリスさん。そこまで瞬間的に策練ったりエーギルさんの事分析したり出来るの。」

アリス「んふっ、褒めたって何も出て来ないわよ?」


ふと柔らかい笑みを浮かべるアリス。彼女の機転の利いた思考、瞬発力が今回は功を奏した。そして互いに顔を見合わせた後に少し物理的な距離を縮めるアリス。向き合う体勢の身体を彼女の方から近付け、シルフの身体へ向けて密着に近い状態へ。

抱き合う手前の様な姿勢に少々心臓が跳ね上がるシルフだが、以前の様に変な高揚感は覚えない。彼女といる事が普通、そう頭が認知してしまっているから。線の細い金髪に、鮮やかに発色したターコイズの瞳。儚く雪の様に白い肌。

その顔が近付けば、自然と魅入ってしまう。


アリス「ん、もう...すっかりこの距離も慣れちゃったわね。」

シルフ「...まだあんまり慣れないです。」

アリス「じゃあエーギルの方がドキドキする?」

シルフ「んんっ...」

アリス「ふふっ、ばーか。」


再び柔らかくも小悪魔的な笑みを浮かべるアリス。そうして互いの瞳を数秒間見詰めた果てに、アリスの方から名残惜しい様に身体を離した。

真紅のカーペットの上で誰も周囲に存在しない、誰にも見られない事を確認しては安堵の溜息を吐いた彼女は、小さくと咳払いをして情緒を切り替える。先程の頬染める小イベントは何処へやら、再び距離を戻す2人。意識は互いの事から、謎の転校生エーギルへ。


アリス「んっ、とにかく。私達の目的は、古代魔法についての謎を解く事。そしてエーギル、彼女についての捜索と調査、その他諸々。例の黒髪と白髪の女性2人を探す事もね。」

シルフ「わっ、分かりました。アリスさんがそう言うなら、信じます。」

アリス「任せて。必ずエーギルの情報は掴みに行きましょう。」


導を立てた2人は視線を交わし合うと意図を汲んだ様に立ち位置を変える。アリスはシルフの隣へ。その気になれば肩と肩、髪が触れ合える距離感まで移動しては、左手の人差し指と中指でシルフの袖を掴む。

キュッと摘まむ様に小さく引っ張る真意は、彼女の口からは語られない。あくまで、推測。しかし、それでも募る想いは嘘偽り無い。きっと、前進している。そんな予感が2人を包み込む。


アリス「さて、行くわよシルフ。」

シルフ「あっ、はい。着いて行きます。」


2人の足音は消えて行く。真紅のカーペットを歩いた先、神話学準備室の方向へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ