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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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554.フリーマーケットに行こう 前編

イツキ達ムーンリト教の象徴、特にイツキとララミーティアは、より象徴らしく振る舞うよう心掛けるようになった。


それはイツキ達の奔放な振る舞いを制御できない政府が意図的にイツキ達への情報統制を行った事で、奔放なイツキが勝手に大マーリング連邦へ渡航してしまい、旧モードラド王国のエイムス伯爵領で命を落としかける事態に陥ったからだ。


この出来事は瞬く間に教国内に広がり、ムーンリト教の信徒達に大きな衝撃を与えた。


イツキの死は首都ミーティアを絶対的な大都市たらしめているイツキによる強固な結界の喪失に繋がる。

国民や信徒より、イツキ自身が己のおかれている立場を理解。

結果、イツキ達は勝手に首都ミーティアすらフラフラとほっつき歩く事は無くなっていた。




そしてある休日のこの日、イツキ、ララミーティア、ベルヴィア、サーラという、大聖堂に像が奉られている四柱による首都ミーティアの視察が行われる事に。

なお、マーウーとペロも同行している。

フランクを案内役とし、槍を持った教国軍の兵士も数名同行している。


「うわぁ!こりゃ凄いなぁ!!」


イツキは感嘆の声を上げる。

首都ミーティアの主要な大通りには所狭しと品物を並べた露天が並んでいた。

地球の感覚で言えば、首都ミーティアの主要な大通りが大型連休中に開催されるような巨大な規模のフリーマーケット会場と化していた。

あちらこちらで地べたに品物を並べて売っていたり、出店が出て美味しそうな匂いを漂わせたり、そしてそんな大通りを大勢の人がキョロキョロしながら練り歩いたりと、活気に満ちあふれていた。


「各地区単位で希望者に証明書を発行し、許可された住民達がこうして不要になった品物を並べているんですよ。」


イツキ達を案内するフランクがそう言って大通りを一瞥する。


「壮観ね!良く見ると商人みたいな人もかなり露店を物色しているわ。」


そう言ってララミーティアが見つめる先では、確かに住民とは少し違う商人のような者が露店を物色している光景も見受けられる。


「他の町や村…まぁどこもそうなのですが、首都ミーティアの住民も例に漏れず兎に角物を大切にする傾向が高いんです。給金も最低限しか使わず、物も大切に使う。しかも上級ウィンドウ魔法が使える者が非常に多いので、溜め込んで大切に使っている物がまるで劣化しないのですよ。」


フランクはそう言って眉を八の字にして肩を竦めてみせる。

ベルヴィアはカラカラと笑いながら口を開いた。


「はは、消費が鈍化したら生産も投資も循環しないものねー?みんな個人でお金をため込んでる訳だ?」

「そうなんです。建国当初は政府に預けたりするケースが多かったのですが、誰もが中級、上級ウィンドウ魔法を使えるようになりましたので、ララミューズ薬局による投資に頼るしかない状況に陥ってまして…はは、頭の痛い問題だったんですよ。」


フランクの言葉に首を傾げるマーウー。


「なんで頭痛いのー?みんなお金に困ってないんでしょ?」


そんなマーウーの質問にはサーラが答えた。


「今はまだ外国を相手に物が売れますけれど、出来れば国内でも経済を循環させたいですからね。物が売れればララミューズ薬局以外の商会も新たに人を雇ったり、儲けを元手に何か新しい事に挑戦したりできます。」

「そうだよー?フランク達政府がみんなの貯金を預かってる訳じゃないからさ、政府として何か投資…うーむ、お金を出してどこかの商会を応援とかが出来ないんだよね。」


イツキもそう補足を入れると、マーウーとペロは何となく理解出来たのか「へぇ」と頷いていた。


「ま、あれよ。別にほっといてもみんなの暮らしが貧しくなるわけじゃないし、家計は安定するだろうけど、経済の成長は鈍いわねって感じ?」

「それでお祭りでみんなお金を使うってこと?」


ペロの言葉にフランクがニッコリしながら頷き、口を開いた。


「その通りだね、ペロ。お金を使う楽しさを覚えて貰い、物を売り買いする事でみんなの物欲を刺激、お金を回したいという訳だね。我々教国としては何とかこの状況を打開する一手が欲しいんだ。」

「良いイベントだと思うよ。新品が売れるようになる効果は低いだろうけど、経済は循環するね。」


イツキの言葉に肩を竦めるフランク。


「そこは課題ですね。趣旨としてはあくまで中古品のやりとりが主となりますから、当然店を構える各商店はわざわざ出店しませんので、新品の販売に対してはあまり効果はないです。」

「じゃあアレだよ、簡単だね。新品を売ってる商店も出店を認めてさ、俺の世界では『アウトレット』とか『B級品』なんて呼んでたんだけどね?」


イツキの言葉に足を止めるフランク。


「ふむふむ…?」

「例えばね?在庫の余り。キズもの。展示品。まぁ後はこの世界風に言えば…見習いが作った習作とか?兎に角、その手の扱いに困ってるモノを安価で売る場も兼ねる、とか良いんじゃないかな?お祭りの雰囲気だから店側もさ、店のイメージ的に店に並べたくない品質の物を売り捌く大義名分が出来る。消費者もお祭りムードで財布の紐が緩む。多くの品物が普段契約してない商人の目に留まって「ここの品物は良いなぁ」なんて新しい契約のキッカケになるかも。何より消費者はキズものだろうが安ければそこまで気にしないからね。」


イツキの言葉にフランクのテンションは明らかに上がっているのが見て取れた。

しかしララミーティアは肩を竦める。


「あら、そんなの別にお店で日頃から売ればいいじゃないの?」


そんなララミーティアの疑問にベルヴィアが代わりに口を開いた。


「それやっちゃったらさ、お店で安い方ばかり注目されちゃって正規品が高く見えちゃって売れなくなっちゃうのよ。こーゆーお祭りみたいな場だからこそ「特別な機会だからー」って安売りの大義名分が出来て、新品の販売と切り離してちょーっと難有りの品を安く売れるって訳ね。」

「なるほどね。何だかワクワクしてくるわね!」


ララミーティアの言葉にマーウーとペロも目を輝かせる。




その後、フリーマーケットを散策していると、ララミーティアが一つの露天で足を止める。


「ん?なんか欲しいのでもあった?」


イツキが足を止めたララミーティアに声をかけると、ララミーティアはイツキに耳打ちをする。


(あの本、ひょっとすると古代の遺物じゃないかしら?)

(えっ!?どれどれ…)


古代の遺物といえば鑑定結果。

この大陸に溢れる数多の物と違い、古代の遺物もといゲームエリアのアイテムには説明文が一切用意されていない。


(あ、本当だ…!)

(ねっ?回収した方がいいわね…)


ララミーティアはそう囁いてサーラにも耳打ちをした。

それを聞いたサーラとベルヴィアはウィンドウ画面越しに確認し、頷き合う。




「あのーすいません。」


イツキが代表して購入する事になった。

露店をやっているのはハーフリングの夫婦だ。

旦那の方が真っ先に口を開いた。


「おや!これはイツキ様!」

「私達の品物で何か気になる物がありましたか?」


奥さんの方がそう尋ねると、イツキは何気ない様子で古代の遺物である本を指差す。


「いやぁちょっとね?読書でもしようかなーなんて思って、その本が欲しいなぁなんて。」


そう言うイツキにハーフリングの夫婦は苦笑しながら本を手に取る。


「あー、これですが…なぁリンダ?」

「ええ…、これは文字は書いているには書いているのですが、どうやらこの大陸の文字とは異なっているようでして、読書には向かないというか…あくまで観賞用というかインテリアみたいなものですね。」


ハーフリング夫妻の言葉通りなら、その本は読書をしたいという要求に全く答えられない。

言い訳を誤った事に気がついたイツキは慌てて取り繕う。


「いやいやっ!ほら、俺って違う世界から来た人だからさ?どんな言語でも読めちゃうんだよ!だから平気平気ー!」


そんなイツキの言葉にリンダと呼ばれた奥さんの方のハーフリングは懐かしそうな顔で本に手を乗せた。


「もし本当にこれが読めるのなら…それはとても羨ましい事ですね。」


そんなリンダの言葉にマーウーが真っ先に反応する。


「なんで?読める本を読んだ方が役に立ちそうだけどねー?」

「ふふ、親が持っていたガラクタの中に紛れ込んでいた本なんです。きっとこの大陸とは違う、どこか遠い国の冒険譚とかが書かれているのかなと子供の頃に胸を高鳴らせたものです。」


リンダは本の表紙にそっと手を乗せた。


「大人になったらこの本が読めるようになりたい、きっとこの本には誰も知らないような知識が書かれているんだ、そう思うとワクワクしたものです。」


そんなリンダの言葉にサーラはコソッとイツキとララミーティアに囁く。


(確かにこの大陸では誰も知らないような特性が得られますね…)

(尚更回収しないとじゃないの!ちなみになんて特性なの?)

(うーん、遠目からでは…何でしょうね…)


サーラは目を細めてリンダの持つ本を凝視するが、遠巻きからでは到底判別がつかない様子。


「この本をよくこうして手を乗せて心の中で願ったものです。『私にこの本の知識を授けて!』と…」

「ああっ!!それはっ!!」


そんなリンダの言葉にサーラがお淑やかさも忘れて大声を上げてしまう。

周囲にいた無関係な者までもがぎょっとしてサーラに視線を送る中、リンダの身体が眩く光り始める。


「わわわっ…こ、これはっ!!」

「ちょ、ちょっとサーラ!?な、何が!?」


完全に狼狽しているイツキが慌ててサーラに視線を送ると、サーラは苦笑しながら首を横に振る。


「スキルブック…発動しちゃいましたね…」

「ええっ!?発動って…ええ…?」


イツキとララミーティアは視線を合わせたまま言葉を失う。




とりあえず遮音結界を張ったイツキ。

久しぶりに発動してしまったスキルブックのログに気がついたデーメ・テーヌとテュケーナまでもが光臨してしまい、とりあえずハーフリング夫妻に説明をする事に。


「なんと言いますか…ほ、本当にごめんなさい…」


しょんぼりと消え入りそうな声でそう謝るリンダ。

しかしデーメ・テーヌはそんなリンダを優しく抱きしめる。


「あなたは何も悪くありません。それは嘗て…えーと、うーん…」


すぐにボロが出てしまうデーメ・テーヌ。

賺さずサーラが口を開く。


「それは嘗て千年前の大戦の折にこの大陸に紛れ込んだ古代の遺物、スキルブックという本です。」

「スキルブック…?」


カーターと名乗ったハーフリングの旦那の方がそう言うと、サーラは微笑みながら小さく頷く。


「ええ。新たな特性を授ける神の書物です。ですのでリンダさんは大丈夫、特に生活に健康に支障がでる訳ではありません。」

「そ、その通りです。それは偶然この大陸に紛れ込んだ物です。イツキ達には子らが「古代の遺物」と呼んでいる物を回収するよう命じて居たのですが、そなたらのようにきゃわゆい…「き、きゃわゆい…?」


リンダとカーターが思わずぎょっとしてデーメ・テーヌを凝視してしまう。

慌てるデーメ・テーヌに、モグサ家面々は噴き出してしまう。

テュケーナがデーメ・テーヌを肘で突っついてから口を開く。


「あなたたちのように善良な子らに使われたのであれば、天界としては特に言うことはありません。その新たに授かった力、存分に発揮すると良いでしょう。」


珍しく余所行きの口調のテュケーナに感心してしまうイツキ達。

そしてペロが口を挟む。


「ねえ、なんて特性なのー?」

「ん?そういやそうだな…えーとどれどれー?」


イツキが「城塞の守護者」を使ってリンダのステータスを確認する。

イツキに視線が集まる。


「えーと…「星辰の錬金術師」ってなってるね。錬金術師ってあれ?金を作るーって…この世界だとその辺の石ころからミスリルとかオリハルコンとか作れるのかな?」


イツキの言葉にリンダとカーターは大興奮だ。


「す、凄いぞリンダ!!教国に多大な貢献が出来そうだ!!」

「う、うそ…!凄い凄い…!!やっぱり凄い本だったのね!!」


それまで神様らしくニコニコしていたデーメ・テーヌとテュケーナが豹変して大慌てでリンダに詰め寄った。


「そっ!それはマズいわ…!!やっぱちょっと待って!!」

「ごごご、ごめんねぇ!?その特性はちょっと待ってぇー!!」


狼狽するデーメ・テーヌとテュケーナを呆然と見つめるリンダとカーター。


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