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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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548.運命的


翌朝、朝食を済ませた後、トウシロウ達に森の中で少し出掛けると伝えてからイツキ達は本邸を後にした。

ララミーティアだけでなく、ベルヴィアとサーラ、それにマーウーもどんな場所か行ってみたいと言い、夫婦水入らずで結界の中に入って飛んでいる。


「私が指定した場所だけど、この世界を想定して設定したわけじゃないからどんな所なのか知らないわねー。」


ベルヴィアがそう言って進行方向をジッと見つめている。

サーラもキョロキョロしながら眼下に広がる大森林を眺めながら口を開いた。


「この魔境の森でも大樹は沢山ありますからね。よく覚えていますね?」

「ふふ、魔境の森は私の庭よ?イツキに教えて貰って何度か行ったこともあるから任せてちょうだい。」


そんなサーラの言葉にウインクして答えたララミーティア。

マーウーも胸を張って得意気な顔をしながら口を開く。


「ちょっと前までは精霊族が近寄らない森だったから馴染みは無かったけどさ、私もこの森にはちょーっと自信があるよー?」

「あーそうか。俺とティアが出会うまでは禍々しい森だったんだっけか。」


そんな事などすっかり失念してたイツキがそう言うと、サーラがコクっと頷いた。


「そうですよ?人族や獣人族なんかは濃厚過ぎて混沌と渦巻く魔力にあてられて暮らせない類の森でした。大陸でも屈指の魔力溜まりだったのではないでしょうか。」

「だからアリーも敢えてここを選んで終の棲家にしたのかしら。」

「かもしれないですね。森が深すぎて居住可能なエリアの選別や開拓もまるで進んでいませんでしたし、人族を寄せ付けませんから。」


そんな会話をしているうちに頭一つ飛び出ている木が見えてきた。


「あ、ほら。あれよ!」


ララミーティアがその頭一つ飛び出ている木を指差す。

ベルヴィアが木を見ながら感心したように口を開く。


「へぇ!デッカい木ねえ!」

「案外近いんだね?」


マーウーがそう言うと、イツキは肩を竦めながら口を開いた。


「まぁほら、この世界に来てからその日の昼のうちに本邸の所まで歩けたくらいだからそんな遠くないよ。」


そう言いつつゆっくりと降下してゆくイツキ達。




イツキの第二の人生が始まった木は相変わらず一際大きな大木で、側に立って見上げると、その雄大さにただただ圧倒されたのだった。


「これは…確かに大きな木ですね…何年経つとこんなに大きくなるんでしょう…」

「本当ねえ…何万年もずっとこの森に居るんでしょうねぇ。」


サーラとベルヴィアはイツキの思い出の大樹を撫でる。

マーウーも大樹に寄り添って頬を当ててみる。


「気持ちいい木だね。魔力がいい感じで巡ってるよ。」


イツキは穏やかな表情を浮かべたまま大樹の根元に座り、頭の後ろで手を組んで目を閉じた。


「やっぱりここ…なんか好きだな。たまに来ると良いね。」

「ふふ、イツキの人生が始まった思い出の地。夢じゃなかったなって気がした?」


ララミーティアもイツキの隣に腰を下ろした。

イツキは目を閉じたまま微笑みながら口を開く。


「不思議なもんだね。原点に来ると気持ちがこう…落ち着くよ。」


やがてベルヴィアやサーラ、それにマーウーも同じように大樹にもたれ掛かるようにして目を閉じた。

静かで穏やかな時間がゆっくりと流れる。




昼下がりになってお腹が空いてきたイツキ達はそのまま大樹のもとで昼食を取ることに。


「原点に戻ると落ち着くなんて言いつつ、食べるもののチョイスがチーズバーガーか。はは、俺も現金なもんだね。」


苦笑しながらイツキは召喚したチーズバーガーを頬張る。

そんなイツキの言葉にマーウーが笑いながらナゲットをひょいと口に放り込んだ。


「美味しいんだから仕方ないじゃん!まさか五人でマコルの実ばかりモグモグ食べるわけにいかないもんね?」

「ふふ、流石に昼食という感じではありませんね。」


サーラもそう言ってクスクス笑いながらレタスサンドを食べた。

ララミーティアは改めて大樹を見上げながら口を開く。


「そのうちあの広場にもこんな大樹が欲しいわね。」

「あはは!流石にこんな大きさだと植樹は無理ね!ってあら、イツキ。なんか肩に枝みたいなのがついてるわよ?」


ララミーティアの言葉にカラカラ笑っていたベルヴィアだったが、イツキの肩に何か枝の固まりみたいな物がついている事に気がついてイツキに向かって指をさした。


「ん?あはは…寝っ転がってた時に絡まったのかな?どれ…」


イツキが左肩の後ろにくっ付いた何かを右手で掴む。


「全然気がつかなかったなぁ…あれ?なんだこれ…う、動いてるぞ!?」


徐にひょいと取った枝の固まりだったが、良く見ると枝が僅かに動いている。

ジッとその様子を見ていたマーウーだったが、バッと立ち上がった。


「そ、それ枝じゃないよ!!ドリアードの赤ちゃんだよ!!」

「えっ!あ、赤ちゃん…!?ってあれ…?消えちゃった…」


ドリアードの赤ちゃんと聞いて慌てて両手で包み込むように持ち直したイツキだったが、ドリアードの赤ちゃんはスッとイツキの手の中で消えてしまった。

イツキの手の中で消えてしまったドリアードの赤ちゃんを見て、ベルヴィアが賺さず声を上げた。


「やだちょっと!!消えちゃったじゃないの!!」

「そ、そんな事言われても…!何もしてないよ!ええっ…?」


オロオロしてしまうイツキ。


「あれだね、魔力が豊富な場所に溶け込んで成長するからさ、本能的にこの場で一番魔力が凄いイツキの身体に溶け込んじゃったみたい。」


マーウーの言葉に呆然としてしまうイツキ達。




その夜、本邸ではイツキ達本邸で寝泊まりしている住人達の他に、ドリアード族の長をラバゥの代わりに勤めているヤムーを招いていた。


「その子は今日産まれたばかりでしょう。確かにイツキさんの身体の中でスヤスヤ眠っていますよ。」


ヤムーの言葉にイツキは自身の身体のアチコチをペタペタと触る。


「ど、どこで寝てるの?俺は普通に暮らして平気?な、なんか寝返り打って潰したりとかさ…!?」


そんなあわあわするイツキを見てマーウーとヤムーはクスクス笑う。


「違うよー!魔力に溶け込んで混ざってる感じだから別に心配する事ないって!」

「ふふ、マーウーの言うとおりです。目を覚ましたら自然とひょっこり出てくると思いますよ。」


ヤムーがそう言ってイツキの頬にそっと触れる。

ヤムーはラバゥ同様、長い真っ直ぐな緑の髪をしているが、ラバゥと致命的に違う点は長い髪の毛で胸を隠している点だ。

近くに来たヤムーに顔を真っ赤にして照れ笑いしながら顔を背けるイツキ。


「そ、そうか!ありがとね!あ、安心したよ…はは…」

「ふふ、イツキには刺激が強すぎるわね。ところで精霊族って人の体に溶け込む事なんて出来るのね?初耳よ。」


ララミーティアがそうヤムーに尋ねると、ヤムーも困惑気味に口を開く。


「出来ない事はありませんが…普通ならば自然界の方が圧倒的に魔力が豊富ですので人や動物、魔物など生き物の身体に敢えて溶け込むなんて事はしません。」

「別にその辺の自然界の方が魔力いっぱいだし、好き勝手溶け込めるからさ、魔力が少ない人とか生き物にいちいち溶け込まないんだよ。怖がらせるでしょ?」


マーウーもそう言って腕を組みながらコクコクと頷く。

ヤムーは言葉を続けた。


「その子は今日、本当に偶然イツキさんの側で産まれ、その場で一番魔力の濃い場所…そう、普通では有り得ない量の魔力を持っているイツキ・モグサという人の身体で成長する事を本能的に選んだのだと思います。」

「そんな偶然があるもんなんだねえ。じゃあなんだい?俺もそういう事があり得るって事なのかい?」


トウシロウがこの状況を楽しんでいるようなワクワクした顔をしながらヤムーにそう尋ねると、ヤムーはニッコリしながら頷いた。


「当然トウシロウさんもイツキさんと同じような魔力をしていらっしゃるので、この子が産まれた場に居合わせたのがイツキさんではなくトウシロウさんなら、今頃トウシロウさんの身体の中に溶け込んでいましたよ。」

「ただねー、精霊族ってそんなポコポコ産まれないし、どこで産まれるかなんて誰もわかんないから多分そんな機会はないよ!」


マーウーの言葉にトウシロウは笑いながら肩を竦めた。


「はは!そりゃそうかぁ。」

「それはそうと、その精霊族の赤ちゃんの名付けはどうするのですか?皆さん独特な名前をしていますよね?何かドリアードという種族の掟のようなものがあるのですか?」


ゲオルグが誰となくそう尋ねると、イツキがヤムーに向かって口を開く。


「そ、そうだね。その通りだよ。いつまでも「赤ちゃん」じゃ可哀想だし、長として何か名付けをしてよ。」

「それでも良いのですが、偶然とは言えイツキさんはその子に見初められた言わば親のようなモノではないですか。」


ヤムーの言葉にジーニャが口を挟んだ。


「ヤムーの言うとおりだよ!お父さんの身体の中でこれから育つのなら、お父さんの子供も同然だと思うよ!」

「はは、ジーニャの言うとおりだね。折角だからお父さんが名付けたら?」


ルキアも抱いているキョウシロウの顔を眺めながらそう言った。

サーラもニコニコ微笑みながらイツキの肩に手を乗せる。


「そうですね。渾身の名前を期待してますよ?」

「責任重大ね!イツキが決めなさいよ!」


ベルヴィアもそう言ってイツキにウインクしてみせた。

ララミーティアもイツキの頬に軽く口づけをしてからウインクした。

何の心の準備もなく名付け親になってしまったイツキは腕を組んで考え込む。


事の成り行きをジッと見ていたペロとエステルも目を輝かせてイツキを見つめている。


(これは困ったぞ…何も考えてないな…)


そう思ってイツキは思考を張り巡らせる。


(うーむ、あっ!そもそも性別はなんだ?えーと…)


『城塞の守護者』でイツキとピッタリ重なっているアイコンを選択。


「あ、男の子なんだ…?」


そう洩らしたイツキはワクワクし始める。


(女の子ばかりだったけど、男の子の赤ちゃんか…!そうだな…この世界のスタート地点の大樹で運命的に出会った…ハジメ?うーん…)


イツキは眉間にしわを寄せて唸ってしまう。

そんな様子を見ていたエステルが隣にいたペロに話しかける。


「赤ちゃん、どこであったの?」

「大きな木だってー。」

「ふーん。」


そんなやり取りが聞こえてきたイツキ。


(大きな木…そうだっ!!)


眉間のシワも消え、バッと明るい表情を浮かべながら顔を上げた。


「決まりました!」


そんなイツキの言葉に一同は色めき立つ。


「いよっ!待ってました!」


トウシロウがパチパチと拍手をする。

他の面々からも拍手が送られる。


「この子の名前は大樹。タイキ・モグサ。」

「タイキ?何となくイツキに似てる響きね。どんな意味なの?」


ララミーティアが首を傾げる。


「俺の故郷の言葉で「大きな木」って意味なんだ。俺の第二の人生が始まったあの木の下で運命的に出逢った子だからタイキ。今日からタイキ・モグサだ。」


そう言ってイツキは自身の胸に手を当てる。


「何だか愛おしく思えてくるね。俺の魔力で育つ子か…女の人が妊娠するってこんな感覚なのかもな…」


穏やかな顔で目を閉じたイツキ。

そんな感想にララミーティア達はクスクス笑う。

ルキアが笑いながら口を開いた。


「男の人でそんな経験が出来るなんてさ、きっとお父さんが初めてだよ!はは、貴重な体験だね?」

「じゃあ私とマーウーとお父さんは妊婦さんって事だね?あとクラウスさんのところのカルミラさんも。」 


ジーニャがそう言って自身のお腹に手を当てる。

イツキは苦笑しながら同じようにお腹に手を当ててみた。


「こっちはたまに赤ちゃんが身体から出てくるヘンテコな妊婦だけどね。とりあえずひょんな事から新しい家族が増えたけど、みんなよろしく!ヤムーもわざわざ来てくれてありがとう!」


そう言ったイツキの表情はとても幸せそうなものだった。


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