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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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541.世界が変わりかけた日1

全五話です。

ララグレースとミッシェルの結婚はモグサ家関係者を大いに騒がせた。


ララグレース達は殆どイツキ達のもとへ帰ってくることの無かった事もあり、結婚以前に「まさかララグレースとミッシェルがそんな仲になっているなんて」と誰しもが目を丸くして驚き、完全に寝耳に水な状態だった。

そんな事もあってモグサ家は二人の結婚に湧きに湧いた。


そんな若い二人の結婚についてはマーウー経由でロロに声をかけて貰い、ララルージュ達にも吉報がもたらされた。

ランブルク王国の東側を回っていたララルージュ達は予定を済ませてからそのまま南下。

そしてユグハルト帝国でララハイディとリュカリウスを拾って本邸にやってくるという算段がついた。


二人の両親が戻ってきたら、そのタイミングで盛大な宴をしようと計画されていた。




教国歴四十一年春の期 69日




そしてララルージュ達が戻ってくる前日の事。


この日は光曜日で明日は休日。

平日という事もあり、誰しもが朝から普通に労働に勤しんでいた。


ララグレースとミッシェルは折角の機会だからという事で二人きりで小屋で過ごしている。

マーウーも子育ての何たるかを学びたいとルキア達のそばにべったり。

ララミーティアについても大聖堂で聖女のお勤め。

そしてベルヴィアとサーラは、この世界の別の星で生命が誕生した件についての研究発表会とやらに参加するという事で一昨日から明日の昼まで天界に行ったきりになっていた。


クラウスの妻達もそれぞれ仕事を始めており、生き生きと働く姿を見受けられた。

クラウスでさえ、朝から教国軍に顧問として顔を出していた。


安定の暇人イツキ。

いつも通りペロとエステルにララミェンという、イツキとちびっ子達というよく見かける面子で連んで、ウロウロぼんやりと過ごしている。




「あれだなぁ、暇だよなぁ。」

「忙しくないね!」


イツキのボヤキにララミェンがそう答える。


「どっか行きたいとことか食べたいものとかある?なんかある人!」


すっかり規模が大きくなったゲオルグの牧場の羊達を眺めながらイツキがそう言うと、ペロが真っ先にピンと手を上げた。


「はい!お魚!食べたい!」


そんなペロの意見にイツキはペロに視線を送る。


「ん?えっ?お魚?朝食べたじゃん!」

「朝食べた焼いたお魚、スッゴく美味しかった!」


ペロが機嫌良さそうにそう言ってイツキの腕に手を回す。


「おー、美味しかったかー。美味しかったなら仕方ないなぁ。あれはペロと出会ったモードラド王国で食べたこの世界の料理だよ。」

「ペロ、その国、分かる!」

「エシュテルしらない!」


ペロに続いてエステルがピンと手を上げてそう答えた。


「確かに久しぶりに召喚して食ったけどさ、魚…美味かったなぁ。」


そう言ってイツキも今朝食べた焼き魚の味を思い出す。


「エシュテルも!おしゃかなしゅき!」

「エステルもお魚しゅきかー、美味しいもんね。」


この所すっかりイツキとペロと連んでいるエステルもそう宣言し、イツキの腰に手を回して抱きついた。


「ちゃんと骨を取らないと危ないけどね。あの国で食べた料理が召喚のレパートリーに入っているというのは大きいな。」

「ペロ、もっかいモードラド王国?行ってみたいなー。」


ペロの言葉にイツキは「うーむ」と考え込んでしまう。


「ミェンもお魚食べたい!行きたい!」

「確かにまた行ってみたいけれど…なんかあの辺りって危ないんじゃなかったっけ…?最近その件についてあんま耳にしないから、案外平気なのかな…どうだっけ…」


三人娘のお魚コールに「ふーむ」と宙を見ながら考え込むイツキ。

「まぁ何とかなるか」とすぐに思い直し、手をパンと叩いて口を開いた。


「よしっ!どうせ暇だしさ、ちょろーっと様子を見に行ってみるかね?ほら、なんかあの辺りはきな臭いらしいからさ、空から見てヤバそうだったらそのまま引き返すみたいな感じになるけど…」


そんなイツキの言葉にペロ達はキャーキャーとはしゃぎ出す。


「お魚食べたい!」

「お魚お魚!」

「おしゃかな!」


お魚コールは益々ヒートアップ。

イツキは頬をポリポリとかく。

テンションが益々上がったペロがイツキの服をグイグイ引っ張る。

ララミェンとエステルも楽しそうにキャーキャーと笑いながらイツキの服を引っ張った。


「大急ぎで行けば…まぁ日帰り出来るかなぁ…?」


イツキは困惑気味に天を仰ぐ。




神聖ムーンリト王国

首都ミーティア

旧テオドーラ邸




旧テオドーラ邸の会議室ではテオドーラ達引退組と、現役組の三本柱や幹部が朝から集まっていた。

皆一様に深刻そうな表情を浮かべている。


フランクが静かに語り出す。


「大マーリング連邦とランブルク王国が開戦するのは時間の問題です。両国の間では一触即発の睨み合いが今もなお続いています。我々教国としては同盟国であるランブルク王国が戦争に突入し、ランブルク王国から支援要請が出れば、当然同盟国として支援せざるを得ない訳で、そうなると必然的に我々神聖ムーンリト教国も戦争に参戦する事となります。」


フランクはそこまで言うと「ふー」と小さく息をついた。


「聖女ララルージュは明日首都ミーティアへ帰還予定。ユグハルト帝国へ行っていたサルバルト夫妻も聖女ララルージュと一緒に首都ミーティアに帰還。大マーリング連邦は嘗ての人族国家とは違い、魔法の練度、それに独自のポーション製造体制など、油断ならない体制を構築しています。我々も「こちらには超長命種がいるから」と油断することなく、来る戦争に備えて可能な限りの準備を進めています。」

「教国軍も既に「結界破り」は完璧だ。あっちよりも精度の高い物が誰でも使えるようになったぜ。」


ヴィクトールがそう言うと、賺さずニコが口を開いた。


「ポーションについても計画通り着々と準備が進んでいます。ライヤヨヨ氏が製造ラインに加わったことで無理なく増産出来るようになっています。魔力回復ポーションについても潤沢に用意できております。しかし当面の間、カミラについては引き続きポーション製造要員として我々にお貸しいただければ…」

「その辺は問題ないぜ。いよいよって時は声掛けるつもりだけど、それは序盤からじゃねえ。」


ニコはヴィクトールの意見にニッコリと微笑む。

ヴィクトールは言葉を続けた。


「ちなみに魔境の森はじいちゃんのお陰で入ってこれねえから良いとして、カーフラス山脈の最西端のベルモン山の麓のゴーズカルの森、そして西からターイェブ州のザミエ、ヴォーチュ、ノガダン、ボン、アーデマン州のミルラド、ニソール、リューズ、それぞれの町に教国軍を展開予定。詳細な規模は書類を見てくれ。」


そんなヴィクトールの言葉に、テーブルについた一同はジッと手元の書類に目を通す。

今度はアンジュが口を開く。


「大マーリング連邦にある教会について、孤児の引き受けのないところは順次引き上げて殆ど撤収完了。孤児を引き受けているところについて、孤児の教国への受け入れは特に問題ないみたいで、順次引き上げ中。」


アンジュの言葉が終わると、アイセルが徐に口を開いた。


「大マーリングの貴族にパイプがある諜報員が掴んだ情報が昨日届いたの。報告いい?」

「ええ、お願いします。」


フランクは微笑みを浮かべたままそう告げる。

アイセルは小さく頷いてから言葉を続けた。


「オリバー・エイムスの正体。これやっぱりモードラド王国の人間じゃなかった。」

「誰だよ?」


ウーゴがそう口を挟む。


「大マーリングのウンベルト王の婚外子。」

「別に婚外子じゃなくたって誰でも良いと思うんだけどな…どれだ?若い男のガキがいるってーと第二王妃の侍女か?城下町の売れっ子の踊り子か?」


ウーゴの言葉にこくっと頷くアイセル。


「ん、踊り子か?確か大マーリング南方人の褐色の踊り子だったな?確か人族の男が子供として居るはずだ。扱い的にこいつらが利用しやすそうだな。」

「その通り。というかその手のお手つきは手切れ金を渡してどこかに囲ってる。ウンベルト王の血を引く私生児の中でも15になるチャーリーという男だけが去年の夏前後から急に姿を消した。エイムス家の事故があった頃とほぼ同じ時期。諜報員と交流のある貴族の話だと、どうやらあちこちに散っている私生児を秘密裏に探している動きがあったって。これを見て。」


そしてアイセルは一枚の紙をテーブルで回す。

一通り目を通してからアイセルのもとに戻ってきた紙をアイセルがジッと見つめる。


「今見て貰ってるのはチャーリーの人物画。エイムス家から亡命してきたオクタビオさんに見て貰ったけど、領主であるジョージ卿が亡くなった後、一度だけ屋敷で見かけた事があるって。」

「何て名乗ってたの?」


テオドーラがアイセルにそう尋ねるが、アイセルは首を横に振る。


「亡命してきたオクタビオさん。ジョージ卿に近い、側近みたいなポジションだったけどね、残念ながら先代で代理をしていたニクソン卿の側にまでいた訳じゃないから分からず。」

「チャーリーは大マーリング、そしてモードラドの反国王派貴族の後ろ盾を得てオリバー・エイムスという架空のエイムス家の遠縁の縁者に成りすまし「バーグナズシャイン」についての情報を入手。熟練度を上げるついでに全てのエイムス家のお家断絶に成功…と。」


フランクの言葉に応える者は居ない。

暫くしてウーゴが口を開く。


「それとなくジーニャから聞き出したけどよ、サーラ曰わくバーグナズシャインの真価は同族殺しの数で決まるらしい。セシーリアの戦技みてえなモノの中でも、デタラメに強えのが使えるようになるってな。」

「親父、じゃあよ…」


ヴィクトールがウーゴにそう言いかけたが、それ以上は言葉を詰まらせる。

ウーゴは俯いてジッとテーブルを見つめたまま口を開く。


「熟練度…ふざけた言葉だよな。人殺しの熟練ってか…。ヤツら結界破りも覚えた。自国内でポーション製造も出来るようになった。魔力回復によって魔法に革命が起きた。超長命種に対抗出来るバーグナズシャインの熟練度?もバッチリ。大マーリング連邦内でランブルクや教国への不信感も高まった。そのうち適当な言い掛かりみてえなあやふやな理由で開戦、だろうよ。…揃ったんだ。」


俯いたままそこまで言ったウーゴ。

ゆっくりと顔を上げて言葉を続けた。


「大陸全土を支配する準備…がよ…」



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