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ダークエルフと暮らす異世界間違い転生  作者: 三沢 七生


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540.聞いてないの?

クラウス達とモグサ家で由縁のある者達との感動の再会は暫く続き、その間に他の妻たちも本邸に集まった面々と交流を始めていた。

そんな中で新たな人材に目を輝かせているのはニコだ。

クラウスは師匠であるトウシロウの側で暮らしたいと熱望。

イツキ達も特に異論はなかったので大歓迎。

あまりやたら関係者を増やせない天界関係者向けの接客要員が増やせるチャンスとばかりに鼻息荒くしていたニコ。


ニコは早速ララミューズとエーリクとララエーヴァのリャムロシカ組を引き連れてライヤヨヨに話しかけていた。


「最近あちこちの町でララミューズ薬局のポーションを見かけるようになりましたが…なるほどですね。ここで全部作られているのですね。」

「先程チラッと聞こえてきたのですが、ライヤヨヨさんは製薬持ちと伺いました。そこでどうでしょう!我々と一緒に働きませんか!?」


ニコがそう言い終えると、ライヤヨヨの答えが返ってくる前にララミューズが口を開いた。


「うちのリャムロシカの里にロミーヨヨさんという方が居るのですが、ライヤヨヨさんのお知り合いですか?」

「ふふ、その子は私とクラウスの娘ですよ。元気にしてますか?」


そんなライヤヨヨの言葉にララミューズ達リャムロシカ組は大きく頷いた。


「私達の製薬の先生です!里の子ども達の中で製薬を持っている子はロミーヨヨさんから学ぶんです!」


エーリクの言葉にライヤヨヨはふふっと微笑む。


「母として鼻が高いですね。ふふ、折角だし働く方向で家族に相談してみますね。」

「わぁ!ありがとうございます!ちなみにお給金や勤務形態の方ですが…」


そこから用意周到なニコがアイテムボックスから紙を取り出してライヤヨヨに手渡す。

そこに書かれていた給金はとんでもない高給で、ライヤヨヨは目を丸くしながらニコの口からスラスラと飛び出す雇用条件について聞いていた。




その後もニコはクラウスの妻たちにゲオルグの牧場での労働や天界からの観光客相手のエキストラを頼んでいた。

薬局関係で多忙でもなく種族もなかなか豊富なクラウスの妻たち。

クラウスの妻たちだけでかなり稼ぎ出せる算段がつき、妻たちが働くことに対して困惑気味なクラウスを差し置いてクラウスの妻たちは大盛り上がりしていた。


これまで妻たちに一貫して「惚れた女に金を稼いで貰うなど言語道断」「そんなみっともない真似はできねえ」「俺が稼ぐからお前たちは花でも摘んで鼻歌でも歌っていてくれ」と男気溢れる事を言っていたクラウス。

しかしクラウスは宣言通り、ライヤヨヨを妻にしたその日から何人妻が居ようと常に初志貫徹で有言実行し続けていた。

だからこそ妻たちはクラウス抜きでクラウス並みに稼げる事に大興奮。

ニコもひょんな事から多種多様な種族が天界からの観光客を相手にする算段が急につき、非常に大満足していた。


「まぁあんなに楽しそうだしいいじゃあねえか、なっ?」


不服そうなクラウスにトウシロウがカラカラ笑いながらクラウスの背中をポンポンと叩く。


「楽しそうですが…惚れた女に稼がせるなど…!」

「ワイワイ楽しんでさ、ついでに金がもらえると思えばいいんだよ!現にここの仕事は誰か適当な従業員に任せられる類の仕事じゃあ無いんだしな!」

「そ、そうですか…」

「そんな事より!お前さん、ちょっとどれだけ強くなったら俺に見せてみろ。」


トウシロウは白々しく威厳を醸し出しながら腕を組んでそう言うと、クラウスはピシッと姿勢を正す。


「はいっ!師匠、胸をお借り…「違う違う。ちょうど良い逸材が居るんだよ。カミラー!」


クラウスの言葉を遮ってカミラを呼ぶトウシロウ。

カミラは小走りでトウシロウのもとまでやってくる。


「なにー?どうしたのー?」

「こいつはクラウス。俺の弟子のうちの一人なんだよ。」

「それはさっきの紹介で聞いたよ?テーゼウスさんのお父さんなんでしょ?どうしたの?」


勿体ぶるトウシロウにカミラは呆れ気味にそう告げる。

トウシロウはクラウスの背中をバシンと叩いてにやっと笑った。


「最近物足りねえって言ってたろお?そこでコイツだ。全力でクラウスと素手で戦ってみな。きっと良い経験になるぞお?」

「えっ!?全力ー?そんなトウシロウさんが勝手に決めて良いの?怪我させちゃうかもだよ?」


カミラは自身の力を理解しているからこそ、心配そうにそう言ってクラウスにチラッと視線を送る。

何時までも頭の上がらない師匠トウシロウの前では借りてきた猫のように大人しかったクラウス。

しかしカミラの要らぬ心配がクラウスの闘争心に火をつけた。


「カミラ、お前さんの評判はミッシェルとグレースからよーく聞いてる。お前さん、相当強いらしいな?」

「は、はい。そこらの超長命種には負ける気はしないと言うか…負けるわけがないです。」


何となく闘争心にチラッと火がついたカミラは、そう言って肩を竦める。


「俺と戦え!カミラァ!」


完全にやる気に火がついたクラウスはそう叫んで自身の拳と拳をぶつける。

クラウスの妻たちは火がついてしまったクラウスに呆れ気味で苦笑している。




そしてクラウスとカミラの手合わせが始まろうとしている。

既になんちゃって集落のある広場でド派手な手合わせをするのはマズいとイツキはストップをかけ、結果としてデーメ・テーヌに頼み込んでギャラリー全員含めて開発室(デバックルーム)へと転移した。


「何もない広場なんて久しぶりね。」

「だなぁ、何だか懐かしくなっちゃうね。」


イツキとララミーティアは久しぶりの何もない広場を一望してそう言った。

ガレスは腰に手を当てながらホッとした様子でため息混じりに口を開く。


「何というかホッとするな。」

「だねー、革命前の王女時代を思い出すよ。」


テオドーラもそう言って肩を竦めた。

他のモグサ家の面々も久しぶりの何もない広場に感想を述べ合っている。


そんな中、クラウスとカミラは向かい合ったままジッと見つめ合っている。

トウシロウが間に入って口を開く。


「ここは死ぬことはねえ神様の管理する場所だ。首と身体が泣き別れしても死なないって事だな。」


そんなトウシロウの言葉にクラウスは大きく頷く。


「師匠の言うことは信じます!」

「よしっ!折角だ!二人とも全力でやっちまえ!」


トウシロウはそう言ってサッと後ずさった。




「それでは行きますね!」

「おう!こい!」


カミラとクラウスが地面を蹴ってぶつかり合う。

テクニックにおいては数多くの手練れとぶつかってその技を盗んできたカミラが圧倒的だった。

しかしクラウスはいくらカミラの攻撃を受けようと、まるで効いている様子は無かった。


「カミラァ!攻撃が軽い!軽いぞぉっ!!」

「くっ!!全然攻撃が…!!」


素手という事で主に打撃の威力が高いテッシンのテクニックを中心に戦うカミラ。

カミラはパッと距離を取り、身を屈めてゆっくりと息を吐く。


龍牙掌(りゅうがしょう)っ!!!」


カミラの突き出した掌底から猛烈な魔力の奔流が起こり、クラウスに襲い掛かる。

しかしクラウスはそれすらも正面からかわすこともなくマトモに受けた。


「軽いっ!!姐さんから教わった…ギタ・アサクラの本物を見せてやる、よく刮目しろっ!!」


そう言うとクラウスもカミラと同じように構えた。

カミラは何重にも結界を展開する。


龍牙掌(りゅうがしょう)っっ!!」


カミラを目掛けて魔力の激流が襲い掛かる。

結界で防ぐと見せかけてカミラはパッと飛び上がって上に逃げた。

しかしクラウスはグッと掌底の構えのままの右手を上に向けた。

するとそのまま龍牙掌(りゅうがしょう)はカミラに襲いかかった。


テッシンから盗んだ龍牙掌(りゅうがしょう)は方向転換までは出来ない、あくまで素早さ重視の直線的な技だった。


(私のヤツとはっ…!)


進行方向をコントロール出来る事など知らないカミラはそのままなす統べなく龍牙掌(りゅうがしょう)を喰らい、カミラを中心に大爆発を巻き起こした。


「まだまだぁっ!!龍煌波(りゅうこうは)!!」


クラウスは右手と左手を組んで何か印を結び始める。

印を結ぶ度、カミラに様々な属性を纏った魔力による攻撃が次々と襲い掛かる。


(このままだと…!)


辛うじてその場から脱したカミラはどうにか体制を立て直す為、クラウスから距離を取ろうとするが、クラウスはそれを許さない。


「まだまだ魔力の練りが甘いっ!!」


跳躍したクラウスの重い三段蹴りがカミラを捉えた。


「がはっ!!」


重くも素早く鋭い蹴りにカミラは地面に叩きつけられる。


大瀑布(だいばくふ)!!」


クラウスから繰り出される拳の雨が、地面に叩きつけられたカミラの背中に突き刺さる。

カミラはなす統べなくその場で伸びてしまった。




「まだまだ上には上が居るんだなって思ったよ。流石テーゼウスさんのお父さんだね。」


心配そうなララルルディに寄り添われながらカミラは肩を竦めて苦笑した。

そんなカミラにクラウスは豪快に笑う。


「カミラ、お前さんは俺と同じ舞台にわざわざ降りて戦ったんだ!まだその若さ、そして種族から考えればお前さんがどれほど血を吐くような鍛錬を積み重ねたのか良ーくわかるぞ!」


クラウスはそう言ってカミラの頭を乱暴に撫でる。


「それに何の縛りもなく戦っていたら俺は負けてただろう。お前さんがこれから更なる上を目指したくば、磨くは魔力の練りだ。」

「魔力…練り?さっきもそう言えば…」


キョトンとするカミラにクラウスは満面の笑みを浮かべる。


「ああ、体内の魔力を練る。並みの魔力視じゃあ見れねえ。大抵のヤツはいつの間にか感覚で自然にやっている。こればっかりは人によって感覚が違うから「こうすると尚良い」っつー助言は出来ねえ。」

「そ、そんなの誰も教えてくれなかったよ…?」


カミラは呆然としながらそう告げると、クラウスは自身の拳を握ってみせた。


「ミッシェルやグレースにも言ったが、こりゃ誰かに教わって辿り着く境地じゃねえ。と言うか教わらないと分からねえ奴がたどり着ける境地じゃねえと言った方がいいな。制御出来ねえやつが無理になんかしようってなるとよ、身を滅ぼしちまう。それにある程度強くなりゃそんな事知らなくても魔物相手、人族相手なら平気だからな。俺はこれにたどり着けたやつには「自分から弟子に教えるな」と口を酸っぱくして言う。姐さんもそう言ってたからな。」


クラウスの言葉にカミラは自身の両手で拳を作って見つめる。

何か考えているカミラにクラウスは更に言葉を続けた。


「ミッシェルもそうだったけどよ、カミラもまだまだ伸び代がある。それにカミラ、お前さんはもう既に無意識のうちだろうが自分なりに制御出来てる。こりゃ誰かに教わったり真似したりして身に付くもんじゃねえ。道のりはまだまだ長いぞカミラ!」

「はいっ!」


ニッコリ満面の笑みを浮かべるカミラ。




その後一同はもとの本邸前に戻り、そのまま宴の準備が始まる。

イツキとララミーティアが召喚した料理を盛り付ける手伝いをしていたアリマがイツキに向かって微笑みかけた。


「そう言えばおめでとうございます!」

「え?あり…がとう…ございます…?」

「もし子供が出来たら皆さんにとっては曾孫ですねー。」


アリマの言葉が一体何の件なのか思いつかないイツキ。

しかし隣で聞いていたララミーティアがクスクス笑いながら口を開く。


「ふふ、娘か息子よ?」

「えっ?いやいや、曾孫ですよね?」

「あー、マーウーですか?ははっ、マーウーは俺の妻ですよ?俺たちと夫婦なんですよ。」


そう言ってイツキが笑うと、まだお腹がそこまで目立っていないマーウーがサッとイツキに駆け寄って抱きついた。


「なになにー?」

「アリマさんがおめでとうって。」

「えへへ、どういたしまして!」


イツキの言葉にニッコリ笑顔を浮かべるマーウー。

しかしキョトンとしたアリマはやがてクスクス笑い出す。


「いやだなぁ、それもおめでとうですけど!私が言ってるのはそっちじゃなくてグレースちゃんとミッシェルくんの結婚の方ですよ!」


そんなアリマの言葉にララミーティアが自身の手のひらをポンと拳で叩く。


「だから曾孫なのね!なるほどなるほど!」

「グレースは孫だしなー、確かに曾孫に…結婚?」


イツキがそう言ってポカンとすると、笑っていたララミーティアも固まってしまう。

マーウーが首を傾げながら口を開く。


「結婚?グレースとミッシェルって結婚するの?」

「え?あれ?するんじゃなくて…し、しましたよ?えっ?皆さん聞いてないんですか?」


イツキ達は視線を合わせて首を横にフルフルと降った。

アリマもそんなリアクションにキョトンとしてしまう。


「し、しましたよ?えーと…しましたね?」


盛り付けられたら皿を取りに来たララグレースが只ならぬ雰囲気のイツキ達に声をかける。


「何の話をしているの?」

「グレースちゃん、みんなに結婚の話してないの?」


アリマがそう尋ねると、ララグレースがハッとした顔をする。


「あっ!!そうだった!!ミッシェルー!!」


ララグレースの呼び声にパッと駆けてくるミッシェル。


「どうしたー?」

「感動の再会だ、カミラの手合わせだですっかり忘れてたけど、私達の結婚!!」

「あー…タイミングを逃したままだったな…」


ララグレースとミッシェルは苦笑をしあっていた。


本邸前にイツキ達の叫び声が響き渡る。


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