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勇者は転職して魔王になりました  作者: nauji
最終章 新天地編
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SS-13 エピローグ 魔法使い

 整理整頓された部屋は、一箇所だけが散らかっている。


 それもそのはず、ここ最近はずっと一つの事柄に掛かりっきりなのだから。


 寝たいときに寝て、他はひたすらに作業を続ける。



「お師匠様ー。お食事の用意ができましたよぉー」


「分かったわ。もちろん、主食は用意してあるんでしょうね?」


「主食って、お菓子のことですよね? 一応、いつも通り作ってありますけど」


「でかしたわ。有能な弟子を持って、アタシも鼻が高いわ」


「できれば魔法関連で褒めていただけると、大変ありがたいのですけれども」



 小生意気な台詞を聞き、作業の手を止めて向き直る。


 愛想笑いを浮かべたおかっぱ頭。


 不肖の弟子、その3人目。


 部屋が片付いているのも、眼前の弟子の功績。



「アンタにそっち方面の才能は絶望的ね。他事は人並み以上にできるんだから、バランスも取れてないわよね」


「成長を促すような指導を是非」


「無駄は嫌いなの。自主練に励みなさい」


「ですよね、分ってましたけど。それで、お食事はどこで召し上がりますか?」


「ここを汚したくはないものね。いいわ、移動しましょう」


「はい」



 紙の束に背を向け、弟子に続き自室を後にする。


 ホント、不便なことだわ。


 魔法協会。


 山ほども高くそびえる歪な塔。


 魔法の使い手という皮を被った研究者どもの巣窟。


 利便性は劣悪。


 施設は増設に増設を重ね、並みのダンジョンよりも魔窟と化している。


 飛行魔法を完成させられれば、階の移動も楽になるのに。



「研究は進めなくてよろしいんですか?」


「生意気にも弟子の分際で、アタシに意見しようっての?」


「いえ、そんな。ただ、最近はずっと書き物ばかりのご様子なので」


「何があるかなんて分からないもの。備えられるときに備えておかないと」


「もしかして、勇者様のご容体のことが関係してたり……?」


「アンタ、無駄に聡いわよね」


「済みません」


おおむね正解。動けなくなってからじゃ、折角の知識が無駄になっちゃうもの。研究の続きは、頭の中のモノを書き終えてからかしらね」


「それで、勇者様のご容体の方は?」


「良くはならないわ」


「え」


「アレはそういうものなのよ。寿命を代償とする神級魔法。馬鹿みたいに何度も使うから……」


「魔法なのに魔力以外を必要とするんですか?」


「らしいわね。職業に紐づけられた極めて特異な魔法。まさか転職しても使えるなんてね」


「転職はスキルは引き継げませんが、魔法は引き継げますからね」


「アタシが聖職者と勇者と魔王に転職できれば、全属性制覇できるのに」


「……悪夢ですね」


「何か言った?」


「いえ、別に何も」



 雑談が済むころになり、ようやく食堂に辿り着く。


 とは言え、この塔に食堂は無数に存在する。


 それもまた無計画な増設の弊害だ。



「おぉ、姉御!」


「ようやくのお出ましですな!」



 出迎えたのは、筋肉。


 いえ、弟子のオッサン2人。



「師匠よりも先に、弟子が食事を取るんじゃないわよ」


「もちろん、まだ手を付けてはおりませぬ」


「当然、師匠の到着をお待ちしておりましたとも」


「ならいいわ」


「すぐにお持ちしますね」



 返事の代わりに席に着く。


 長机に長椅子。


 取ってつけた様な内装だ。


 ここの住人は、見た目など考慮しない。


 実用性、いや、実用に足ればいいのだ。


 食事も各自で用意する他無い。


 食材だけは共有で、行商や狩りで都度補充している。



「また来ますかな」


「懲りぬ御仁ですな」


「何が?」


「サラマンドラ殿です。前回は先月でしたので、そろそろ来る頃合いかと」


「もうそんな時期なのね。確かに懲りないわね」



 何の因果か。


 付け狙われる切っ掛けは、王都での対戦か。


 毎月、どうやって見つけたのか、アタシに挑みにやって来る。


 その度に、返り討ちにしてやっているのだが。



しかり。師匠に敵うはずもありますまいに」


「それはどうかしらね」


「と、仰いますと?」


「超級魔法を使って勝てなかったらしいからね。身体能力、というよりは反射神経とかかしら、は向こうが圧倒的に上よ」


「つまりは勇者殿ですかな? そこまでの相手でしたか」


「我らでも危うい相手やもしれませんな」


「ちゃんと聞いてた? アンタたちじゃ相手にならないわよ」


「お師匠様、お待たせしました。どうぞ」



 話のオチを待っていたのか、タイミング良く声が掛けられた。


 相変わらず油断のならない弟子である。



「ありがと。じゃ、頂くわ」


「では我らも」


「頂きましょうぞ」


「はい」



 美味しい。


 何気に機関の料理人にすら引けを取らない味。


 もしくは、好みを把握されているからか。


 やはり油断ならない。



「それでお師匠様。サラマンドラ様とは、また戦われるおつもりですか?」


「やっぱり話を聞いてたのね」


「あはは」


「そうねぇ。そろそろ面倒臭いし、ゴーレム辺りにやらせてみようかしら」


「おぉ、遂にお披露目ですかな!?」


「サラマンドラ"ぐらい"倒せる程度には仕上がってるといいけど。最近触ってないから、どうかしらね」


「想定しているのは、勇者様なんですね」


「何で分かるのよ……。アンタ、時々怖いんだけど」


「えぇっ!?」


「異常だな」


「変態かもな」


「どっちも違いますよ~」



 相手は見た目通り火属性。


 火耐性で固めて、水属性で攻撃してやれば容易い。



「でもよろしいんですか? お師匠様との対戦を楽しみにされているような気がしますけど」


「毎月よ? いい加減付き合いきれないわ」


「でしたらまずは、我々が!」


「別に止めはしないけど、自己責任でね? アタシ、助けないから」


「流石は姉御、手厳しいですな」


「水魔法のごり押しで完封すれば済む話。いけますぞ!」



 思考が似たり寄ったりだったことに、頭痛を招く。


 これは、もう少し真面目にゴーレムに調整を加えないと、足をすくわれるかもしれないわね。



「いやはや、楽しみですなぁ」


「今から腕が鳴りますな」



 こっちの手が空くなら助かるけどね。


 さっさと書き終えて、研究を再開しないと。


 あの馬鹿を実験台にしてやるんだから。


 年下の分際で、先に死ぬなんて許さないんだからね。






本日はSSを後2話、投稿します。

今回更新分を以て完結となります。


えー、実は後に、魔法使いとおかっぱ頭の弟子はくっつきます。

流石にそれをここで書くには文字数が凄くなりそうなので割愛させていただきました。

魔法使いの尽力も空しく、主人公が快復することは叶いませんでした。

傷心の彼女を支えたのが、弟子だったわけですね。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者に挑むは無職の少年』 本作の続編も完結!

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