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第11話 左腕

 

「踏み台……か。見た所、君は無能力者のようだが、本当に君が琴葉や<闇の中の蜘蛛(ダークスパイダー)>を倒したのか?」


 日本最強のSランクである八神が少し驚いた表情で質問をしてくるが、【死淵】の残り時間が少ない為、俺はその質問を無視して真正面から八神に向かって走っていく。

 と、走っていた俺はとっさに左側に跳ぶ。

 その刹那──俺の右側……さっきまで俺がいた所にレーザーが直撃して道路が抉れる。


「今の反応……<棘穴無光(グレイシャルゲイザー)>の狙撃手の存在に気づいていたな。うちの狙撃手の能力、《高速の光熱棒(ホット・レーザー)》がまともに当たっていたら骨すら灰となっていただろうから良かったな」


 八神はそう言ってポケットから小石をたくさん取り出し、12歳くらいの少女──もう一人のSランクの方に全て投げる。

 その瞬間──Sランクの少女の目の前に黒い穴(ブラックホール)のような物が現れ、小石が全て飲み込まれる。


「なーなー、()()はどうすればいいのなー?」


「相手の頭上に落とせ。できれば避けたいが、今回は殺しの許可が降りている」


「分かったなー」


 その短いやり取りの直後、俺の頭上に白い穴(ホワイトホール)が現れ、そこからさっきの小石が大量に落ちてくる、と同時にその小石から1m程の棘が出てきた。

 俺はとっさに頭上を思いっきり、剣で振った事により風圧でほとんどの小石を吹き飛ばし対処する事に成功する。

 だが……これは……、そう思い俺は自分の顔に手を当てる。

 そこからは鮮やかな血がしたしたと流れていた。

 掠っただけでこの切れ味……か。


「ほぅ、無能力者の割には中々やるようだな。私の触った物体から棘を出す能力、《自生する棘(ゾーン・ランス)》と雛乃の《黒白の穴(ブライト・ホール)》による連携技を対処するとは……だが、これはどうかな? 雛乃、次は戦術βだ」


「分かったなー」


 そう言ってまた、黒い穴(ブラックホール)が小石を吸い込み、今度は俺の周り──360度から小さい白い穴(ホワイトホール)がたくさん現れ、小石が出てきた。

 360度から棘を出して逃げ場を無くして串刺しにする、これが作戦β……か。

 だがしかし、俺は即座に正面の石だけ刀で叩き落とし、そこから強引にその場を切り抜ける。

 

 ここまでは順調だが……【死淵】を使える時間が20秒程しか残ってないな……。

 一度、解毒剤を飲んで解除してしまうと3時間程体に解毒剤が回っているせいで、薬で連続して【死淵】を使う事はできない。

 だから安全に勝とうとするなら残り20秒で対処するしか無い。

 そして今、その20秒で真っ先に倒すべき相手は《黒白の穴(ブライト・ホール)》の能力を持つ、雛乃とか言うSランクの少女だ。

 多分この能力は、黒い穴(ブラックホール)が吸い込んだ物を白い穴(ホワイトホール)が吐き出す事ができるって感じだろう。狙撃手の位置交換などかなり応用が効く超便利な能力だ。

 その能力を真っ先に倒しておかないといけないと思った俺は、急いで倒そうとした直後、俺の体にぞわりと殺気が流れ込んでくる。

 それでようやく気づく。

 さっきまで身を潜めていた者の存在に。

 そいつの邪魔のせいで俺は急遽方向転換して八神の方へ向かう。

 が、その刹那──遠くの建物からピカッと光るのが見える。

 あれは恐らく狙撃手の出したレーザーの光だろう。

 そして、このレーザーは俺に直撃するだろう。

 それを全て分かった上で俺は、半自動的に解毒剤を飲み【死淵】を解除させる。

 後は……最後のこれに賭けるしか無いか。

 思わぬ誤算のせいで、こんな事になるとはな……。

 だが、悪いけど代償は大きいが今回は俺の勝────その時だった。

 もう一つの誤算が起きた。

 起きてしまった。


「危ない、颯太さん!!」


 そう言って会長が突っ込んできて俺の事を突き飛ばしたのだった。

 そして……それのせいでレーザーが…………会長の左腕に直撃した。

 甲高い悲鳴と共に、あまりの痛みから会長は失神してしまう。

 会長の左腕は何処にも見えない。

 骨すらも残らず灰になってしまったのだろう。

 俺は何もできない事が分かってはいるが、抑えられた本能が爆発するかのように会長の元へと近づいて行く。


「かいちょー? かいちょー? なんで左うでないの?? なんでたおれてるの? いたいの? いたいならニーナがいたいのどっかしてあげるよ?」


 ニーナはそう言って、自身の体から()()のような物を出して会長の方へ行こうとするが……八神によって取り押さえられる。


「雛乃、このニーナって子供を指定の場所へ送れ」


「なーなー、この子を引き取ったりは……」


「できないな、()()()()と重ねているのか?」


「…………」


「どっちにしろ許されないだろうな。見た感じ、こいつはお前とは違う」


 そんな会話声が聞こえてくる。

 しかし、俺は何もできなかった。

 できる事なら誰かに殴って欲しかった

 【死淵】の反動によって、左腕が無くなった会長の胸を揉み揉み揉んでいる状態で黙って見ている事しかできなかった糞みたいな俺を。




あとがき


ここまで読んでくれてありがとうございます!

能力説明です。

高速の光熱棒(ホット・レーザー)

直径1m程の高熱のレーザーを出す能力。

骨すらも灰にする程強い


自生する棘(ゾーン・ランス)

自分が触ってから24時間以内の物体から棘を出す能力


黒白の穴(ブライト・ホール)

空間上に黒い穴 (ブラックホール)みたいな物と白い穴 (ホワイトホール)みたいな物を出す能力。

黒い穴は万物を吸い込み、白い穴は吸い込んだ物を吐き出す

人間を黒い穴で吸い込み、白い穴から出す事もできるので転移系の能力として使える希少な能力



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