第10話 5分間の思い上がり
「キキッ、無能力者の癖に随分と大口叩くっしょ! 私の戦術にひれ伏せっしょ!」
そう言って敵……琴葉は右手にナイフ、左手に銃を構える。
そして、俺の元に近づいてきてナイフで俺を何回か切り裂こうとしてくる。
俺がそれを全て難なく避けていると数秒後、俺から離れて銃を撃ってきた。
しかし、その銃弾も背中から抜いた刀で難なく弾く事に成功する。
「これは…………」
「キキッ、見たっしょ? 相手に近づきナイフで姿勢を崩した後、後ろに下がって銃を撃つ! これぞ私の戦術っしょ!」
向こうは自信満々に戦術とやらを話しているのだが……正直かなり弱いぞ?
相手は腐ってもAランクであり、プロだ。
確かにプロの特隊の中には、普段は戦闘できない程弱くても、仲間との連携で本領を発揮する者だっている。
でも……そんな人を単独で足止め役に使うなんてありえない。
まぁ、取り敢えず攻撃してみれば分かる事か。
「キキッ、無能力者の癖にそこそこやるみたいっしょ! 確かに<棘穴無光>の4人が揃っていない今、決定力には欠けるけど、お前が勝つ事は無理っしょ!」
琴葉はそう言いながら、もう一度俺の元へ近づいてナイフで俺を切り裂こうとするので俺はそれを避けて
「悪いけど……手加減はしないぞ」
そう言いながら刀で切ろうとしたが……手応えが無い……?
「キキッ、無駄っしょ! 私の能力《一定時間の無敵状態》はどんなダメージも受けない無敵状態になれる能力っしょ!」
どんなダメージも受けない能力……か。
確かに能力者の中には、そんな馬鹿げた能力者もいると聞いた事がある。
だが……少なくともお前は……
「そんな都合の良い能力を持ってなんかいないよな? 悪いがお前には踏み台になってもらう!」
そう言って俺は、琴葉の持っているナイフと銃を叩き落として、背中に手を回し、彼女を抱いているような体勢になる。
この時、良く見るとかわいい琴葉の小さくて柔らかいお胸が俺の体に当たっているのだが……全ての欲を封印した【死淵】状態の俺はそんな事、気にも留めずに
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!
俺は琴葉に連続で腹パンをする。
案の定、手応えは無い。
「キキッ、無駄って言ったのが気づかないっしょ? 無敵状態の私にダメージを与えられる訳ないっしょ!」
「確かに……無敵状態のお前に攻撃するのは無駄だろうな」
「キキッ、何が言いたいっしょ?」
「で、その無敵状態、後何秒で終わるんだ?」
「…………ッ!」
そう、琴葉の能力、《一定時間の無傷状態》には時間制限がある筈だ。
恐らく、数秒間能力を発動したら、数秒時間を置かないと能力を発動できず、連続では使用できないって所だろう。
だから数秒たったら、俺から離れて銃で撃って来たんだ。
と、その時
「ぐふぉっっ!!」
何かを吐き出すような声を漏らし、琴葉の体からぐったりと力が抜ける。
が、しかし……俺は腹パンを止めない。
ドンドンドンドンドンドンッ!
「キキッ、何で……何で私の無敵状態が切れてない事に気づいて……演技は完璧だったっしょ! 大抵の奴ならここで手を緩めるから逃げられるのに……」
琴葉がそう言った直後、俺の拳に確かな手応えが感じる。
それと同時に琴葉は10m以上吹っ飛んで、公園の端にあるすべり台に激突した。
俺は琴葉が気絶した事を確認して、最後に告げる。
「何故気づいたかって? それはな……もし、お前の能力が解除されてたら、こんな風にただでは済まなかったからだ」
そうして俺は、公園を急いで去る。
楓には先に行って貰ったが、相手は日本一のプロの特隊の部隊。
楓と会長だけでニーナを守れるかが心配だ。
取り敢えず、会長はニーナをトイレに連れて行くと言っていた筈だ。
この辺で誰もが使えるトイレと行ったら……コンビニのトイレが7件と言った所か。
会長は確か、北の方に向かって行ったような気がするから、当てはまるコンビニは……3件。
少し、方向がずれてるような気もするけどとにかく行ってみよう。
スマホとか持ってれば楽なのに……後で買っておこうなどと思いながら、俺が走ってコンビニに向かっていたら……道路の向こう側に3人組の男性がいた。
リーダーらしき男の腕章には『S』と書かれていて、残る二人は『A』と書かれている。
「お前達は…………?」
「俺達、日本で2番目に強いプロの特隊の部隊<闇の中の蜘蛛>を知らないのか?」
日本で2番目の特隊……。
つまり、ニーナを捕まえるのに日本で1、2の特隊を使ったって事なのか?
さすがにこれは大げさすぎる。
あくまで向こうは特隊なので法に触れる仕事は受けない筈だから、ニーナが狙われる原因で思いつくのは腕章の未所持くらいだ。
確かにその罪はとても重いが、だからってこれはやりすぎ……と俺が思っていたら、この場の不審な所に気づく。
辺りは焼け焦げていて、風も少しおかしい。
そして何より……楓の倒れ方。
これは……そうか!
俺は楓の残してくれた事に気づき、敵に告げる。
「お前等には即刻、踏み台になってもらう!」
そうして俺はただ一回。
ただ1回、刀を振っただけで相手は全員倒れる。
後は……倒れている楓は、取り敢えず放置でいっか。
そうして俺は、下手したら新幹線程の速さで急いでコンビニに走っていった。
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まずは1件目。
トイレには誰もいないが、既に済まして帰った可能性もある。
なので俺は、クンクンと嗅覚に神経を研ぎ澄ませる。
ニーナは昨日、俺の家にお風呂に入った。
つまり、俺か楓と同じ石鹸を使っている筈。
更にここは室内。
それなら、【死淵】状態の俺の嗅覚なら分かる!
だが、どうやら会長達はここには来ていないようだった。
次に2件目、ここにもいない。
次に3件目、ここはトイレに誰か入っているな……。
取り敢えず、コンコンとドアを叩き呼びかけてみたが……返事は無い。
なので俺は、再びコンコンとドアを2回叩く。
こうすれば【死淵】状態の俺になら反響音で中がどうなってるのかはある程度分かるのだ。
その結果、中には20代くらいの若い女性がいる事が分かった。
しかし、少なくともニーナでは無い。
なので俺は急いでコンビニを出るのだが……これは困ったぞ。
公共のトイレを使っていないって事は、知り合いの家にトイレを借りたとかだろう。
これを1個ずつ探していたら、きりが無いから選択肢から外していたのだが……と、その時
ズドドドドドドドドドドン!!
そんな音と共に向こうの住宅街から巨大な氷の柱が出て来た。
あれは……会長の能力、《凍てつく冷気》で作った会長からのSOS?
とにかく行ってみないと始まらないので俺は急いで向かう。
5分間が経つ……そんな最悪な事態にならないように……。
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氷柱が出て来た、その場所に行ってみるとそこには傷だらけの会長と泣いているニーナがいた。
そして目の前には会長を倒したであろう、30代くらいの男性と中学生くらいの少女。
どちらも『S』と書かれた腕章を付けている。
【死淵】状態の俺なら、Sランク二人を倒すなんて簡単だ。
でも……残り時間が……いや……できる!
「悪いがお前等も即刻、踏み台にしてやる!」
【死淵】を発動してから五分間が経過するまで、残り1分。
あとがき
ここまで読んでくれて本当に本当にありがとうございます!
一応、能力説明です。
《一定時間の無敵状態》
10秒間、どんなダメージも受けない無敵状態になる能力。
連続して使用はできず、3秒間時間を置かないと再発動できない。
無敵状態中はあらゆる能力の干渉を受けず、どんなダメージも受けない。
良ければ次話もよろしくお願いします!




