夏はあけぼの
「ガル、桐山、敵の目を引き付けつつ南東に後退しろ。倒さなくていい。倉﨑、俺と一緒に回り込んで挟み撃ちだ。高低差がある、多少派手に動いても見つかる事は無い」
「了解」
「はいはい」
「行くぜェ!」
三人に指示を出しながら、ひたすら移り変わる戦況を眺める。ゲームも終盤、自然とマウスを握る手にも力が籠る。
「よし、絶好の位置取りだ。ガル、桐山、反転して迎え撃て。倉﨑、あとは頼んだ。俺が囮になる」
「ナイス判断」
俺の合図を期に、桐山とガルが進路を反転させる。同時に倉﨑の援護を受けながら、俺は敵の懐へと飛びこむように見せかける。敵は残り四人、一人でいる俺を見ると一斉に攻撃を仕掛けてきた。
完全にこちらの術中にハマった瞬間だ。
「よしガル、敵の目が真に向いたぞ。チャンスだ!」
「外すなよ桐山」
「真、大丈夫か?!」
「余裕」
敵の死角から、三人が一斉に攻撃する。一人、二人と瞬く間に敵は減り、遂には残り一人となった。一気に戦況を覆された相手は、困惑して動きが止まっている。
「終わりだ」
最後の一撃を冷静に当てる。ゲームセット、俺達のチームの勝利だ。
「gg」
「ヒューッ!」
「よっしゃよっしゃ」
「やるな」
口々に勝鬨の声を上げ、健闘を讃える。我が軍はガルを迎え入れ更に圧倒的になっていた。
「そろそろ寝るか。今何時だろ」
ちらりと卓上の時計を見ると、4時を過ぎていた。
「なんだまだ夕方か⋯⋯って、嘘だろ!?」
慌てて窓の外を見ると、いつの間にか夜の闇は白く淡い朝日によって侵食されている。
「わーあかるい」
「ほんとだー」
「⋯⋯マズイな、クソが」
三人も気づいたのか、口々に自分達の愚かさに恨み言を吐き始める。四人とも気づかなかったのかと呆れるが、自分もその中の一人である為に人の事は言えないのであった。
このまま寝るかどうか、判断に迷う時間だ。
「どうするお前ら、寝る?」
「寝る」
「寝る」
「寝る」
「そうか」
満場一致。という訳で今日はお開きになった。
「あー⋯⋯」
通話を切り、画面から目を離す。途端に体が疲れを自覚し、急速に体が重くなってくる。寝るのもいいが、今寝ると間違い無く起きれない。いっそこのまま起きてる方が楽だ。
という訳で俺は、再び画面と向き合い朝を迎えるのであった。




