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彩色の魔女  作者: 唄海
2章 英国の闘い
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無銘

「茎わかめ」

「なんですかそれ酷過ぎます!」


 突拍子も無く変な事を言われたので、咄嗟に思いついた名前を口にする。なんだ茎わかめって。


「もっと素敵な感じのをお願いしますよご主人様!」

「出来るわけないだろ! 無理を言うな無理を!」


 自分で言うのもなんだが、俺は絶望的にネーミングセンスがないと思う。

 そんな俺に名前を決めろだなんて、随分と酷い事をさせるもんだ。


「自分で好きなの名乗れば良いだろ」

「どうやって決めるんですか! 名無しとでも名乗ればいいんですか?! どうしても呼びたければトr」

「やめれ!」

「ぎゃん」


 脳天に思い切りチョップをする。弾切れピエロは名無しじゃない。劇場版の最後でちゃんと認められただろ!


「と言うか、なんでお前そんな知識ばっかあるんだ」

「あーそれはですねー」


 あまりの情報量に気にしなかったが、作られたばっかりと言いながら色々なネタを仕込んでくる。まさか知識も吸収できるのだろうか。著作権的に危ないからやめていただきたい。


「どうやら作られた時、魔力と一緒にご主人様の知識の一部も流れ込んできたみたいなんですよ」

「よりによってそんな知識ばっかりかよ! もっとまともな知識を得ようよ!」

「ワタクシに言われましても……」

「だよなぁ……」

「それでご主人様、早く決めてください」


 ガシッと肩を掴まれ、じぃーっと瞳を覗き込まれる。アニマの目の中には、どこまでも落ちていきそうな深い漆黒が広がっていた。


「…………」

「ご主人様聞いてます?」

「あ、ごめん」


 瞳に吸い込まれるような感覚に陥る。死神やサキュバスの持つ力なのだろうか。


「んでなんだっけ?」

「あーもー! 名前ですよ、なーまーえー!」


 掴まれた肩をガクガクと揺さぶられる。見た目からは想像出来ないほど強い力で揺さぶられたので、首がどこかへ飛んでいきそうだ。

 ライヴと言い名無しアニマと言い、見た目と力が一致していない。この様子だと、もしかして小夜も力持ちの可能性もある。怖い。


「痛い痛い首が取れる」

「あ、申し訳ないです」

「あぁ……首が取れるかと思った」

「ご主人様ロボットみたいですね」

「いやホントには取れねーぞ?」


 イマイチ話が進まない。これじゃあ、名前を決めるだけで日が暮れそうだ。


「……そういえば昼飯食ってないな」


 遅く起きたのであまり感じなかったが、もうお昼時だった。もしかするともう過ぎてるかもしれない。


「なぁ、名無しアニマ」

「なんですかご主人様。早く決めないと夜中にご主人様の精液搾り取りに行きますよ」

「やめろ」


 さっきから色々と危ない奴だった。その内この小説がR18指定されないように抑えておかないとマズイ。

 と言うか、サキュバスの割合が1しか無い筈なのに一番出ている気がする。


「とりあえず名前の件は保留して飯食わない?」

「えー、ワタクシ食事は取らなくてもいいんですが」

「あー……」


 アニマは魔力が原動力だから、食事は意味が無いらしい。


「そりゃ残念だな」


 コイツも混ざって食事なんてしたら、さぞやかましいだろう。でも俺は、そんなやかましさが好きなのかもしれない。


「……そういや親父と母さんは元気かね」


 ふと、海外の両親を思い出す。両親と最後に一緒に食事したのはいつだろうか。なかなか予定が合わず、会えなくて少し寂しい気もする。


「ご主人様、血なら貰えますよ!」

「そうか」


 俺は少し考える。血なんて少しやった所で変わらないし、魔力補給にもなるだろう。

 それにコイツにも、楽しみくらい作ってやらないとな。やっぱり、飯は多勢で食べた方がいい。


「しょーがねーな。少しならやるよ」

「ホントですか! 神様仏様ご主人様!」


 よほど嬉しいのか、アニマは万歳しながらぴょんぴょんと跳ね回っていた。


「早く行きましょうご主人様!」

「あ、ちょ待てってば!」


 そのまま全力疾走で出口へ行ってしまう。力も強ければ足も速い奴だった。


「という訳でガル、ライヴ。一度メシにしようぜ」

「そうだな、それがいい」

「いいけど、アタシは作らないから」

「なんて野郎だ……」


 という訳で、一度俺達はランチタイムになった。

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