白銀の十字架
「うーん……サンドイッチでいいか」
冷蔵庫に並んでいる食材を眺めながら、俺はつぶやく。蒼夜さんから置いてある物は勝手に使っていいと言われていたので、ちょうどあったハムやら野菜やらを取り出す。
「早く作りなさいよこのノロマ」
手伝う気など全くないと言わんばかりに、ライヴはテーブルから指示を出す。コイツ、スライスしてハムにしてやろうか。
「にしても、小夜はまだ起きないか」
起きたら連絡をくれと先程メッセージを送っておいたが、一向に返信がくる気配はない。なんだか心配になってきた。
「ご主人様〜、まだですか〜」
中空に出現した魔法陣からアニマが顔の半分だけ出して聞いてくる。コイツ少しは空気を読んで欲しい。
「飯作るまで待ってろ」
「え〜」
「お、こんなところにニンニクが」
「ヒィ! お助けを!」
冷蔵庫からニンニクを取り出そうとすると、アニマは物凄い早さで魔法陣に引っ込んでいった。さすが吸血鬼、ニンニクには弱いらしい。
「お前、日光とか十字架もダメなのか?」
パンの耳を切り取りながら、頭の中でアニマに話しかける。パンの耳は後で揚げてオヤツにして食べよう。
「日光は浴びても死にませんけど、色々と面倒にはなりますね。日焼けしやすいですし、暑いですし」
「そういう問題なのか……」
どうやら日光が苦手と言っても、気分的な意味で苦手な様だ。こういう所は主人と似てるらしい。誰だそんな引き篭もりみたいな主人は。
「十字架は?」
「あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」
「いや、あの……」
足とかの話ではなく、結構重要な話だと思うんだが。
「まぁ、ぶっちゃけ効きません。銀の十字架だろうと普通に生きてますよ」
「マジかよ、十字架どころか銀も効かないのか」
割と無敵だった。
「心臓に杭ってお話もありますが、ワタクシまず心臓ありません。心臓の代わりの魔法陣は杭なんかじゃ壊せませんし、流れる水も普通にいけますよ。海もプールも安心です」
割と無敵な上に吸血鬼っぽさ皆無だった。なのになんでニンニクだけ苦手なんだコイツ。
「ニンニクは単純に苦手なんですよ。多分ご主人様の影響だと思うんですが」
「ニンニクが苦手? 全くそんな事は無いけど」
むしろ料理とかでニンニクは結構使う派だ。餃子とかに入れると美味い。
「不思議ですねぇ」
「不思議なのはニンニク以外効かない吸血鬼だよ」
「まぁ、死神とサキュバスもありますから色々とあるんですよ。多分」
「多分なのか……」
弱点が少ないに越したことはないが、イマイチ腑に落ちない。元々このアニマ、性格も適当っぽいと思ったら設定も適当だった。
「そんな事より、早く作って早く血を下さいよ」
「わかったから大人しくしてろ」
はぁ、と大きくため息をつく。どうやら俺は、相当面倒なアニマを作ってしまったらしい。




