第124章:理由なしに来る者 - それぞれが選んだ新しい一歩
序章 - 理由のない行動について
すべての行動に。
理由があるとは限らない。
商人は利益のために動く。
兵士は命令のために動く。
王は責任のために動く。
しかし。
理由のない行動が。
時として。
最も本質的な行動になる。
なぜそこに行くのかと問われて。
「わからない。」
「ただ行きたかった。」
と答えられる者は。
自分の感情に正直な者だ。
理由のない行動の中にこそ。
計算されていない本音がある。
第一章:ネロが来た - 理由なしに
ドラゴンハート王国 - 正門前 - 翌日の午後
ネロが来た。
手ぶらだった。
書状を持っていなかった。
情報の資料も持っていなかった。
護衛二人だけを連れて。
ただ来た。
警備兵が確認した。
「ネロ様ですね。」
「そうだ。」
「今日は...何か持ち込まれるものが。」
「ない。」
ネロは言った。
「理由もない。」
「ただ来た。」
警備兵は少し困った顔をした。
これまでのパターンと違った。
確認が取りにくかった。
「通してくれ。」
ネロは言った。
「王が待っていると言っていた。」
「確認します。」
報告が来た。
数分後に。
「どうぞお入りください。」
「お待ちしておりました。」
ネロは門をくぐった。
少し歩いてから気づいた。
「待っていた。」
と言われた。
その言葉が。
妙に温かかった。
理由のない来訪を。
待っていてくれる者がいる。
それが。
なぜか。
二十年の商売の中で。
初めての感覚だった。
第二章:応接間 - 最初の沈黙
私がいた。
書類を一冊持っていた。
しかし読んでいなかった。
ネロが入ってきた。
「来たか。」
私は言った。
「来ました。」
ネロは言った。
「何も持ってきていません。」
「知っている。」
「それでも通してもらえた。」
「当然だ。」
私は言った。
「座れ。」
ネロは座った。
いつものように。
しかし今日は少し。
座り方が違った。
背中が少し力を抜いていた。
扉が開いた。
アクアがお茶を持ってきた。
置いて。
去ろうとした。
「今日は残れ。」
私は言った。
アクアは止まった。
「私が残っていいのですか。」
「理由のない来訪には。
私は言った。
「気軽な場の方が合う。」
アクアは少し考えた後。
椅子を一つ引いた。
座った。
控えめに。
端に。
ネロはアクアを見た。
「あなたも。」
「はい。」
「では三人でお茶だ。」
私は言った。
「こういうこともあるのか。」
ネロは言った。
「王と情報商人と古代精霊が。」
「理由なしにお茶を飲む。」
「珍しくはない。」
私は言った。
「ここでは?」
「ここではよくある。」
ネロは笑った。
本物の笑いだった。
第三章:セルジオの話
「セルジオから連絡が来ました。」
ネロは言った。
お茶を一口飲んでから。
「何と言っていた。」
「少し聴こえた気がすると。」
私は頷いた。
「ネロの声は。」
私は言った。
「電文を通しても変わったか。」
ネロは少し止まった。
「わかりましたか。」
「わかった。」
私は言った。
「声が変わった者の話し方は違う。」
「そうかもしれません。」
ネロは言った。
「自分では気づきませんでしたが。」
「嬉しかったんだろう。」
「...はい。」
ネロは言った。
静かに。
素直に。
「セルジオはまた来ると思うか。」
「来ると思います。」
ネロは言った。
「しかし。」
「しかし?」
「いつかはわかりません。」
「あいつは慎重です。」
「考えてから動く。」
「考えるのに時間がかかる。」
「待てる。」
私は言った。
「何度言っても。」
ネロは言った。
「その言葉に驚かされます。」
「なぜ。」
「あなたには待つ間に。」
ネロは言った。
「やることが山ほどあるはずです。」
「王国の運営。防衛。外交。」
「なぜセルジオのために時間を割く。」
「セルジオのためではない。」
私は言った。
「では何のために。」
「お前のためでもない。」
私は続けた。
「では。」
「道理のためだ。」
私は言った。
「師匠の声を探している者が。」
「もう少し探し続けられるなら。」
「その道理は守られる価値がある。」
「それだけだ。」
ネロは。
お茶を見た。
しばらく。
「あなたは。」
ネロは言った。
「何と呼べばいいのかわからない。」
「どういう意味だ。」
「取引先と呼ぶには。」
ネロは言った。
「近すぎる。」
「友人と呼ぶには。」
「まだ距離がある。」
「師匠と呼ぶには。」
「あなたは若すぎる。」
「呼ばなくていい。」
私は言った。
「呼ばずにいられるのですか。」
「お前は私をヴィカース王と呼ぶ。」
私は言った。
「それで十分だ。」
「名前だけが関係の全てですか。」
「名前は始まりだ。」
私は言った。
「関係は時間が作る。」
「焦って名付けなくていい。」
アクアが。
静かに言った。
「名前が帰る場所を作ることもあります。」
ネロはアクアを見た。
「あなたの話ですか。」
「はい。」
「三万年で。」
ネロは言った。
「最初に帰る場所ができたと。」
「そうです。」
「その前は。」
「ただ存在していました。」
アクアは言った。
「存在することと。」
「場所を持つことは。」
「違います。」
「その違いを知ったのは。」
ネロは言った。
「ここに来てからですか。」
「はい。」
「何が違いを教えたのですか。」
アクアは少し考えた。
「待っていてくれる者がいることです。」
アクアは言った。
「帰ってきた時に。」
「ただいまと言えることです。」
ネロは。
その言葉を聞いた。
静かに。
「情報商人は。」
ネロは言った。
「どこにも帰る場所がない。」
「なぜ。」
「秘密が多いから。」
ネロは言った。
「本当の自分を知っている者がいない。」
「どこへ行っても。」
「何かを演じている。」
「演じていない場所がない。」
「今ここではどうだ。」
私は聞いた。
ネロは少し止まった。
「...演じていません。」
最終的に言った。
「なぜかはわかりません。」
「しかし演じていない。」
「ならばここが。」
アクアは言った。
「帰る場所の候補かもしれません。」
ネロは。
アクアを見た。
「三万年の経験から言うのですか。」
「三万年の観察から言います。」
アクアは言った。
「演じていない場所を見つけた者は。」
「そこに戻ってくる。」
「必ず。」
ネロは。
また笑った。
今度は少し照れたような笑いだった。
二十年の商人が見せる笑いではなかった。
第四章:ケンジの訓練 - 千剣形の夜明け
闘技場 - 夜明け前
ケイランが来た時。
ケンジはすでにいた。
闘技場の中央に。
一人で立って。
千剣形の基礎を繰り返していた。
影が千本。
正確には三十七本。
それがケンジの今の限界だった。
「また早起きか。」
ケイランは言った。
「眠れませんでした。」
ケンジは言った。
手を止めずに。
「昨日も眠れていなかったろう。」
「三時間くらいは眠れます。」
「三時間では足りない。」
ケイランは言った。
「ドミトリの記憶が流れてきます。」
ケンジは言った。
「眠ると夢に出てきます。」
「だから起きて練習します。」
ケイランは少し止まった。
「夢に出てくるとはどういうことだ。」
「記憶の夢です。」
ケンジは言った。
「ドミトリの記憶が流れ込んできた時に。」
「技術だけでなく。」
「日常の記憶も来ました。」
「子供の頃のこと。」
「初めて剣を持った日のこと。」
「初めて失敗した日のこと。」
「それが夢に出ます。」
「それは辛いか。」
ケンジは少し間を置いた。
「辛くない。」
言った。
「ただ。」
「目が覚めると。」
「もっと強くなりたいと思います。」
「それで動き始めます。」
「ドミトリの記憶が動力になっているのか。」
「そうかもしれません。」
ケイランは少し考えた。
「悪くない動力だ。」
ケイランは言った。
「怒りや憎しみより。」
「ずっと長持ちする。」
「どういう意味ですか。」
「怒りで動く者は。」
ケイランは言った。
「怒りが冷めた時に止まる。」
「しかし。」
「誰かの記憶で動く者は。」
「記憶が消えない限り止まらない。」
「記憶は消えない。」
ケンジは練習を続けながら言った。
「ドミトリはどんな人間でしたか。」
ケイランは止まった。
「記憶から知っているはずだろう。」
「記憶で知っているのと。」
ケンジは言った。
「別の人の目から聞くのは違います。」
ケイランは少し考えた。
「静かな男だった。」
最終的に言った。
「しかし。」
「動く時は誰より速かった。」
「考えてから動くのではなく。」
「感じたまま動いていた。」
「その感じ方が正確だった。」
「千剣形は。」
ケンジは言った。
「どうでしたか。」
「感じ方の塊だった。」
ケイランは言った。
「千本の剣を。」
「考えて動かすのではなく。」
「感じて動かしていた。」
「だから速かった。」
「考えと感じの差が。」
「速度になっていた。」
ケンジは手を止めた。
「感じて動かす。」
繰り返した。
「今のお前は考えて動かしているか。」
「はい。」
ケンジは認めた。
「一本ずつ考えています。」
「だから遅い。」
「ドミトリの記憶の中に。」
ケイランは言った。
「感じ方も含まれているはずだ。」
「技術だけでなく。」
「技術を生み出した感覚も。」
ケンジは目を閉じた。
しばらく。
記憶の中に手を入れた。
技術ではなく。
感覚を探した。
千本の剣が動く時の。
ドミトリの内側にあったものを。
あった。
「...音楽だ。」
ケンジは言った。
「音楽?」
「千剣形を使う時に。」
ケンジは言った。
「ドミトリは音楽を感じていた。」
「千本の剣が音符で。」
「それが合わさって曲になる。」
「そのイメージで動かしていた。」
ケイランは止まった。
「そんなことを考えていたのか。」
呟いた。
「知りませんでしたか。」
「知らなかった。」
ケイランは言った。
「本人が言わなかったから。」
「試してみます。」
ケンジは言った。
目を閉じた。
音楽を探した。
千本の剣の音楽を。
手が動いた。
影が広がった。
四十七本。
昨日より十本多かった。
「増えた。」
ケイランは言った。
ケンジは目を開けた。
「音楽だったんですね。」
言った。
「師匠は。」
ケイランは。
頷いた。
「音楽で戦っていたのか。」
ドミトリを思い出しながら。
「面白い男だった。」
「そうです。」
ケンジは言った。
「記憶の中で。」
「いつも面白そうに戦っていました。」
「強くなれる。」
ケイランは言った。
「お前は。」
「なぜ。」
「師匠のことが好きだから。」
ケイランは言った。
「好きなものから学ぶ者は。」
「学んだことを大切にする。」
「大切にしたものは。」
「裏切らない。」
ケンジは練習を再開した。
今度は音楽を感じながら。
剣の影が動いた。
静かに。
しかし確かに。
広がっていた。
第五章:ハナとルナの昼 - 庭園
王宮の庭園 - 昼
ハナが飛んでいた。
花から花へ。
蜜を集めていた。
料理のためだった。
アクアに頼まれていた。
ルナが来た。
銀色の髪を揺らしながら。
小さな足で。
庭を歩いていた。
「ハナ。」
ルナは言った。
「あ。ルナちゃん!」
ハナは降りてきた。
「今日もお花の蜜を集めているの?」
ルナは聞いた。
「そう!アクア姉に頼まれた。」
「甘さが足りない料理があるって。」
「アクア様の料理を手伝っているんだね。」
ルナは言った。
少し羨ましそうに。
「ルナちゃんも手伝えばいいじゃない。」
ハナは言った。
「私は料理が得意じゃないから。」
ルナは言った。
「邪魔になったら嫌で。」
「邪魔にならないよ!」
ハナは言った。
「アクア姉は怖くないし。」
「私も一緒に行くから!」
ルナは少し考えた。
「でも。」
「アクア様は三万年以上生きているんでしょ。」
「そんな方の前に出ていいのかな。」
「気にしないよ!」
ハナは言った。
「アクア姉はそういうの関係ないもん。」
「年齢とか強さとか。」
「ただの人として話してくれるよ。」
ルナは。
ハナを見た。
「ハナはすごいね。」
ルナは言った。
「何が?」
「誰とでも仲良くできる。」
「三万年生きた方でも。」
「千年以上暴れた悪魔でも。」
「普通に話せる。」
ハナは少し考えた。
「みんな普通だから。」
ハナは言った。
「アクア姉も。」
「リスカレス様も。」
「マスターも。」
「普通の人だよ。」
「すごいことができるけど。」
「普通の人。」
「普通かどうかわからないよ。」
ルナは言った。
「わかる。」
ハナは言った。
「マスターがクッキー食べたって喜んでくれた時。」
「普通だって思った。」
「クッキー食べて喜ぶのは。」
「普通の人だよ。」
ルナは。
少し笑った。
「そういう考え方があったんだね。」
「来なよ!」
ハナは言った。
「アクア姉のところ!」
「一緒に蜜を届けよう!」
ルナは少し躊躇した後。
頷いた。
二人が厨房に向かった。
ハナが飛んで。
ルナが歩いて。
厨房の扉を開けた。
アクアが振り返った。
「蜜を持ってきました。」
ハナは言った。
「ありがとう。」
アクアは受け取った。
ルナを見た。
「あなたも来たのですか。」
ルナは緊張した顔で頷いた。
「料理を手伝いたいなら。」
アクアは言った。
「野菜を切れますか。」
「や...やれます!」
ルナは言った。
「では隣に。」
ルナが隣に立った。
包丁を持った。
手が少し震えた。
アクアは見ていた。
何も言わなかった。
ただ。
自分の包丁を動かし始めた。
リズムよく。
ルナはそのリズムを聞きながら。
自分のリズムを探した。
少しずつ。
手が落ち着いた。
「上手です。」
アクアは言った。
「えっ。」
「基礎が丁寧です。」
アクアは言った。
「誰かに習いましたか。」
「...マスターが。」
ルナは言った。
「少し教えてくれました。」
アクアは少し止まった。
「マスターが。」
「はい。」
「ある日。」
「私が厨房にいた時に。」
「隣に来て。」
「こうやるんだと教えてくれました。」
アクアは。
また包丁を動かしながら。
「マスターはそういうことをするのですね。」
言った。
「何を。」
ルナは聞いた。
「気づいた時に。」
アクアは言った。
「さりげなく。」
「教える。」
「はい。」
ルナは言った。
「普通にしていたら教えてもらっていました。」
「私も。」
アクアは言った。
「同じです。」
三人で切っていた。
ハナはできないので。
野菜を洗っていた。
「アクア姉。」
ハナが言った。
「楽しそうだよ。」
「楽しいです。」
アクアは言った。
「人数が増えると。」
「リズムが増えます。」
「リズムが増えるとどうなるの。」
「料理が変わります。」
アクアは言った。
「良い意味で。」
第六章:ネロとの話 - 続き
応接間 - 午後
話が続いていた。
三人で。
特に大切な話ではなかった。
世間話に近かった。
「旅の食材で何か作りましたか。」
ネロはアクアに聞いた。
「いくつか。」
アクアは言った。
「月光茸の料理を三種類。」
「光る葉のサラダを一種類。」
「星花蜜のデザートを二種類。」
「食べてみたいですね。」
ネロは言った。
「今夜食事していけばいい。」
私は言った。
「え。」
ネロは止まった。
「構わないのですか。」
「なぜ構わないことがある。」
私は言った。
「情報を売りに来たわけではないので。」
ネロは言った。
「対価がありません。」
「食事に対価は要らない。」
私は言った。
「それが。」
ネロは言った。
「また計算を狂わせます。」
「計算を狂わせる場所だ。」
私は言った。
「慣れろ。」
ネロは笑った。
アクアが立ち上がった。
「では準備します。」
「待て。」
私は言った。
「何ですか。」
「ネロの護衛も食べる。」
私は言った。
「外で待たせているだろう。」
「中に入れて一緒に食べさせろ。」
アクアは少し考えた。
「わかりました。」
「食堂に案内します。」
ネロは私を見た。
「護衛まで。」
「外で待たせる理由がない。」
私は言った。
「あなたは本当に。」
ネロは言った。
「計算が合わない方ですね。」
「商人ではないからな。」
私は言った。
「王ですか。」
「わからない。」
私は言った。
「肩書きより。」
「人間として何が正しいかで動いている。」
「それが王の姿だと思います。」
ネロは言った。
「二十年で初めて。」
「そう思える王に会いました。」
「他は違ったか。」
「他の王は。」
ネロは言った。
「全員が計算していました。」
「何が得で。」
「何が損かを。」
「常に。」
「お前も計算しているだろう。」
私は言った。
「していません。」
ネロは言った。
「今日は。」
「してきませんでした。」
「それが。」
私は言った。
「理由のない来訪の意味だ。」
エピローグ - それぞれの夜
夜
食事が終わった。
ネロは帰った。
護衛と共に。
門の前で振り返った。
「また来ます。」
ネロは言った。
「理由なしに?」
私は聞いた。
「理由なしに。」
ネロは言った。
「慣れようとします。」
「ゆっくり慣れればいい。」
私は言った。
ネロは去った。
私は夜空を見た。
今日という日を振り返った。
ネロが理由なしに来た。
ケンジが音楽で剣を動かし始めた。
ルナがアクアの厨房に入った。
どれも小さなことだった。
世界を動かすような出来事ではなかった。
しかし。
小さなことが。
積み重なって。
王国になる。
人が。
一歩踏み出して。
また一歩踏み出して。
そのうちに。
道ができる。
「マスター。」
アクアが後ろから来た。
「何だ。」
「今夜のルナの野菜の切り方が。」
アクアは言った。
「良かったです。」
「そうか。」
「マスターが教えたのですか。」
「少しだけ。」
私は言った。
「なぜルナに。」
「ある日。」
私は言った。
「厨房を通りかかった時に。」
「難しそうにしていた。」
「だから教えた。」
「それだけですか。」
「それだけだ。」
アクアは少し間を置いた。
「マスターはいつもそうですね。」
アクアは言った。
「どういう意味だ。」
「気づいた時に。」
アクアは言った。
「すぐに動く。」
「考える前に。」
「それがマスターです。」
私は少し笑った。
「考えていないわけではない。」
「感じてから動く。」
アクアは言った。
「考えてから動くのではなく。」
「ケンジと同じか。」
私は言った。
「そうかもしれません。」
アクアは言った。
「千剣形の話を聞きました。」
「ケイラン様から。」
「音楽で動かすという話。」
「ドミトリの感覚か。」
「ドミトリ様の感覚がケンジ様に渡った。」
アクアは言った。
「そしてケンジ様がそれを使って動き始めた。」
「これが継承というものですね。」
「三万年で見てきたか。」
「何度も。」
アクアは言った。
「技術が人から人へ渡る時。」
「渡した者の何かも一緒に渡る。」
「感覚が。」
「想いが。」
「温度が。」
「ドミトリの想いがケンジに渡った。」
私は言った。
「はい。」
夜が深まっていた。
王国は静かだった。
闘技場の方から。
遠く。
剣の音がした。
ケンジがまだ練習していた。
夜遅くまで。
しかし今日の剣の音は。
昨日と違った。
リズムがあった。
音楽のような。
リズムが。
「聞こえますか。」
アクアが言った。
「ああ。」
私は言った。
「音楽だ。」
「ケンジ様は見つけたのですね。」
アクアは言った。
「まだ始まりだが。」
私は言った。
「見つけた者は成長する。」
アクアは空を見た。
星が多かった。
「今日は。」
アクアは言った。
「いくつかのことが始まりましたね。」
「そうだな。」
「ネロが理由なしに来ることを始めた。」
「ケンジが音楽で剣を動かすことを始めた。」
「ルナが厨房に来ることを始めた。」
「それぞれの始まりだ。」
私は言った。
「小さな始まりが。」
アクアは言った。
「積み重なります。」
「そうだな。」
「三万年で見てきました。」
アクアは言った。
「小さな始まりがどこへ向かうかを。」
「どこへ向かう。」
「わかりません。」
アクアは言った。
「しかし。」
「向かい始めた者は。」
「止まらない。」
「それが。」
私は言った。
「この王国の色だな。」
アクアは頷いた。
「おやすみなさい。」
アクアは言った。
「ああ。おやすみ。」
アクアが去った。
私は少し残った。
夜の王国を見た。
灯りが揺れていた。
「それぞれの始まりか。」
私は呟いた。
遠くでケンジの剣が鳴っていた。
音楽のリズムで。
厨房の灯りがまだついていた。
アクアがまた仕込みをしているのかもしれなかった。
王国が。
夜の中で。
それぞれの速度で。
動いていた。
それで良かった。
それが王国というものだった。
【世界設定公開】永遠の生ける海——その真の広さ
皆さん、こんにちは!
「ダークコンチネント:生きる大陸と至高の支配者」の作者です。
今回公開するのは——
この物語の舞台そのもの。
「永遠の生ける海」の全貌です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 永遠の生ける海とは
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
数十億年前——
至高竜シェンロンが、
自らの核エネルギーを注ぎ込み、
創り出した海。
その広さは——
6,090,000,000,000
平方キロメートル。
想像を絶する規模の、
一つの"生きた世界"。
シェンロンは、この海を創った後——
最も深い層で、
永い眠りについた。
彼女が目覚めるのは——
ただ一つの時。
自らの創造主が、
再びこの世に生まれた時だけ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ この海には、意志がある
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
永遠の生ける海は——
ただの水ではありません。
それ自身の意志を持ち、
「美しさ」と「強さ」の
両方を尊びます。
危険であればあるほど——
その場所は、荘厳になる。
弱き者は拒み、
強き者だけを、
その先へと導く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 海の四つの領域
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
北——凍える深淵の海。
生存率はマイナス200%。
生命はここで、
オメガを超えて進化する。
東——血の業火の海。
永遠の闘争が続く場所。
力を持つ者だけが、
存在を許される。
西——虚無の深淵。
現実が壊れ、時が崩壊する。
最も過酷な者だけが、
生き延びられる。
南——南の青き海。
人間と海賊たちの領域。
この広大な海の中で——
唯一、生存率がプラスになる
"自由の海"。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 中心に浮かぶ、答えの島
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この海のちょうど中心に——
ウィズダム・アイランドが
静かに浮かんでいます。
誰も、まだそこを
探索し尽くした者はいません。
島自体の意志が——
それを守っているからです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 海の最深部——竜の眠る場所
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
すべての深さの、さらに奥。
光すら届かない場所に——
7体の至高竜のうち、
4体が眠っています。
時を司る竜。
空間を司る竜。
生命を司る竜。
運命を司る竜。
彼らは、世界が創られる
その前から存在していました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 15を超える生態系
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この海には——
極寒の深淵から、
灼熱の魔境まで。
15種類以上の、
まったく異なる生態系が
広がっています。
一つの海の中に、
無数の"世界"が
存在しているのです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「強き者だけが生き残る。
伝説だけが、この海を支配する。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
これが——
ヴィッキーたちが旅する舞台の、
本当の姿です。
毎日19:00更新中。
「どの海域が一番気になりますか?」
コメントで聞かせてください。
お楽しみに!
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