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第123章:師匠の声を探す男 - セルジオとの対話

序章 - 失くしたものを探す方法

失くしたものを探す時。

人は二つのことをする。

一つは。

あった場所を探すことだ。

最後に見た場所。

落としたかもしれない場所。

そこを丁寧に見る。

もう一つは。

探すことをやめることだ。

「もうない。」

「諦めよう。」

「なくてもいい。」

と決める。

セルジオは。

長い間。

どちらもしなかった。

探す気力もなかった。

諦める勇気もなかった。

ただ。

聞こえないまま。

歩き続けていた。

しかし今日。

彼は一人で来た。

旅の服を着て。

武器を持たずに。

それは。

探し始めた者の歩き方だった。

第一章:正門での到着

ドラゴンハート王国 - 正門前 - 午後

晴れた日だった。

穏やかな風が吹いていた。

王国の旗が揺れていた。

一人の男が正門の前に立った。

外観:

四十代に見えた。

灰色の旅の服を着ていた。

聖軍の印は何もなかった。

武器は見えなかった。

荷物は小さな鞄一つだった。

髪は短かった。

目が鋭かった。

しかし今日の目は。

鋭さの中に。

何か迷っているものがあった。

警備兵が近づいた。

「お名前を。」

男は答えた。

「セルジオという。」

「ヴィカース王に会いたい。」

警備兵は確認した。

リストを見た。

「...ありましたら少しお待ちください。」

「わかった。」

セルジオは言った。

動じなかった。

門の前で待った。

空を見た。

一度だけ。

「ここか。」

呟いた。

誰にも聞こえなかった。

第二章:私への報告

書斎

「マスター。」

クロガネが来た。

「セルジオという者が来ました。」

「正門で。」

「一人で。」

「武装していません。」

私は書類を置いた。

立ち上がった。

「通せ。」

私は言った。

「アクアにも伝えてくれ。」

「お茶を頼む。」

「どんなお茶を。」

「アクアに任せる。」

私は言った。

「あの人は合うものを知っている。」

クロガネは頷いた。

去った。

私は少し考えた。

セルジオが来た。

一人で。

聖軍の服を着ずに。

武器も持たずに。

「来た。」

私は思った。

「それだけで十分だ。」

第三章:リスカレスとの確認

「リスカレス。」

私は影に向かって言った。

現れた。

「マスター。」

「聞いているか。」

「はい。」

「セルジオの気配は。」

リスカレスは少し考えた。

「普通の人間です。」

言った。

「霊的な強化がありますが。」

「危険なレベルではありません。」

「聖軍の情報収集者として。」

「訓練を受けた者の気配です。」

「脅威は。」

「今の状態では。」

リスカレスは言った。

「なし。」

「ただし。」

「ただし?」

「緊張しています。」

リスカレスは言った。

「相当に。」

「そうか。」

私は言った。

「では普通に迎えよう。」

「普通に?」

「緊張している者に。」

私は言った。

「さらに圧力をかける意味はない。」

「普通の来客として迎えろ。」

「了解しました。」

「お前は近くにいてくれ。」

私は言った。

「見えない場所に。」

「はい。」

リスカレスは影に溶けた。

第四章:応接間での対面

応接間

セルジオが入ってきた。

真っすぐに歩いた。

迷いなく。

しかし。

緊張は体から滲み出ていた。

私は立って迎えた。

「ヴィカース王。」

セルジオは言った。

頭を下げた。

礼儀正しく。

「セルジオ。」

私は言った。

「来てくれた。」

「座ってくれ。」

二人が向かい合った。

扉が少し開いた。

アクアがお茶を持ってきた。

音もなく。

置いた。

何も言わずに去った。

セルジオはお茶を見た。

深い色だった。

香りが濃かった。

「飲んでくれ。」

私は言った。

「旅の疲れを取るといい。」

セルジオは少し躊躇した。

しかし一口飲んだ。

「...深い。」

セルジオは言った。

思わず出た言葉だった。

「合ったか。」

「はい。」

「良かった。」

私は言った。

「このお茶は誰が。」

セルジオは聞いた。

「私の側近が。」

私は答えた。

「人を見て選ぶ。」

「今日のお前に合うものを出してくれた。」

「人を見てお茶を選ぶ。」

セルジオは繰り返した。

「不思議な方だ。」

「三万年以上生きているから。」

私は言った。

セルジオは止まった。

「三万年。」

「信じなくてもいい。」

私は言った。

「事実だが。」

「信じるかどうかは関係ない。」

「...信じます。」

セルジオは言った。

「情報商人の仕事は長く続けると。」

「嘘と本物の区別がつくようになります。」

「あなたの言葉は本物です。」

「それは良かった。」

私は言った。

第五章:本題の前の沈黙

お茶を飲んでいた。

二人で。

誰も話さなかった。

しかし沈黙が重くなかった。

セルジオが先に口を開いた。

「なぜ会ってくれたのですか。」

「聞きたいことがあったから。」

私は言った。

「私に。」

「そうだ。」

「どんなことを。」

「聞く前に。」

私は言った。

「一つ聞かせてくれ。」

「はい。」

「なぜ来たのか。」

私は聞いた。

「ネロが誘ったからではなく。」

「自分の言葉で。」

セルジオは少し間を置いた。

「ネロから話を聞いた時に。」

セルジオは言った。

「最初は来るつもりがありませんでした。」

「しかし来た。」

「あなたの伝言を聞いた時に。」

セルジオは言った。

「変わりました。」

「どんな伝言だ。」

「戦いたくないが。」

セルジオは言った。

「来れば応えると。」

「その言葉が。」

私は言った。

「師匠と同じでした。」

セルジオは言った。

「一字一句ではないが。」

「同じ意味の言葉を師匠が言っていた。」

「それを思い出した。」

「それで来ることにした。」

「そうです。」

「どんな言葉だったか。」

私は聞いた。

「師匠の言葉を。」

セルジオは少し考えた。

記憶を探るように。

「私から仕掛けることはしない。」

セルジオは言った。

「しかし来たものには必ず応じる。」

「その覚悟だけは常に持っておけ。」

「師匠はそう言ったのか。」

「はい。」

「最初に教わった言葉の一つです。」

「今もその言葉を覚えているということは。」

私は言った。

「完全には失っていない。」

セルジオは止まった。

「何を失っていないのですか。」

「師匠の声を。」

私は言った。

セルジオの目が動いた。

わずかに。

しかし確かに。

「ネロから聞きましたか。」

「聞こえなくなったと言ったそうだな。」

セルジオは黙った。

第六章:聞こえなくなった理由

「正直に言います。」

セルジオは言った。

少し後に。

「聞く。」

「聖軍に入ったのは。」

セルジオは言った。

「金のためでした。」

「それは否定しません。」

「知っている。」

「最初は問題ありませんでした。」

セルジオは続けた。

「仕事をして。」

「金をもらって。」

「師匠の教えも守れていた。」

「どこで変わった。」

「ある王国の件でした。」

セルジオは言った。

「ネロも知っています。」

「私が情報を渡して。」

「その王国が滅びた。」

「それが最初の一線だったか。」

「そうです。」

「しかしその時は。」

セルジオは言った。

「仕方がないと思いました。」

「私は情報を売った。」

「その後何が起きるかは私の責任ではないと。」

「師匠はどう言っていた。」

私は聞いた。

「情報を売る者は。」

セルジオは答えた。

「その情報が何に使われるかを考えなければならない。」

「考えた上で売れ。」

「考えずに売るのは商人ではなく道具だと。」

「その言葉を聞こえなくしたかったのか。」

「...最初はそうでした。」

セルジオは言った。

「しかし聞こえなくなった後は。」

「楽でした。」

「仕事に集中できました。」

「迷わなくなりました。」

「楽だったということは。」

私は言った。

「師匠の声は不便だったということか。」

「そうです。」

セルジオは言った。

「不便でした。」

「仕事の途中で師匠の声が聞こえると。」

「迷います。」

「迷いは失敗を生みます。」

「だから聞こえなくなったことに。」

「最初は安堵しました。」

「最初は。」

私は繰り返した。

セルジオは少し止まった。

「今は。」

私は言った。

「今は。」

セルジオは答えた。

「ネロからあなたの伝言を聞くまでは。」

「気にしていませんでした。」

「気にし始めた。」

「師匠の声が聞こえなくなったということが。」

セルジオは言った。

「どういうことかを。」

「考え始めました。」

「何日前から。」

「三週間前から。」

「ネロからの連絡を受けてから。」

「はい。」

「眠れたか。」

セルジオは少し驚いた顔をした。

「よくわかりましたね。」

「顔を見ればわかる。」

私は言った。

「あまり眠れませんでした。」

セルジオは言った。

「考えすぎて。」

「何を考えた。」

「師匠のことを。」

セルジオは言った。

「七十七年前に死んだ師匠のことを。」

「三週間考え続けました。」

「七十七年前の師匠を三週間考えた。」

私は言った。

「それはなぜだと思う。」

セルジオは答えなかった。

すぐには。

私も待った。

お茶を一口飲んだ。

「ここに来れば。」

セルジオは最終的に言った。

「わかるかもしれないと思いました。」

「何が。」

「師匠の声が聞こえなくなった理由が。」

「私に聞きに来たのか。」

「あなたとネロが話した内容を聞きました。」

セルジオは言った。

「あなたが師匠と同じ言葉を使うと。」

「ならばあなたが何かを知っているかもしれないと。」

「私は師匠を知らない。」

私は言った。

「知っています。」

セルジオは言った。

「しかし。」

「知らなくても同じ道理を持っているかもしれない。」

「ネロがそう言っていました。」

「ネロが言ったか。」

「はい。」

「では少し話そう。」

私は言った。

第七章:道具と商人

「師匠の言葉を繰り返してくれた。」

私は言った。

「考えた上で売れ。」

「考えずに売るのは道具だと。」

「はい。」

「その言葉の意味を。」

私は言った。

「今のお前はどう理解している。」

「考えずに売れば。」

セルジオは言った。

「ただの伝達者です。」

「情報が入ってきて出ていく。」

「その間に判断がない。」

「それは道具と同じだと。」

「正しく理解している。」

私は言った。

「しかし。」

セルジオは言った。

「考えると迷います。」

「迷うと動けません。」

「動けなければ仕事になりません。」

「考えることと迷うことは違う。」

私は言った。

セルジオが止まった。

「どう違うのですか。」

「考えるとは。」

私は言った。

「情報を売った後に何が起きるかを見ること。」

「見た上で決めること。」

「これは考えることだ。」

「迷うとは。」

「見た上で決められないことだ。」

私は言った。

「見て。」

「わかって。」

「それでも決められない。」

「それが迷いだ。」

「差は。」

セルジオは言った。

「決められるかどうかですか。」

「決めるための基準があるかどうかだ。」

私は言った。

「基準。」

「師匠が教えた道理が基準だ。」

私は言った。

「その道理があれば。」

「考えても決められる。」

「しかし道理がなければ。」

「考えれば考えるほど迷う。」

「だから聞こえなくした。」

セルジオは言った。

「道理が不便だったから。」

「不便だったから消したのではなく。」

私は言った。

「道理より金の方が使いやすかったから。」

「金を基準にした。」

「その結果。」

「師匠の道理の声が。」

「相対的に小さくなった。」

セルジオは。

お茶を見た。

手に持ったまま。

「消したのではなかったのですか。」

「消したのか消えたのかは。」

私は言った。

「お前にしかわからない。」

「しかし。」

「しかし?」

「ここに来た。」

私は言った。

「消した者は来ない。」

「消した者には探す理由がない。」

セルジオは黙った。

長い間。

「ネロは言っていました。」

セルジオは言った。

「あなたと話すと師匠を思い出すと。」

「私も同じです。」

「あなたの言葉が師匠と重なります。」

「なぜ重なると思う。」

「師匠と同じ道理を持っているから。」

セルジオは言った。

「ネロが言っていた通りだ。」

「道理に師匠はいない。」

私は言った。

「誰が持っていても同じ道理は同じだ。」

「師匠の声が聞こえなくなっても。」

「道理は世界のどこかにある。」

「見つければいい。」

「見つけ方は。」

「探すことだ。」

私は言った。

「お前は今日探しに来た。」

「それで十分だ。」

第八章:セルジオの質問

「一つ聞いてもいいですか。」

セルジオは言った。

「どうぞ。」

「あなたは。」

セルジオは言った。

「迷ったことはありますか。」

「あった。」

私は即座に言った。

「どんな時に。」

「今も。」

私は言った。

セルジオは驚いた顔をした。

「今もですか。」

「この王国を作り続けている。」

私は言った。

「毎日何かを決めている。」

「決めるたびに。」

「これで良いかと思う。」

「それが迷いではないが。」

「似たようなものだ。」

「それでも動けるのはなぜですか。」

「基準があるから。」

私は言った。

「何が基準ですか。」

「人々が安心して暮らせること。」

私は言った。

「それだけだ。」

「その基準で見れば。」

「大体の答えが出る。」

「シンプルな基準ですね。」

セルジオは言った。

「シンプルな基準の方が使いやすい。」

私は言った。

「複雑な基準は複雑な状況でしか役に立たない。」

「シンプルな基準はどんな状況でも役に立つ。」

「師匠も言っていました。」

セルジオは言った。

「良い商人の基準は一つだと。」

「相手が満足したかどうかだと。」

「良い師匠だ。」

私は言った。

「私もそう思っていました。」

セルジオは言った。

「今も。」

「そう思っています。」

「今も。」

私は繰り返した。

「はい。」

セルジオは言った。

「だからここに来ました。」

第九章:アクアの登場 - 食事

扉がノックされた。

「どうぞ。」

アクアが入ってきた。

手に盆を持っていた。

簡単な食事だった。

パンと。

スープと。

果物が少し。

「時間が経ちましたから。」

アクアは言った。

「食べながら話した方がいい。」

私は笑った。

「三万年の知恵だ。」

「経験です。」

アクアは言った。

セルジオはアクアを見た。

「あなたが。」

「そうです。」

アクアは言った。

「アクアです。」

「お茶は。」

セルジオは言った。

「あなたが選んでくれたのですか。」

「はい。」

「何を見て選びましたか。」

アクアは少し考えた。

「目を見ました。」

アクアは言った。

「探している目をした方には。」

「深みのあるお茶が合います。」

「探している目。」

セルジオは繰り返した。

「そう見えましたか。」

「はい。」

「何を探しているかはわかりませんでしたが。」

「探していることはわかりました。」

「三万年で得た観察力か。」

セルジオは言った。

「長く生きることは。」

アクアは言った。

「良いことと悪いことがあります。」

「観察力が増えることは良いことです。」

「悪いことは。」

「孤独です。」

アクアは言った。

「長く生きると。」

「周りが変わっていく。」

「自分だけが残る。」

「それが悪いことでした。」

「今は変わりましたか。」

セルジオは聞いた。

アクアは少し間を置いた。

「変わりました。」

言った。

「帰る場所ができたから。」

「帰る場所。」

「名前をもらいました。」

アクアは言った。

「マスターに。」

「アクアという名前を。」

「それがここに繋がりました。」

セルジオは。

アクアを見た。

しばらく。

「名前が帰る場所を作るのか。」

「私の場合はそうでした。」

アクアは言った。

「全員がそうとは限りません。」

「では何が帰る場所を作るのですか。」

アクアは少し考えた。

珍しく。

考えてから答えた。

「待っていてくれる者が。」

アクアは言った。

「いることだと思います。」

セルジオは。

その言葉を。

受け取った。

静かに。

「食事を食べてください。」

アクアは言った。

「冷めます。」

アクアは去った。

セルジオはスープを一口飲んだ。

「...温かい。」

セルジオは言った。

独り言のように。

「そうだな。」

私は言った。

第十章:師匠の言葉を届ける

食事が終わった。

「一つだけ。」

私は言った。

「師匠から届けてもらいたい言葉がある。」

セルジオは止まった。

「師匠を知らないはずです。」

「知らない。」

私は言った。

「しかし。」

「同じ道理を持っているかもしれないと。」

「お前が言った。」

「はい。」

「では聞いてくれ。」

私は言った。

「はい。」

「師匠の声が聞こえなくなったのではなく。」

私は言った。

「お前が聴く場所を変えた。」

「耳ではなく。」

「金の音を聴く器官で。」

「周りを感じるようになった。」

「師匠の声は消えていない。」

「ただ。」

「今使っている器官では聴こえない場所にある。」

セルジオは黙った。

「聴く場所を変えれば聴こえるのですか。」

「わからない。」

私は正直に言った。

「しかし。」

「ここに来た今日。」

「お前は一瞬聴こえたはずだ。」

セルジオは私を見た。

「私が言った言葉の中に。」

私は続けた。

「師匠の道理と重なるものがあったから。」

「お前は頷いた。」

「それが師匠の声に近いものだ。」

「...気づいていませんでした。」

セルジオは言った。

「気づかなくていい。」

私は言った。

「感じていれば十分だ。」

「感じていたと思います。」

セルジオは言った。

「確かに。」

「あなたの言葉に頷きながら。」

「懐かしいと思っていました。」

「それが答えだ。」

私は言った。

セルジオは少し間を置いた。

「一つ聞いてもいいですか。」

「どうぞ。」

「あなたは。」

セルジオは言った。

「なぜここまで私の話を聞いてくれるのですか。」

「私はあなたの王国を偵察していた組織の者です。」

「敵ではないが。」

「味方でもない。」

「ネロが大切にしている者だから。」

私は言った。

「それだけですか。」

「それで十分だ。」

私は言った。

「ネロはこの王国に誠実に情報を届けてくれた。」

「その誠実さに返す方法として。」

「ネロが大切にしている者を大切にする。」

「それがこの王国の礼儀だ。」

セルジオは。

また少し黙った。

「ネロは良い場所と取引していますね。」

セルジオは言った。

「そう思ってもらえれば。」

私は言った。

「良かった。」

エピローグ - 帰り際の一言

正門前

セルジオが帰る準備をした。

私は門まで送った。

夕暮れになっていた。

橙色の光が。

王国を染めていた。

「今日は。」

セルジオは言った。

「ありがとうございました。」

「また来ればいい。」

私は言った。

「いつでも構いませんか。」

「いつでも。」

「聖軍の情報を持ってきても。」

セルジオは言った。

「良いのですか。」

「情報が欲しければ買う。」

私は言った。

「ただし。」

「ただし?」

「考えた上で売ってくれ。」

私は言った。

「道具として売るのではなく。」

セルジオは止まった。

「師匠の言葉を。」

セルジオは言った。

「あなたの口から聞きました。」

「師匠の言葉ではない。」

私は言った。

「道理の言葉だ。」

「師匠が先に言っただけで。」

「師匠のものではない。」

セルジオは頷いた。

「では。」

セルジオは言った。

「道理の言葉を聴くために。」

「また来ます。」

「待っている。」

セルジオは歩き始めた。

門の外へ。

少し歩いてから振り返った。

「ネロに伝えてもいいですか。」

「何を。」

「少し聴こえた気がすると。」

私は頷いた。

「伝えろ。」

「喜ぶ。」

セルジオは再び歩き始めた。

今度は振り返らなかった。

夕暮れの道を。

一人で歩いていった。

私はしばらく見ていた。

姿が見えなくなるまで。

「少し聴こえた。」

私は呟いた。

「それで十分だ。」

後ろから気配がした。

影からリスカレスが出てきた。

「どうでしたか。」

「良い対話だった。」

私は言った。

「セルジオは変わりますか。」

「わからない。」

私は言った。

「しかし。」

「しかし?」

「探し始めた者は。」

私は言った。

「見つけることがある。」

「諦めた者には見つからない。」

「しかし探し始めた者には。」

「可能性がある。」

「あなたはセルジオが見つけると思いますか。」

「思う。」

私は言った。

「なぜなら。」

「なぜなら?」

「今日のスープを。」

私は言った。

「全部飲んだ。」

リスカレスは少し止まった。

「...それが答えですか。」

「そうだ。」

私は言った。

「温かいものを全部飲める者は。」

「まだ心が閉じていない。」

「心が開いていれば。」

「道理は入っていく。」

リスカレスは。

少し間を置いた後。

「...アクアが喜びそうな話です。」

言った。

「教えてやれ。」

私は笑った。

夕暮れが。

王国に降りていった。

穏やかに。

一日が終わろうとしていた。

厨房から。

夕食の香りが流れてきた。

セルジオの道が。

夕暮れの中で。

続いていた。

どこへ向かうかはまだわからなかった。

しかし。

少し聴こえたという者は。

またいつか。

もっと聴こえる場所を探すだろう。

それが。

今日の答えだった。


【予告】5つの結末・その五(最終)——王は、なぜ正体を隠していたのか

皆さん、こんにちは!

「ダークコンチネント:生きる大陸と至高の支配者」の作者です。


5つの結末、最後の一つ。


今日は、少し違う角度から

お話しします。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ 王であることと、安全であることは違う

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


先に、はっきりさせておきます。


ヴィカスが

ドラゴンハート王国の王だったとしても——


それは、彼が

「最初から無敵だった」

という意味ではありません。


イコール・バリアで賭けたのは——

彼自身の、代償です。


ドラゴン・レルムで浴びた傷は——

王の力があっても、消えません。


彼が正体を隠していたのは——

守られるためではなく。


隠さなければ、

誰も彼を「一人の旅人」として

見てくれなかったからです。


王として出会えば、

誰もが跪く。

誰も、本音を話さない。


サチコも、

アキヒロも、

ヴェルモラでさえも——


「マスター・ヴィカス」であって、

「ドラゴンハート王国の王」では

なかったから、

彼らは彼と、対等に向き合えた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ だから、最後まで黙っていた

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


旅の間、彼は一度も

名乗らなかった。


正体を明かせば——

すべての関係が変わってしまうと

知っていたから。


彼が本当に恐れていたのは——

敵ではなく。


自分が「王」だと知られた瞬間、

これまで築いた絆が

"友情"ではなく"忠誠"に

変わってしまうことでした。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ 母の前でだけ、王でいる必要はない

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


すべての旅を終え——


ヴィカスは母の膝に頭を預ける。


そこでだけは——

王でも、支配者でもなく。


ただの、息子でいられる。


彼は、静かに語り始める。


海賊王が遺した最後の言葉。

アキヒロが背負った、痛みの意味。

ヴェルモラという男の、狂気の裏側。

サチコと交わした、対等な絆。

ウィズダム・アイランドで知った、世界の広さ。

ドラゴン・レルムで負った、消えない傷。


これは——

王としての報告ではありません。


一人の息子が、

母に聞かせる冒険譚です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ 2体の竜は、なぜ最初からいたのか

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


7体の至高竜のうち、

2体は、確かに

ドラゴンハート王国に

初めから存在していました。


——ですが。


それは、ヴィカスの旅が

「安全な旅」だったことを

意味しません。


彼は、その力を

一度も使わなかった。


使えば、簡単に

すべてを解決できたはずなのに。


なぜ、彼はそれを封じ続けたのか。


その答えこそが——

この物語の、本当の核心です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ 残る、5体の竜

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ドラゴン・レルムで対峙した

5体の至高竜——


彼らは、敗北したのではありません。


ヴィカスは、力で従えたのではなく——

彼らが「認めた」から、

人間の姿を与えられ、

ドラゴンハート王国へと

迎え入れられたのです。


支配ではない。

承認です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆ ここで、すべてが繋がる

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


永遠世界の高度AIを作ったのは、誰か。

56の絶対法則は、なぜあの形なのか。

マスター・ヴィカスは、本当は何者なのか。


そして——


なぜ、王であるはずの彼が、

これほど遠回りな旅を

選んだのか。


答えは、物語の終盤で

少しずつ明かされます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


5つの結末——

すべてをお話ししました。


どの結末に辿り着くのか。

それとも、すべてが

一つに繋がっているのか。


それは、1500話を通して

皆さん自身の目で

確かめてください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


毎日19:00更新中。


「なぜヴィカスは、力を隠し続けたと思いますか?」


コメントで聞かせてください。


長い旅ですが——

最後まで、よろしくお願いします。


#世界設定 #マスターヴィカス #シェンロン #ライトノベル #ダークコンチネント #5つの結末 #完結編

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