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最恐の弱点  作者: MANAM


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4/15

最恐の誤算

学生寮から学校までは歩いて五分ほど。ざくろは当然その道中裸足ローファーである。

学校に着くと入口で上履きに履き替えるのだが、このたった五分の間でざくろの裸足はすでに蒸れて最恐の芳香を放っている。


「くそ…最近暑くなってきたからな…」


言い訳する様に呟くざくろだが、本日は少し肌寒いくらいなので気温は関係なくざくろの足は臭いのだ。上履きも当然裸足履きで臭くならない要素は皆無である。


教室に着くと窓際の自分の席につき、ざくろは柚月の計画案に目を通す。

カフェの規模やそこで出すメニューなどの予定が書かれており、後は誰が何を担当するかを決めるだけという段階まで進められていた。


「なるほどな…これは一晩かかるわけだ」


ざくろはこの後曲者揃いのクラスをどう纏めあげるか思案する。不良相手なら脅せば済むがここではそれが通用しない。むしろ脅せば脅すほど黄色い声が飛んできて全く纏まらない事が目に見えていた。


そして授業前の時間、ざくろは席を立ち金髪を靡かせ教壇へと向かう。

当然ながら注目の的になりざわつくクラス。

そして柚月の計画案を黒板に貼り出すと、それを右手で叩き音を鳴らして自らの方へと注目させる。


「てめぇら! うちのクラスの出し物はカフェに決定だ! 以上!」


脅しても議論を引き延ばしても纏まらない。有無を言わさずカフェに決定した事実だけを告げる作戦に出たざくろだったが、さすがクラスの曲者女子達。出し物を何にするか口々に自分がやりたい事を言い始める。


「あたし、やっぱりお化け屋敷がいいと思うの」


「ダメよ。それは秋の文化祭にとっておいて招待会は焼きそばパン屋をしましょう」


「ダメダメ! 焼きそばパンは生地とそばを手作りしなきゃだから、ここはうまうまスティックバイキングにしましょう」


「はい! あたし同人誌即売会が良いと思います!」


定番から、焼きそばパンを手作りしないとから、駄菓子バイキングから、最後にとんでもない提案まで飛び出すカオスなクラス。


柚月の苦労をその身に感じながら、好き勝手に言い放ち結局何も決めないクラス女子に苛々を募らせていくざくろ。


そしてついに怒りが頂点に達し黒板に貼った柚月デザインを思い切り叩いて静かにさせた。


「てめぇら好き勝手言いやがって! 結局何も考えてねぇだろ! だけどこれを見ろ! 丸投げされた高木はてめぇらと違って夜通し計画考えてたんだ! うちのクラスはカフェに決定だ! 文句は言わせねぇ!」


ざくろの言葉に女子達は黙りこみ目を逸らし俯く。

しばらくの沈黙の後一人の女子が柚月デザインを見て呟いた。


「あのウエイトレスの服…かわいい…」


ぼそりと言った言葉だったが静寂の教室の中ではどんな音よりも大きく響いた。

他の女子達も言葉につられて黒板のデザインに注目しだすと、瞬く間にクラス中が賑やかになる。


「ホントだ! あの服着てみたい! あたしウエイトレスする!」


「えー! あたしも着たい! カフェで出す物を作る人も要るし交代制にしましょ!」


「そうね! じゃあ誰がどう担当していくか決めないと!」


「あたし同人誌即売会のウエイトレスします!」


全くブレない一人を除き、様々な意見が出て混沌としてもやる事が決まると即座に纏まるクラス女子達。

トントン拍子に話は進みカフェのシフトの話まで進んでいった。


ざくろは全てをやり切り席に戻ると上履きを脱ぎ、満足顔で机の上に裸足を乗せた目を閉じた。

開けられた窓から吹き込んだ爽やかな風が金髪を靡かせ、蒸れた裸足を撫で心地よい刺激を感じさせる。


「ふ…やり切った後の風は格別だな…」


そしてざくろの髪に残るシャンプーの香りと足の臭いが風に乗り教室にふわりと漂うと、女子達は話し合いを中断してざくろに注目し、なぜかうっとりするのだった。


ざくろはまだ気付いていなかったのだ。この学園の生徒は浮世離れしたお嬢様(と書いて変態と読む)ばかりだと言うことに。



その日の授業を終えざくろが部屋に戻ると柚月は眠っていた。

片手で前髪を上げおでことおでこを合わせて熱を見てみると少し熱は下がっている様だった。


おでこに貼ってある冷却シートを静かに取り替えていると、柚月が気付いて目を覚ました。


「おかえり、ざくろちゃん。帰ったらただいまって言わなきゃだよ…?」


まだ苦しそうな鼻声で言う柚月に、ざくろはため息をつきながら冷却シートをペシっとおでこに貼ってやった。


「うるせえよ。風邪ひきが説教垂れてんじゃねえ。静かに寝てろ」


柚月はゴホゴホ、クスクスと笑う。


「クラスは纏めてやったから安心しろ。後はてめぇが風邪治した後何とかしろよ」


「ありがとうざくろちゃん。やっぱりざくろちゃんに頼んで良かった」


ふん。と言って顔を逸らすざくろ。


「ああ…でも良かった…これでざくろちゃんのウエイトレス姿が見られる」


柚月は嬉しそうに布団に潜り顔を隠して足をパタパタさせる。そしてそれとは対照的に絶望に染まるのはざくろだ。


「なん…だと…?」


柚月の並々ならぬカフェへのこだわりは、自らのウエイトレス姿を見たい一心の執念だったと気付き、ざくろはまたしてもしてやられたと言う表情を浮かべるのだった。



そして後日、日曜日に招待会が開催されざくろは柚月デザインの服を着てウエイトレスとなり、ぷるぷると怒りに震えていた。

ざくろは他の女子に比べて少し背がちっちゃいので、ざくろ専用の服となるため最初から最後までウエイトレスのシフトとされた。


金髪の少し悪ぶった小柄な金髪の女の子がウエイトレスをするカフェは、訪れたOG達の間で瞬く間に拡散され、廊下に行列が出来る程の大盛況となる。


ざくろは注文された品をテーブルへと運ぶと、飲み物を溢さないようにしながらもわざとぶっきらぼうに音を立てて置き、カフェの評判を落とそうと必死になっていた。


「ごちゅーもんは…ってまだ決まってないのかよ! だったら呼ぶんじゃねえよ! シメるぞ!」


しかしそんなざくろの願いとは裏腹にOG達は頬を染め愛おしいそうに眼差しを送る。


「やだー! シメるぞだって! かわいいー!」


「不良さんに憧れる年頃だものねー」


OG達の言葉にワナワナと震えるざくろ。

そして靴を脱ぎ捨てるとその蒸れて、カフェには相応しくないであろう最恐の芳香を放つ裸足をお姉様方の方へと向け脅しにかかる。


「あたしのこの足で踏まれたくなけりゃ、さっさと飲んで帰れ!」


ドスの利いた低い声で言い放つとお姉様方は「きゃー!」と声を上げる。

それは悲鳴などではなく、歓声であった。


「そんな大サービスまであるのね!」


「これはもっとこのクラスのこと広めなきゃ!」


そう言うとスマホを取り出し通話アプリでカフェの裏メニューとしてざくろの足が拡散され、ますます客足が途絶えなくなってしまった。


やることなす事全てが裏目に出るざくろは最早諦めの境地に達するのであった。


そしてクラスのカフェは招待会売り上げ歴代断トツ一位を記録したのは言うまでもない。

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