最恐の助言
ざくろはやっとのことで先輩達から解放され、体をホカホカさせながらも体をフラフラさせてローファーを手に持ち素足で浴場から自室までの廊下を歩く。
「くそ…いつか絶対シメる…」
小声で呟くと、はっとして口を両手で押さえ回りを見回す。
幸い廊下には誰もおらずざくろの呟きが聞かれることは無かった。ほっと胸を撫で下ろすざくろ。
ここ桜花学園は全寮制で生徒達は全員学生寮から学校へと通っている。
同学年の二人から三人で一部屋に入居し、ざくろはクラスメイトとの二人部屋である。
無事自室へと戻ると同室のロブの髪型のクラスメイトの高木柚月が、ざくろが部屋に戻ったのにも気付かないほど集中し机に向かい頭を悩ませている様子だ。
ざくろはローファーを自分のベッドの脇に投げ捨てそしてベッドに足を組んで座り、何かを書いては消しを繰り返す柚月の背中を見つめる。
ざくろの体からふわっと石鹸の香りが漂い、それに気付き柚月がこちらに振り向いた。
「あ! ざくろちゃん! 帰ったらただいまって言わなきゃだよ!」
「ち…うぜぇ…」
先輩達に説教され部屋でも説教され、うんざりした様子で悪態をつきベッドへ寝転がるざくろ。
そして寝転んだまま柚月に視線をやりそのまま机の方へと視線を滑らせた。それに気付いた柚月がざくろにノートを見せて教えてくる。
「これ? これはもうすぐある学園OG招待会の企画案。うちのクラスはまだ何をするか決まってないでしょ?」
「あ〜…」
ざくろは面倒臭そうに目を逸らした。
桜花学園では新入生がOGを招いて小規模な学園祭の様なものを催す伝統がある。柚月はクラス委員としてクラスで出た意見を書き出して何をするのか考えていたのだ。
「無難なのはカフェかなーって思うんだけど…」
「あたしにはかんけーねぇ。好きにすりゃいいだろ」
ゴロンと横に転がり柚月に背を向けるざくろ。
目を閉じて思い出されるのは、出し物を何にするのかクラスで話し合われていた時の様子。
ざくろはその時面倒臭そうに頬杖つき喧喧囂囂と議論されるのを見ているだけだった。
数多くの意見が出されたのだが結局一つに纏めることが出来ず、全てを柚月に丸投げしてクラス会はお開きとなってしまった。
「高木もとんだ災難だな…」
ぼそりと同情を寄せるざくろ。
「で、で! カフェの場合のウエイトレスの衣装も考えてて! それが中々納得いく出来にならなくて」
そう言うと柚月は先程書いて消しを繰り返していた紙を、ベッドに寝転がるざくろの背中越しに目の前にデザイン画を差し出し見せてきた。
ざくろは片目を開けてその柚月デザインを見ると、腰のベルトのデザインを指差して、
「ここリボンの方がいいんじゃね? あとスカート長すぎ。カフェなら動きやすくしとけ」
ぱあっと表情を明るくする柚月。
「ありがとう! やっぱりざくろちゃんは優しいね!」
嬉しいそうに机に戻る柚月を背中に感じながら、ざくろは体に理解出来ないむずむずを感じ身震いした。
「優しいわけねぇだろ! んなこと言われると鳥肌がたつわ!」
思い切り大声で声を震わせるざくろだが、その頬は真っ赤に染まっていた。




