最恐の悩み
洲芦市から少し離れた場所にある芦浦市。この街には伝説の不良少女が存在する。
彼女の名前は藤宮ざくろ。見事な金髪ロングにパーマをかけた髪型の、現在高校1年生だ。
2年前14歳の時に、芦浦市の全ての不良を駆逐し、その頂点に上り詰め、その結果街に彼女の髪の毛が一本落ちているだけで不良達は震え上がりその場から逃げ出してしまうほどだ。
そんな最恐の彼女にも悩みがあった。いつも裸足でローファーを履いているためすぐに足が臭くなること、そして高校1年生にしてはちょっと背がちっちゃいこと。
しかしそんな悩みも些細な悩みになる程大きな悩みがあった。
「あら、ざくろちゃん、今日も可愛いわね」
学校の先輩に頭をなでなでされ、「う…」と声を上げるざくろ。
「ほーんと、こんなに可愛いのになんでみんな怖がるのかしら?」
もう一人現れた先輩にほっぺたをぷにぷにされる。
そう、彼女の最大の悩みは、自分の通うお嬢様学校の全校生徒が自分のことを全く怖がらないことだった。
頭を撫でほっぺをぷにぷにしてくる先輩達に眼光鋭く、ドスの効いた声で、
「シメるぞ」
それを聞きた先輩達は、
「あらあら、そんな言葉使っちゃダメよ?」「お仕置き、しちゃいましょうか」先輩は両手を合わせて笑顔でそう言いい、ざくろに迫る。
「く…来るな!」
抵抗虚しく先輩二人に取り押さえられ、ローファーを脱がされて足の裏をくすぐられる。
「にゃー!やめ…やめろぉお!」
「だーめ!あんな汚い言葉使っちゃダメって前にも言ったでしょ?」ざくろを羽交締めにしている先輩が言う。
「そうよぉ。うふふ、ざくろちゃんの弱いとこぜーんぶ知ってるからね」そう言うながら足をこちょこちょするもう一人の先輩。
「あは!あははは!ダメ…!あたし…足の裏…よわ…あはは!あははは!ゆ…許してくだしゃいぃぃ!」
最恐なのはざくろではなく、実はこの先輩達なのかもしれない。
ざくろ本人は高校に入学する気などさらさらなかった。中学を卒業したら家を出て、不良の全国統一をする気で準備までしていた。
藤宮家は芦浦市では知らない者がいないほどの名家である。その財力と、自らの実力で統一を成そうとしていたのだ。
その一方で、ざくろの父は娘の非行に頭を悩ませていた。芦浦市の不良を駆逐し、不良による犯罪をゼロにまでしたざくろは、ダークヒーローとして芦浦市の住民から感謝の手紙が今でもポストに入らないほど届くのだが、非行には変わりない。なんとか更生させることが出来ないかと考えていた所、洲芦市に住む姪からこう言われたのだ。
「だったら、ざくろちゃんをお嬢様学校に入学させればどう?」
なる程それは名案だと無理矢理入学させられたのが今いる高校なのだ。
「くそ…いつか奴に落とし前つけさせてやる…!」
ざくろは眉間に皺を寄せ元凶である従姉妹の顔を思い浮かべながら悪態をつく。
「だぁかぁらぁ! 汚い言葉使っちゃダメって言ってるでしょ?」
「うにゃあぁ…あっ…はははは!」
一人の先輩に足をガッチリと押さえられ、もう一人の先輩にわしゃわしゃと蒸れた足を洗われている。
ここは学生寮の浴場。
こちょこちょされ、わしゃわしゃされ、笑い死に寸前のざくろ。
「じぶ…じぶんであらうかぁああははは……!」
「だーめ。ざくろちゃん自分で洗うといっつも適当に済ませちゃでしょ?」足を押さえる先輩がさらに力強く押さえ、
足を洗う先輩は、「まあそれはそれでざくろちゃんの臭いを堪能出来ていいんだけど♡」と、ざくろの足に鼻を近づけくんくんする。
「あはは! た…たしゅけて……!」
笑いながら涙を流して助けを乞うざくろの声が浴場に虚しくこだました。




