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趣味で作ったコスプレ衣装が、なぜか全部S級装備だった件  作者: あどん


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第16話 深紅の射手と不運の法則(マーヤ・サカモントの場合)

「今日も来ちゃいました~! 天啓! 天啓はありましたか、イオリさん?」


そう言って布袋工房ほていこうぼうに顔を出すのは、この国の第一王女にして俺の最大の理解者(?)、アリスティア・カワスミス殿下その人である。


「アリス様、王女が頻繁に平民の店に通ってたら一大事ですよ。近衛騎士も困ってるんじゃ……」

「私は今、庶民の暮らしを勉強している最中なのです! ちゃんとお忍びですから大丈夫ですよ、イオリさん」


……いや、お忍びだからこそ、バレた時が全然大丈夫じゃないと思うのだが。

まあ、以前仕立てた例の騎士服を着てくれている。今の彼女はその辺の騎士ですら敵わないほどの圧倒的強者なので、滅多なことは起こらないはずだ。

何より彼女は来るたびに装備や小物を大量にお買い上げしてくれる。商売としては、これ以上ないほどの上客なのだ。


「さあ、イオリさん! 今日はどうですか? 誰か“ビビッ”と来る人はいませんか?」

「アリス様……そんな簡単に“天啓”は降りてきませんよ……」


最近、自分の近衛騎士や部下を次々と連れてきては、俺の「天啓」が発動するかどうかを試しているのだ。


「わかってますよ。でも、宝くじだって買わなきゃ当たらないでしょう?」

「まあ、それはそうですが……。それにしても、連れてくるのが女性ばかりなのは意図的なんですか?」

「あら、女性の方が天啓が降りる確率が高いという有力な情報を掴んでいますから!」


……そんな偏ったデータ、誰が流しているんだ。ミオか?

俺は、近未来的な制服に身を包んだ電子の妖精ならぬギルドの妖精を思い浮かべた。

別に狙っているわけじゃない。だが、傾向があるのは否定できない。


苦笑いしながらアリスの背後に控える騎士たちを眺める。


その中に一人、ひときわ鋭い視線でこちらの動きを監視している女性騎士がいた。


艶やかなくれないのショートカットに、凛とした顔立ち。青紫の瞳の奥には「自分はまだ未熟だ」という焦燥と、ひたむきな情熱が同居している。俺が何か怪しい動きを見せたら即座に剣を抜くと言わんばかりの緊張感を漂わせている。

そして何より、その「赤」が似合いそうな佇まい。


(あれは……?)


――深紅のジャケットとタイトスカート。

――赤いショートヘアーから伸びるアホ毛。

――紅き量産型、高機動の影。


一瞬の閃光と共に、脳裏に浮かぶ赤い制服。

その持ち主は、俺が今最も「あの子」に似合うと考えていた人物と完全に合致した。


天啓。


「あ! あの子!」

「はい? ……ああ! マーヤ・サカモントさんですね! 最年少で王直属騎士団に入団した若き天才剣士です! 流石はイオリさん、見る目がありますね!」


アリスは嬉しそうに手を叩く。対照的にマーヤ本人は、ギロリと俺を睨んでくる。うん、かなり警戒されてるなこれは……。


「アリス様、明日の朝一番で、彼女にこのお店に来てもらえるようお願いできますか? 」

「え? はい!もちろんです! マーヤもそれで構わないわね?」

「……殿下のご命令であれば」


マーヤは何も答えず、ただ深く溜息をつくだけだった。だが、アリスは完全に「当たりの予感」に乗り気だ。


「ではイオリさん! 明日の朝にまた来ますね! さあみんな行くわよ!」

「はっ!」


嵐のように連れられていく一行を見送りながら、俺の頭の中では既に構想が固まり始めていた。

明日までに最高傑作を作ってやろうじゃないか。ふっふっふ。


ーーー


工房に飛び込むなり、俺は真っ赤な上質な魔導布地に裁ちばさみを入れた。


今回のテーマは「ザ〇トの赤――ではなく、情熱の紅」。


メインカラーは情熱的なレッドとクールなブラック。

まず基本となるのは軽量かつ高密度に圧縮した竜鱗繊維で編まれたレザー調ジャケット。背面には竜骨を加工して作ったハードバックプレートを装着し、防御力を確保しつつも機動性を損なわない形状に仕上げる。


下半身は同じく竜鱗繊維のタイトスカートだが、動きやすさを考慮してサイドには複数のスリットを入れ、さらに薄い鋼糸を織り込んで斬撃への抵抗力を持たせた。


フロントには「赤服」の象徴である、あの特務隊のエンブレムを精密に刺繍する。


靴は通常のブーツよりグリップ力と俊敏性を重視した改良型。


肝心の特殊能力向上術式は、体内魔力循環を強化し遺伝子調整されたかのような強靭な身体能力と明晰な判断力を擬似的に再現するものを選択。背中の大型バックプレートには各種センサーが接続可能な魔法回路を組み込み、装着者の戦闘データを自動記録・解析する機能も盛り込んだ。


そして巨大な魔力タンクを用意する……アレを作るのはさすがに無理だからな。代わりに、圧倒的な火力を誇る「あの武器」だけは仕上げる。


「よし、これこそ、戦場に咲く紅い月だ」


夜明けとともに、俺は倒れた。


ーーーー


翌日。

アリスが約束通り、マーヤを連れて工房を訪れた。


「やりましたわねマーヤ! これが噂のS級装備ですわよ!」

「……姫様。あまりこの男を信用しすぎないでください。どう見ても胡散臭い、ただの変態にしか見えません」


マーヤはアリスの手前、渋々とついてきてはいるが、その視線は氷のように冷たい。だが、俺が差し出した「真っ赤な制服型の鎧」を見た瞬間、彼女の眉がピクリと動いた。


「……何ですか、この色は。戦場でこんなに目立ってどうするんです」

「いいから着てみてください! あなたの『真価』は、その赤を纏ってこそ発揮されるんだ!」

「貴方は何を言っているんですか」


辛辣な突っ込みが炸裂する。


「まあまあマーヤ! 試しに着てみてくださいよ! 私だってこの人の服のおかげで無敵の騎士になれましたし! ね? ね!?」


アリスが全力でゴリ押しする。マーヤは苦虫を嚙み潰したような顔でため息をつきつつも、「……わかりました」と頷いた。


「もしまたくだらない物だったら……承知しませんよ」


そう言って更衣室に引っ込むマーヤ。

数分後。


「……どういう意図でこんな服を作ったのですか?」


憮然とした表情で出てきたのは――

赤を基調とした精鋭部隊風の制服。

ミニ丈のスカートに、機能性を追求したタイトなジャケット。

真紅と漆黒のコントラストが眩しい、極めてエレガントでスポーティな“それっぽい軍服”に身を包んだマーヤだった。


「おおおおおお!! 良い! 最高だ! まさにル〇マ〇ア……いや、マーヤ! 完璧だ!!」

「どうですかマーヤ? 身体になんか変化ありませんか?」

「……妙に身体が軽い。思考も冴えています。これが噂のS級装備の力ですか……」

「ああ! コーディネーターのような強靭な肉体と優秀な頭脳を擬似的に実現したんだ!」

「コーディネーター? 調整役……? まあいいです。これで任務遂行能力が向上するなら文句はありません」

「よし! こっちに来てくれ!」


俺は工房の奥から「ケルベロス」――巨大なタンクと、そこから伸びる長大な砲身を持つ魔導砲を運び出してきた。


「これを使ってみてくれ! 特製魔導長距離砲オルト……いや『ケルベロス』だ!」

「……馬鹿な。こんな重いもの、扱えるはずが――って、軽い!?」


マーヤが驚愕しながらライフルを構える。


「これは魔道兵器ですか……?」

「ああ! 本来なら“ザ〇ウォー〇ア”を作りたかったんだけどな。俺の技術力じゃこれが限界だ。だけど性能は折り紙付きだぜ!」

「これでも十分すごいと思いますけど……えっと、ちなみにこちらもミーヤ専用装備ですよね」

「ああ、もちろん!だからマーヤ以外は重くて扱えないな」


俺が断言すると、アリスは「それならまあいいです」と納得してくれた。


「よし、じゃあ性能テストだ! いつもの浜辺に行こう!」


ーーー


海岸沿いに設置した標的ブイの前に立つマーヤ。

手早く「ケルベロス」を肩に担ぎ、腰だめに構える。その姿は、あまりにも絵になりすぎていた。


「さあ、あそこのマトを狙ってみてくれ!」

「……ふん、私を誰だと思っているの。外すわけないでしょ」


引き金が引かれると同時に、凄まじい反動音(ガシュン!!)とともに膨大な魔力が収束し、巨大な魔弾が発射された。


弾道は――

マトを大きく逸れて遥か右方にズレていき……

俺の工房の煙突を根元から吹き飛ばした。


ドゴォォォン!!


「「……あ」」

「あ……今の。風向きが……違う。……違うのよ?私はちゃんと狙ったからね!」

「なるほど。やっぱりそこまで再現されちまったか……」


ガックリと項垂れる俺。一方マーヤは顔を真っ赤にして半泣きだ。


「何納得してるのよこの欠陥品!! こんなのに貴重な国費を使うわけがないでしょう! 呪いでもかかってるんじゃないの!? 返品よ返品!」

「いえいえマーヤ! 凄まじい威力でしたわ! 煙突があんなに綺麗に消し飛ぶなんて! もう一発撃ってみてくださいよ!」

「アリス殿下……! その励ましは傷口に塩です!!」


その後、何度も試射したものの、結果は芳しくない。

当たる時は一撃で巨大な岩盤を砕くほどの威力だが、外れることも多かった。結局、「異常なまでの破壊力を持つが、その命中精度の低さは使用者の不幸によるものなのかS級装備の不具合なのか不明。安易な運用は危険」という評価で、王宮騎士団の「条件指定決戦兵器」として厳重保管されることになった。


後日。

演習では百発百中の成績を誇るようになるまで成長したマーヤだったが、本番の魔物退治では盛大に外して「やだもー!」と叫んでいるマーヤの姿が目撃されるようになるのだが、それはまた別の話である。


なお……。


「イオリさん。あの制服、あと六着ほど作れますか?」

「アリス様、ご存知の通り、形は似せても能力の付与には天啓が……」

「いえ、能力はいいのです。女性近衛兵の皆様の制服にちょうどいいかと思いまして」

「へ?」


その後、赤服が一部近衛兵の公式制服として採用されたとか、されなかったとか。

それもまた別の話である。


ーーー


【アイテムデータ】

【S級】紅の狙撃手(マーヤ・サカモント専用)

素材: 高純度紅龍鱗 × 強化竜骨プレート ×竜鱗繊維

特徴:

身体強化: コーディネイター並みの運動能力と反射神経を付与。

魔力循環: 高速回復と高出力の魔力運用をサポート。

備考: 命中率低下の呪い(?)。いざという時に遠距離命中率が低下する可能性がある。原因は「装備者の不幸属性」か「S級装備の不具合バグ」か、議論が絶えない。


【S級】特製魔導長距離砲 ケルベロス(マーヤ・サカモント専用)

素材: 高魔力抽出タンク × 魔素集束式レーザー砲 × 千里眼のレンズ片

特徴:

・超高出力貫通砲: 一撃で城塞の壁すら穿つ超破壊力(ただしエネルギー充填に時間がかかる)。

・精密射撃モード: 専用外套とのリンクにより理論上の命中率は98%以上を誇る。

・高魔力抽出タンク:魔力の自然回復能力の他、術者による急速充魔も可能。

備考:「やだもー」の掛け声とともに回避率が僅かに上昇する隠しスキルを持つが、本人に自覚はない。

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