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サイレント・ベルフラワー  作者: ProjectAI.【プロジェクトアイ】
◇ Program Ⅴ ◆

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File.53「施策・新顔」

◆御角 陽彩 (みかど ひいろ) 15歳(高1)

 本作の主人公。運動神経抜群だが能天気。瀕死体験をきっかけにクロッカスを志した。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆白百合 結衣 (しらゆり ゆい) 15歳(高1)

 人見知りな性格だが、トキシーを前にすると狂戦士(バーサーカー)化する。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆桔梗 レエナ (ききょう れえな) 16歳(高2)

  本作のメインヒロイン。口数が少なく、感情表現が苦手。陽彩の専属コーチ。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆翡翠 蘭 (ひすい らん) 17歳(高2)

  お淑やかな性格で、ヒュドール学園高等部の生徒会長を務めている。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆月下 人美 (つきした ひとみ) 17歳(高3)

 ギャルメイクと"うずらっち"が趣味の姉御肌。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆???

 "ボス"と呼ばれる謎の男。

 クロッカスを忌み嫌い、人類撲滅計画を企んでいる。


◆クイン

 ボスの配下につく、感情を失った少女。


◆???

 ボスの配下につく、若い麗女。

 陽の光が決して届くことのない、世間から隔絶された魔窟――


「……くっ、くくっ……」


 薄暗い居室の草臥(くたび)れたソファに(もた)れながら不気味な笑みを浮かべる男――慣れた手つきで煙草に火をつけ、じっくりと味わうように煙を吐き出す。


「……哀れな連中め。国家機密がこうも容易く漏れているとは到底思うまい」


「これも、"リプトル"ちゃんのお陰ですねっ」


 男の隣に座る若い麗女がにこやかに微笑んだ。


「ふんっ、ヤツは所詮捨て駒だ。役に立たなければ即座に切る」


「うふふ、容赦ないですねっ」


 それから間もなくして、一人の少女が物音一つ立てずに姿を現した。


「……失礼いたします」


「あら、クインちゃんお疲れ様ですっ」


 どこか不機嫌そうな男は、”クイン”と呼ばれた少女を横目に頬杖をつき、再び煙を吐き出す。


「貴様か……何の用だ」


「……”オペレーション・バースト”の経過報告に参りました」


 少女は深々と頭を下げ、居室内の大型モニターの前まで移動する。


「ふんっ、そうか。好きにしろ」


 態度を一向に変えなかった男が、ある単語を耳にした瞬間、乾燥した唇を僅かに緩ませた。


 その一方で、少女は淡々と手元の端末を操作する。


「……ここ1ヶ月間、ボスのご命令に従い、第7コロニー及び第8コロニーにて(プログラミング)シェルターの構造解析を行っておりました。我々にとって最大の課題である《Pシェルターの透過》――不可能かと思われましたが、ついに突破口を見出すことに成功いたしました」


「……ほう?」


 ”ボス”と呼ばれた男は疑わしそうに片眉を上げ、煙草の火を消した。


「……簡潔に申し上げますと、Pシェルターとトキシーの完全同一化です」


「……」


 男は顔を(しか)め、溜息交じりにうなじを掻きむしる。


「クインちゃん、そんなことが本当に可能なの?」


 隣に座る女も、少女の説明には半信半疑なようだ。


「……はい。厳密に申し上げますと、トキシーの装甲にPシェルターと同様のプログラミングを施すことで、Pシェルターのセンサーを透過することが可能となります」


「まぁ……!」


 胸元で両指を絡めた女の瞳には光が宿っていた。対する男も身を屈めつつ顎髭を何度も擦っている。


「……それはいつまでに実現するのだ」


「……およそ、一週間ほど掛かるかと」


「チッ、遅すぎるぞポンコツが!!!!貴様、この計画の猶予は許されないと理解しているのか??」


 神経を逆撫でされた男は、机上に置かれた灰皿を激しく叩き割り、少女に肉迫する。


「……迅速に対応いたしま――」


 男は頭を下げていた少女の首元を片手で掴み、少女の軽い身体を徐々に持ち上げる。


「あらまあ」


 日常茶飯事であるのか、女は目の前の光景に対し一切動揺を見せない。


「ボ……ス……申し……訳……」


 無機質ながらも途切れ途切れに命乞いをする少女の瞳には、僅かに涙が滲み出していた。


「解ればいい」


「……っ!」


 壁際に突き飛ばされた少女は、ゆっくりと立ち上がると、覚束ない足取りで扉へと向かう。


「……失礼いたしました」


 少女は再び深々と頭を下げ、部屋を後にした。


「……プログラムを改良する必要があるな」


 男は少女の後ろ姿を眺めつつ、妙なことを呟いた。


 ひと息ついた男は振り返り、女に視線を向ける。


「さて、私は自室に戻るが……お前はどうする?」


「私も、そろそろ業務に戻りますねっ」


 ソファで(くつろ)いでいた女も立ち上がり、男の頬に軽く口付けをした。


「ふっ……頼んだぞ」


 満更でも無さそうな表情を浮かべた男は、女が立ち去ったのを確認すると、自室から持ってきた端末の画面をじっくりと見渡しながら悪魔のような笑みを浮かべる。


「ククッ……翡翠よ……(こうべ)を垂れるなら今のうちだぞ……ククッ……」


 男の底気味悪い笑い声が木霊した。



————————————————————◇◆



 放課後、クラスメイトは続々と懇親会の会場へと向かい始めていた。


 胸躍らせる者、一方で胸をざわつかせる者――いよいよ本格的にクロッカスとしての活動が始まるのだ。


 俺も席を立ち上がり、ある人物に声を掛けにいく。


「白百合さん!一緒に行こうぜ!」


「……うっ!あっ、はいっ!」


 毛を逆撫でされた猫のように飛び上がった白百合は、俺の顔を確認すると、あたふたして頬を赤らめた。


「ははっ、驚きすぎだぜ。今日からチームメイトとして、よろしく頼むなっ!」


「……こちらこそ、よろしくお願いします!と思います……」


 白百合は俺が差し伸べた手を遠慮がちに優しく握った。


「おう!じゃ、行くか」


「……あのっ!!」

 

「ん?」


 振り返って歩み出した瞬間、白百合は俺を呼び止めた。


「えっと、その……」


 白百合は思考を整理しつつ、固唾を呑んで徐々に俺へ視線を向ける。


「ありがとうございました。結局、結衣はまた御角さんに――」


「ちょっと待ってくれ、俺が白百合さんに手を貸したとでも?誰かから聞いたのか?」


 予想外の発言に俺は思わず会話を遮ってしまった。俺が協力したことは明智にも口止めしてもらっているはずだが……


「いえ……でも、分かるんです。御角さんは、きっとまた助けてくれたんだって」


「だとしたら見当違いだぜ。白百合さんは自分の力で合格を掴み取ったんだ。嘘だと思うんなら明智さんにでも――」


「そんなはずありませんっ!!」


「……」


 珍しく大声を上げて否定した白百合に、俺は思わず唖然としてしまった。教室内に残っていた数人も白百合の声に反応する。


 目を丸くした俺を見て、白百合は慌てて周囲を見渡し縮こまった。


「……ハッ!ごめんなさいですっ!!と思います……明智さんからお話は伺いましたけど、どうしても辻褄が合わなかったので……」


「いや、俺の方こそ悪かった……本当のことを話すよ。歩きながらでもいいか?」


「はっ、はいっ!よろしくお願いしますっ……!と思います……」


 俺は白百合の歩幅に合わせ、普段よりも緩やかな足取りで会場へと向かった。


 話す内容を脳内でまとめていると、俺よりも先に白百合が口を開いた。


「……結衣は目覚めた瞬間に悟りました。また、黒百合ちゃんを呼び起こしてしまったんだって……きっと、また誰かを傷つけてしまったんだろうなって……解ってはいたんですけど、色々考えると辛くなってしまって……」


 彼女はこの2日間、色々と思い悩んでいたのだろう。


 もう誰にも頼らない――そう決めていたはずなのに、自制が効かない黒百合が呼び起こされてしまった。


 黒百合が試験中に何をしたのか――当の本人は知る由も無い。第三者から得られる情報を信じるほか無いのだ。


「大丈夫だ。誰も傷ついてなんかいないし、誰も白百合さんのことを蔑んだりしてないさ」


「そう……ですか……」


 きっと、俺にも確認しておきたかったのだろう。


 事実、俺に強烈なパンチを喰らわせたことを除けば、黒百合は誰にも危害を加えなかった。


「それで、辻褄が合わないってのは?」


「試験中、何度か御角さんの声が聞こえてきたんです。必死に黒百合ちゃんの名前を叫ぶ声が……」


「……そっか、ちゃんと届いてたんだな」


「御角さんが精鋭部隊に選ばれたのも納得です。結衣が合格できたのも、御角さんの的確な立ち回りがあったからなのかなって……」


「……で、俺が関与してないとは思えなかったと」


 白百合は少し躊躇いながらも首を縦に振った。俺が説明しなくとも、彼女は正しい事実を導き出したのだ。


 これ以上、取り繕う必要は無い。


「まあ、安心してくれよ。黒百合ちゃんの扱い方は何となく解ったし、任務に出ちまえば周囲の目なんて気にする必要も無いしな」


「そう……ですよね」


 肩を落として自信なさげに肯定する白百合に対し、俺は鼓舞するように彼女の両肩に掌を置いた。


「大丈夫!白百合さんにイヤな思いはさせねぇさ!きっと、それがチームでの俺の役目なんだと思う」


「……やっぱり、御角さんは頼もしいですね」


 白百合は照れくさそうに視線を逸らしつつも、晴れやかな感情が口元に表れていた。


「へへっ」


 そんな彼女を見ていると、俺まで自然に笑みが溢れる。


 彼女の新章は、きっと華々しい第一歩となるだろう。


「俺も……負けないようにしねーとな……」


 俺は彼女に聞こえないようにポツリと心境を呟いた。


 その後、たわいもない会話をしながら歩くこと数分、俺たちは懇親会の会場――”学生会館 大ホール”に到着した。会場は既に多くの生徒で賑わっており、綺麗に配置された円卓には豪華な食事が盛り付けられていた。


「おっ、まるでパーティー会場だなぁ!」


「凄いですっ……!と思います……」


 俺に限らず、白百合も目の前の光景に心を躍らせていた。


「えーっと、俺たちの席は――」


「ヨッ!新入り!」


「んおっ!」


 周囲を見渡していると、覇気を感じる女子生徒から急に声を掛けられ、俺は反射的に後ずさりする。


 ウェーブのかかった綺麗な金髪を後ろで束ね、自信に満ちた堂々たる佇まい――只者ではないことは一目瞭然だった。


 無作為に声を掛けたとは考えにくい。ということは……


「えっと……もしかして、3年の――」


「アタシは人美、月下人美(つきしたひとみ)!気軽に人美さんって呼んでくれていいぞっ!」


 やはり、俺たちが所属する第1部隊”うずらっち”リーダーの月下先輩だった。名前は度々耳にすることはあったが、こうして対面するのは初めてだ。


「はいっ!1年の御角陽彩です!よろしくお願いします!」


「白百合……結衣……ですっ!」


 俺に続くように白百合も自己紹介をし、深々と頭を下げた。


「へへっ、2人とも初々しくて可愛いじゃねぇか!チーム”うずらっち”へようこそ、歓迎するぞっ!」


 月下先輩は俺たちの肩に両手を置き、満面の笑みで迎え入れてくれた。クロッカス現役最強の呼び声がある彼女だが、想像よりも人当たりが良さそうでひとまず安心だ。


「うずらっちの3年はアタシだけなんだけど、ちょ~イチオシの2年を揃えたから紹介するよ!ついてきなっ!」


「……お願いします!」


 俺と白百合は気を引き締め、月下先輩の後に続いた。


 ”うずらっち”のメンバーは全部で6人。つまり残りの2人は2年生だ。


「2人ともお待たせ!可愛い後輩ちゃん達を連れてきたぞっ!」


「なっ……!?」


 俺は想定外な光景に思わず息を詰まらせた。


 そんな俺たちの顔色を窺うようにして、座っていた2年生が息を合わせてゆっくりと席を立ちあがる。


「クロッカス2年、桔梗レエナです。よろしくお願いします」


「同じくクロッカス2年、翡翠蘭ですわ♪以後、お見知りおきを♪」


 憧れの師匠に、命の恩人。


 脳の整理が追いつかない俺は、ただ呆然とその場に立ち尽くした。

こんばんは!ProjectAI.【プロジェクトアイ】です。


お待たせいたしました!第5章、開幕です!


チーム"うずらっち"のメンバーとして、陽彩はどのような活躍を見せてくれるのか、人間関係はどう変化していくのか、ぜひご注目ください。


そして、水面下で動いている謎の計画の全貌は如何に……


YouTube&ニコニコ動画にてビジュアルボイスドラマも公開中です♪


↓下記URLよりご覧いただけます☺️↓

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ボイスドラマに出演していただく声優様も随時募集していますので、そちらも併せてご覧くださいませ。


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