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File.52「決別・編成」

◆御角 陽彩 (みかど ひいろ) 15歳(高1)

 本作の主人公。運動神経抜群だが能天気。瀕死体験をきっかけにクロッカスを志した。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆桔梗 レエナ (ききょう れえな) 16歳(高2)

  本作のメインヒロイン。口数が少なく、感情表現が苦手。陽彩の専属コーチ。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆白百合 結衣 (しらゆり ゆい) 15歳(高1)

 人見知りな性格で、陽彩とは入試で協力し合った仲。

 トキシーを前にすると狂戦士(バーサーカー)化する。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆黒華 苧環 (くろばな おだまき) 15歳(高1)

 クロッカス入隊試験首席合格の優等生だが、キザで性格に難あり。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆明智 柚葉 (あけち ゆずは) 15歳(高1)

 フレンドリーなクラスのムードメーカー。可愛いものが大好き。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆宇紺 慎弥 (うこん しんや) 15歳(高1)

 苧環の取り巻きで、暴力的で短気な性格から『狂犬』と称されている。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆橋本 一 (はしもと はじめ) 15歳(高1)

  苧環の取り巻きで、ガタイが良く温厚な性格。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆牡丹田 朱里 (ぼたんだ あかり) 27歳

 厳格な性格で、常に冷静沈着。

 戦闘護衛部隊"クロッカス"の総指揮官を務めている。


◆アカツキ

 陽彩の相棒である初代ルミナスクロー。かつては牡丹田朱里のパートナーだった。

 お嬢様口調で、派手な見た目をしている。

「――以上で試験結果の発表を終了する。明日以降の日程についてはスケジュール表を参照してくれ」


 牡丹田が解散の合図を出すと、張り詰めていた空気が一気に弛緩し、俺たちは自由の身となった。


「さて……白百合さんのところに行くか」


 席を立ち上がろうと前屈みになった途端、俺の目の前を颯爽と通り過ぎようとする人間と目が合ってしまった。


「ん、どうしたのカナ?ヒーロークンッ」


「どうしたもなにも……宇紺のこと、どうするつもりだよ。このままだとアイツ辞めちまうんじゃねーのか?」


「ハハッ☆彼の行く末などボクには関係ないヨ」


 黒華は間髪なく心無い台詞を言い放った。


「おいっ!それでもアイツの友達かよ……!」


「プライドをへし折られたくらいでここを去るのなら、その程度の覚悟だったということさ。それが友人だろうと他人だろうと、ボクは一切擁護しない。ボクはボクの目的を果たすためだけに動く。それだけさ」


 そうだ、コイツはこういう人間だった。友情だの人情だの、普通の人間が持ち合わせているような感情がコイツには無いのだ。


「じゃ、失礼するヨ☆それと……お礼は結構だからねッ」


「……?」


 黒華は満足そうに指をパチンと鳴らし、鼻歌を歌いながら教室を後にした。何に対してのお礼なのか全く理解ができないが、しばらくの間呆然としていた俺は気を取り直し、明智と白百合が待つ保健室へと向かった。


 保健室の扉を開けると、丸椅子に座り白百合を静かに見守っていた明智が俺に視線を向けた。


「あっ、御角くんっ」


「遅くなって悪いな、白百合さんは……」


「まだ、ぐっすりですね。でも、息遣いはさっきよりも安定してます。もう少し待てば目を覚ますかと」


「そっか……」


 やはり、俺とは比にならないほど体力を消耗していたのだろう。それよりも……


「明智さん、ひとつ質問があるんだが……」


「そういえば、試験後に聞きたいことがあるって言ってましたもんね」


「そのこともあるが、今聞きたいのは試験中の出来事だ。俺がぶっ倒れてからの4分間、一体何が起こったんだ?まさか合格していたなんて思わなかったよ」


「それは……」


 明智は何故か言葉を詰まらせ、視線を僅かに逸らした。


「何か後ろめたいことでもあるのか?」


「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」


「なんだよ、勿体ぶって」


「ちょっと思いがけない出来事だったもので……」


「……?」


 思いがけない出来事――やはり”あの男”絡みだろうか。



————————————————————◇◆



 ――試験終了4分前。


「御角くんっ!御角くんっ!」


 御角くんの身体を何度も揺らすが、御角くんは一向に目を覚まさない。


「ハハッ☆もう無駄だヨッ?彼はもう限界だ」


 黒華くんは愉快に嗤いながら明智を煽り立てる。


「そんな……もうちょっとだったのに……」


「諦めるのかい?」


「だってもう……」


 もう、明智に出来ることは残っていない。残り115pt、御角くんの分まで稼ぐなんて不可能だ。


「最後まで戦い抜こうと言ってたのはキミじゃないか。彼の努力を無碍(むげ)にするのは元気っ子チャンの道理に反するだろう?」


「道理って……黒華くんは明智の何を知ってるんですか……?」


 明智は肩を震わせ、爆発しそうな怒りを必死に抑える。


「まあまあ、そう怒らないでくれたまえ。ボクはキミにプレゼントを渡したいだけだヨ☆カワイ子チャンには借りを作りたくないからねぇ」


「プレゼント?借り?」


「さっきの場所に戻ってみたまえ。これ以上はルールに抵触するから言わないでおくよ」


「はぁ……」



————————————————————◇◆



「――それで、敵さんが居る場所に戻ってみたら、瀕死の敵さんが山積みになってて……明智は2分足らずで150pt近く獲得できたんです。御角くんの不足してた分も含めて……」


「残ってたもう一体のモンスター型か……でもヤツが俺たちの手助けをするメリットって何だ?」


「借りを作りたくなかったとは言ってましたけど……」


「うーん、アイツは本心が読めないしな」


 俺と明智は不覚にも黒華に助けられてしまったようだ。さっきのお礼がどうのこうのってのはこのことだったんだな。


 ふと窓の景色を眺め、メモリングで時刻を確認する。そろそろ陽が沈む頃合いだ。


「……あっ、いけね!寄らなきゃいけない場所があったんだ。明智さんはどうする?」


「明智は……もう少し残っていきますっ」


「そっか、頼むな。それと……」


 俺は眠る白百合を横目に、小さく呟く。


「俺が協力してぶっ倒れたことは、ナイショにしておいてくれ」


「ビシッ!了解ですぅ!」


 過去の自分と決別し、新たな自分を探す旅に、白百合結衣は歩み出すのだ。


 彼女の旅路の支えになれたら――密かにそんなことを願いつつ、俺は保健室を後にした。


「さてと……」


 俺は駆け足で校舎の外へ飛び出し、所定の場所まで移動する。


「18時に正門前って約束してたよな」


「……お疲れ様です、御角くん」


 小さくて繊細、されど弓矢のような声が突如として俺の耳元を撫でるように刺激する。


「んおっ!ビックリした……急に話しかけないでくださいよ」


「おっと、失礼しました。では私はこれで」


 俺の反応が気に入らなかったのか、桔梗先輩は視線を逸らして流れるように帰ろうとした。


「待て待て待て!!そーゆー意味じゃ無いですよぉ~!!」


 俺は先輩の前に立ちはだかり、必死に両手を上下に振る。


「……冗談です」


「わかりづれぇ……」


 この人、生真面目に見えて意外と冗談とか言うタイプなんだな……


「試験、お疲れ様でした。見事でしたね」


「えへへ〜〜そ〜っすかぁ〜??」


「やっぱり全然ダメでしたね」


「ガクッ!!」


 落差で風邪引くぞ……おい……


「コホン……帰りながら話しましょうか」


「う、うっす……」


 俺は肩を落としつつ桔梗先輩に続いた。


 こうして桔梗先輩と並んで帰るのは初めてで、少し新鮮だ。


「悪条件の中でしたが、御角くんは最適解を実行できていたと思います。結果的に、君のチームも、白百合さんのチームも合格を果たせました。もし私が君と同じ立場だったら、同じ行動を取っていたでしょうね」


「桔梗先輩も?ルールに反するのに?」


「自分よりも仲間を想い、身を挺して行動する。クロッカスはそういう組織です。君の利他的な性格は、もしかしたらここに向いているのかもしれませんね」


「なるほど……」


 入試最下位からのスタート――厳しい道のりではあるが、桔梗先輩のような実力者に褒められると素直に嬉しいな。


 話しているとあっという間に学生寮の前まで着いてしまった。桔梗先輩は立ち話を続けるつもりは無いらしく、俺に軽く会釈をする。


「では、私はこれで」


「あ、ちょっと先輩!」


「……何でしょう」


「……約束、覚えてますよね?」


 そうだ。今日待ち合わせをしたのも、これを伝えるためだ。


「私の弟子になりたい……という話でしょうか」


「忘れたとは言わせないっすよ」


「もちろん覚えていますよ。約束は約束です」


 桔梗先輩は小さく微笑んだ。夕日に当たった先輩の頬は、いつもよりも紅く染まっていた。


「よろしくお願いします!!師匠!!」


「ふふっ、師匠――悪い気はしませんね。では、生き地獄を味わわせてあげましょう。”もう逃げない”――ですもんね?」


 笑顔。笑顔なのに、なんでこんな怖いんだ。


「うっ……はいっ!!師匠!!」


「では行きましょうか」


「んえっ、行くって何処に……」


「何処って、訓練場ですよ。夜の9時まで絶対に帰しませんから」


「にょは~~~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!」


 この人、もしかしてサイボーグなんじゃないのか……?


「俺の身体、いつまで保つかな……」



————————————————————◇◆



 ――翌日、放課後。


「イデデデデ……筋肉痛やべぇ……これから特訓って嘘だよな……?」


「ミーも筋肉痛が……」


「お前……昨日メンテナンスしてただけだろ……」


「ミーは繊細なんですの!アカリに色々弄られて体がムズムズしますわ……」


 アカツキはミミズのように身を(よじ)り、俺にウザいくらい余計なアピールをしてくる。ついでにコイツの性格も直してもらうべきだったな……


「んっ、あれは……」


 スーツケースを引きながら正門を出て行こうとする少年が目に入った。不審に感じた俺は少年を呼び止めるようにして声を掛ける。


「おい宇紺、そんな大荷物でどこ行くんだよ」


「ん?あぁ、お前か。辞めるんだよ、学校を」


「辞める!?昨日の今日だぞ!?」


 今日は追試を受けるために授業に出ていなかったと思っていたが、そもそも追試すら受けていなかったらしい。


「俺にクロッカスは向いていなかったのさ。クラスの色んなヤツにも迷惑かけた。俺の居場所はもうどこにもねーよ」


「居場所なんてこれから作ればいいだろ!せっかくクロッカスに入ったのに、ちょっと上手くいかなかったくらいで――」


「うるせぇなぁ!!テメェは俺の何なんだよ!!先公気取りかぁ!?あんっ!?」


 宇紺は俺の胸ぐらを掴んで怒声を浴びせる。全てを失い荒涼とした宇紺の叫びに、俺は虚しさすら覚えた。


「……そういうわけじゃないんだ、すまん」


 俺の冷静な態度を察し、宇紺も静かに腕を下ろした。


「あっいや、いいんだ……俺の方こそ、色々すまなかったな。結局俺は、この2ヶ月で何も成長できなかった。今もこうして反射的に虚勢を張っちまったしな。足手まといな俺は、苧環さんの腰巾着にすらなれない。ここいらで去るほうが、世のため人のためだ」


 宇紺は外村に浴びせた罵詈雑言を自分自身に向けていた。


「黒華には言ってるのか?」


「へっ……あれ以降、苧環さんどころかクラスの誰とも会ってねぇよ。さっき指揮官と1時間くらい話してきたけど、俺を引き留めようとはしなかった。あの状況で癇癪起こした人間を受け入れてくれるほど、ここは甘くねぇのさ」


 来る者拒まず去る者追わず――それがクロッカスの理念なのだろう。


「……ここを辞めて、お前は今後どうするんだよ。お前にだって、クロッカスに入った目的があるんじゃないのか……!」


「さぁな。そもそも俺がクロッカスを目指したのは、苧環さんの背中を中学の時からずっと追っかけてたからだ。大きな目標に向かってストイックに取り組む姿勢に俺は惚れ込んじまった。俺が訓練や試験でずっと威張ってたのも、あの人に置いていかれないための手段だったんだ。ホントに……必死だったんだよ」


 宇紺は過去の愚行を振り返り、教室の辺りを遠目に眺める。


「俺は元々クロッカスなんぞに興味は無かった。それなりの大学に行って、それなりの企業に就職できればいいと思っていた。だけど……」


 それから数分間、宇紺は自身の過去を語っていた。半分くらいは黒華の自慢だったが、相手が俺でなくとも、最後に誰かには話しておきたかったのだろう。


「――でも、クロッカスでの俺は今日限りで終わりだ。これからは、本当に俺がやりたいことを探すことにするよ。誰かのケツを追っかける人生はもうヤメだ!」


 話していくうちに、宇紺の瞳には希望の光が宿っていた。


 クロッカスで味わった挫折を未来の糧にする。牡丹田がコイツの退学をすんなり受け入れたのも、少し納得してしまう。


「……人それぞれなんだな」


「何がだ?」


「いや、こっちの話だ」


 クロッカスに入って人生を変えたいと願う者、クロッカスを辞めて人生を変えたいと思う者。


 相反するようで、実は等しい存在なのかもしれない。


「おっと、そろそろ時間だな!話聞いてくれてサンキューな、少し気が晴れたわ」


「いや、気にしないでくれ。俺も色々考えさせられたよ」


 長い人生の中で、俺はあと何年戦い続けるのだろうか。戦いの果てに、俺は何を得るのか。はたまた……


「あと……もしお前が今後もクロッカスに居続ける気があるなら、苧環さんにご家族の話は吹っかけないでくれ。理由は……いずれ解ると思う」


 あれだけ話しておきながら濁すということは、相当な訳ありなのだろう。ヤツがクロッカスの首席に拘っているのにも関係があるかもしれない。


「……わかった」


「じゃ、元気でな。世界が平和になる前に死ぬなよ?」


「へっ、お前もな!」


 俺たちは互いの未来(人生)にエールを送った。



————————————————————◇◆



 ――翌週、朝のホームルーム。


「えー、本日から6月の授業が始まるが、皆に大事な通達がある」


 牡丹田は口を真一文字に結び、瞳を閉じる。


「まず……宇紺慎弥についてだが、先週末をもって自主退学した。よって、ペアだった外村は繰り上がりで合格となる」


 想定外の知らせに教室内は徐々に響めき始める。ヤツを良く思わない連中もいただろうが、教室内は重苦しい空気に包まれていた。


「慎弥くん……」


 俺の左後ろに座る橋本も、小さく声を漏らした。


 場を鎮めるべく、牡丹田は軽く咳払いをする。


「……それと、見事クロッカスの公式ライセンスを取得した君たちには、本日からクロッカスの一員として本格的に活動してもらうことになる。放課後にはチームメイトの顔合わせも兼ねて懇親会を行うから楽しみにしておきたまえ」


 チームメイト――これから活動を共にする大事なメンツだ。ほとんどの先輩とは初対面だが、どんな逸材が揃っているのか楽しみだな。


「クロッカスは全15部隊、1学年最低1名以上で、1チーム当たり6~8名程度で構成される。任務内容については今後説明することになると思うが、第1部隊~第3部隊は特に忙しくなるだろう。俗に言う精鋭部隊だな」


 恐らく、黒華や桔梗先輩なんかは精鋭部隊に入るのだろう。現に桔梗先輩は精鋭部隊に所属していると以前話していた。


「では、各チームのリーダーと、君たち1年生のメンバーを発表する」


 教室内は再び響めきが起こる。俺も固唾を呑んで牡丹田へ視線を向ける。


「第1部隊リーダー、3年・月下 人美(つきした ひとみ)


 月下人美――聞いたことがある。確か、クロッカス3年のリーダー格で現役最強と謳われている生徒だ。


「1年メンバー、黒華 苧環」


「フッ☆」


 黒華は自慢げに前髪を掻き上げる。まあ、予想通りだな。


「白百合結衣」


「えっ、ええっ……!?」


 まさかの人選――と本人は思っているだろう。だが単なる戦闘能力だけでいえば学年随一であることは間違いない。


 待てよ……?ということは、黒百合を制御する人間が必要になるよな……?

 

「御角 陽彩、以上だ」


「んえっ、俺!?!?」


 確かに、黒百合と共闘することを考えれば俺が適任だが、この俺が精鋭部隊のメンバーだと……!?


「チーム名……ゴホン」


 どうやら別にチーム名が存在するようだが、牡丹田は珍しく少々頬を赤らめ言い淀む。


「?」


 それからしばらくして、諦めたかのようにボソッと呟いた。


「――うずらっち」

 

 うずらっち……?

こんばんは!ProjectAI.【プロジェクトアイ】です。


第4章、ついに完結しました!!!(予定より長くなってしまった^_^;)


クロッカスの正式なメンバーとして、そして"うずらっち"のメンバーとして、陽彩は孤軍奮闘していきます。ぜひ最後まで見守ってあげてください。


第5章は5月公開予定!!しばしお待ちくださいませ……


YouTube&ニコニコ動画にてビジュアルボイスドラマも公開中です♪


↓下記URLよりご覧いただけます☺️↓

https://www.youtube.com/watch?v=5mCj5bY2rAI&list=PLh-u7PjjPcTPlayuqAarIKzDpkoxIinIl


https://www.nicovideo.jp/user/142201767/series/537295


ボイスドラマに出演していただく声優様も随時募集していますので、そちらも併せてご覧くださいませ。


【X(旧Twitter)】https://x.com/ProjectAI_2025


【YouTube】https://youtube.com/@mochi_ccs


【ニコニコ動画】 https://www.nicovideo.jp/user/142201767

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