頼もしい協力者 8
※このエピソードには、少し残酷な描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
「まあ、いずれにしても、大きさなんて関係なく頼りになる子は頼りになるんじゃないでしょうか。案外あの子たちは頼りになりますよ」
ベイリーはいったいどの立ち位置なのかわからなくなる。レジーナお嬢様の味方なのだろうか、それともわたしたちの味方なのだろうか。
「あの、ベイリーさん。ベイリーさんって何者なんですか……?」
恐る恐る尋ねると、ベイリーが手首を返して、レジーナお嬢様の方を向けていたわたしのことを、今度は視線の正面にくるように向きを変える。
「随分と抽象的な質問ね。わたしが誰かなんて、カロリーナちゃんが気にする必要はないわ。深く詮索しないようにと言ったのに、あなたはその約束に背いたのだけど、その自覚はあるのかしら?」
ベイリーはしっかりと目を見開いて、わたしを見つめる。明確に怒っている。仮に同じ大きさだとしても背筋の凍る視線を、わたしは今小さな体で至近距離で受けている。独自に動きすぎたから、きっとかなりベイリーの琴線に触れるような行為をしたのだ。
「あなたは今、目の前で、知ってはいけない秘密を見ているの」
ベイリーがわたしを握る手に力が入る。今までエミリアやレジーナお嬢様にもかけられたことのない、本気で握り潰そうとするような強い力。
「ご、ごめんなさい……。わたし、どうしても元の大きさに戻りたくて……」
声も体も小刻みに震えてしまっていた。
「あなたの事情は知らないわ。ただ、深く詮索するなとは言ったはずよ。あなたはその言いつけを破ったの」
何か言い訳をした方がいいのはわかっているけれど、今のわたしには何かを言える余裕がない。苦しい。多分顔は真っ赤になっている。それでもなお、ベイリーは手を緩めようとはしてくれない。
「や、やめて……。ご、ごめんなさい……」
声もまともに出ないような強い力がわたしを襲っている。
「ねえ、ベイリー。それ以上はさすがにやめてあげて!」
レジーナお嬢様が静止の声をかけるくらい、今のベイリーは普通ではない。多分、すでにわたしの骨は何本か折れてしまっている。まともに声も出す事ができず、痛みで苦しんでいるわたしを見て、ようやくベイリーが微笑んだ。
「さよなら、カロリーナちゃん」
わたしを持つ手を上に目一杯掲げると、地面までの距離はとても遠くなる。何を考えているかわからないけれど、嫌な予感しかしなかった。ベイリーは大きく息を吸うと、躊躇わずに、勢いよくわたしのことを地面に叩きつけた。痛みで意識が朦朧としてしまっていたけれど、ベイリーがわたしを踏みつけようとしていることはなんとなくわかった。
逃げないといけないのだけど、もう動けるわけがない。周囲を血で濡らして、すでにボロボロになっているわたしに向かってとどめと言わんばかりにベイリーが両足を揃えて真上にジャンプをした。わたしはベイリーの大きな影に包まれる。靴の影は次第に深く、大きくなっていった。
声も出せないわたしの代わりに、レジーナお嬢様の悲鳴が部屋中に轟く。重量8000倍近いベイリーの身体が上から勢いよくふってきて、無事でいられるわけがない。もはや踏み潰される前に、わたしは恐怖で気を失ってしまっていた。




