第96話
ゆっくりと一泊宿で休めたため、皆の疲れもある程度は取れている。と思う。
いくら馬車の中で足を延ばして寝具にくるまれて眠れるような旅でも、町中の宿で寝る安心感とかは無いわけで、それなりに精神的な疲れとかも溜まるのだ。
もう一泊して、明後日の正午には船旅の始まりとなるはずだ。
今日も警備のローテーションはそのままにしてルドと一緒に買い出しを続けることにする。
船旅と言えば、船酔いと沈没が心配だよね?ね?
船酔いは先に酔っぱらってしまうっていう民間療法が有るけど使えないよな。護衛業務中だし。
沈没は・・・・なにか救命ボート的なものを準備しておくか。
中世的なこの世界にはおそらくそんなものは無いだろう。
せめて一行の人数が乗れるだけのボート的なものとオールや水や食料も必要だろう。
他の乗客も助けたくなるだろうから、浮き輪やロープも必要だろう。
食料と酒は昨日、ウチの奴隷様達を一ヶ月食わせるだけの量は仕入れた。
二十数人の大食漢を一ヶ月だ。
元々持っていた分を含めれば軽い籠城戦をこなせる位の量だ。
素材と調理済みは3対7位かな。
料理は嫌いじゃないけど、めんどくさいときはパッと出してすぐ食べれる日本のコンビニや冷凍食品と電子レンジのコンボの良さを知ってるとなかなか、さあ料理しようって気にならないこともあるしさ。
それに特に寒くなってくるとやっぱり、さっと出せて温まれる鍋物が常備されているとうれしい。
ということで、それの追加(まだ必要か?)と真水を樽単位で仕入れよう。
さすがに持ってる水分が全部「酒類」ってのは、いくら魔法で水を出せるとしてもいろいろ問題があるだろうと思う。
まずは水を大中小それぞれの樽で仕入れることにする。
ただ水を飲みたいときに100ℓの樽から飲むなんて勘弁だ。
5、20、100ℓ位の3種類で大量に揃える。
悪くなるもんじゃないし、高価でもない。ほとんど樽の代金だ。
この街は海に面しているのに良い井戸も多いし、川も近くに流れている。
持ち運びも俺がいれば大丈夫。問題ない。
あっという間に収納して、腐りもしない。
もちろん食料もだ。
その土地土地の名産や料理法がある。
この旅程で開いてしまった鍋や新たに買った鍋、店からの鍋ごとの買い取りなんかで、もう数ヶ月は同じものを食わなくて済むんじゃないかって位買い込んだ。
だってこの世界では食事位しか娯楽もないし、みんなも喜ぶしさ。
あいつらの美味しい食べ物を前にした時の笑顔ってすごい・・・良いし。
って絶対に言わないけどさ。
思うのは自由でしょ?
次は、ボートか?
海に面した街だけあって、受注生産じゃなくて、展示品の船もいっぱいあった。
地球で貸しボートであるような2~3人が乗れるようなものから、ドラゴンボートレースに使うような物まで多種多様なものがあった。
とりあえず各種数艇にオールを所定数+αを買うか。
オールを流すなんて、ボートあるあるだしな。
あとはロープに浮き輪(木製)に帆に使えそうな布になぜか釣り具一式。
ハンモックに魚籠に網に銛にヤス。
さすがにスワンタイプの足漕ぎボートは無かったけど満足できる買い物ができた。
財布はだいぶ寒くなったけどね。
いざとなったら魔物でも狩らないといけないかもしれない。
まあ、海を渡れば仕事も終わって報酬も出るし、「食う」にだけは困らない。