第65話
「じゃあ朝飯の前に昨日の精算しとくか?」
亜空倉庫から、なすりつけパーティの装備品や、レベル三が抱えていた荷物を取り出す。
「お前個人の物ってあるのか?それ以外は慰謝料として没収しようと思うんだが。」
ダンジョンでは、全滅したパーティの残したものは、発見者の物という不文律がある。
厳密に言えばやつらのパーティは全滅ではないのだが、唯一の生き残りが今は俺達のパーティに入っている状態なので、パーティメンバーが居なくなっていることに変わりは無い。
レベル三は、自分の抱えていた荷物ではなく、なすりつけた連中の持っていた小さな袋を漁り、黒い泪型の水晶のイヤリングを取り出す。
「こ、これだけです。」
あとは他のやつの装備、パーティ共有のものや、ダンジョンでの戦利品だったのだろう。
ってことは、コイツの持ち物って、短剣とローブと水晶だけ?
「それは?」
レベル三が取り出した水晶を指差して聞いてみる。
価値はありそうだが、それぐらいのものは戦利品の中にもありそうだ。
「両親の形見です。」
なんとなくあいつらとの関係性が見えてきた。
あいつらがジャイアニズム信奉者で、コイツは野比類ノビ科の生き物だな。
壽眼でイヤリングを確認してみる。
黒水晶のイヤリング
特殊効果2((身代わり)・(空き))
身代わりは、一度だけ致命傷を肩代わりするものらしい。
良い親だったんだな。こんなものを子供に残してあげるなんて。
「それじゃ他は全部売っ払うか。」
再度、亜空倉庫にしまいこむ。
まだ使えそうな装備品や宝石なんかも有ったのだが、あんな奴らの物だということで、持っておきたくなかったのだ。
道具屋や武具屋で、売り払うと全部で約七十万ゴルになった。
腐ってもレベル十あたりの五人分の装備、戦利品だ。
かなりの額の臨時収入になったので、豪華な朝飯にすることにして、適当に開いている店に入る。
「んで、どうするよ?」
かなりの量の料理をウェイトレスに注文すると、レベル三に問いかける。
「な、何をでしょうか?」
分からなかったか。
今後の身の振り方を聞いたつもりだったんだが。
「ご主人様、それは余計なお世話というものではありませんか?」
「「うんうん。」」
なんでだろう、三人ともやけに扱いが冷たいな。
そんなになすりつけがむかついたんだろうか。
サミーは前に他のパーティに襲われたことがあるって言ってたから仕方ないにしても、他の二人はなんでなんだろう?
とりあえずスルーしてレベル三に話しかける。
「今後の身の振り方だよ。あまり良い関係にも見えなかったけど、お前のパーティ無くなっただろ?」
置いてけぼりや、形見の品を他のメンバーが持っていたことなどを考えると、嫌々従わせられていたであろうことは想像がつく。
「まあ、いろいろあったけど無事だったんだから田舎に帰るなり、ソロでやるなり好きにすれば良い。」
元パーティメンバーのギルドカードをレベル三に渡す。
「たしか、ギルドに持っていけば多少の金になるんじゃなかったかな?」
ギルドではギルド員の管理のために、ダンジョンで死亡した探索者のギルドカードを持ち帰るよう推奨している。
地球の軍隊のドッグタグのようなもんだな。
たしか持って行くと一枚あたり五百ゴルになるはずだから二千五百ゴル。何日か暮らせる額だ。
「あとは、売っぱらった額から少しくらいは分けてやってもいい。」
遠いところの出身だったら数日分の金だけで飢え死にでもされたら寝覚めが悪い。
「あっ、あの、できればこちらのパーティで養っていただけないでしょうか?」
「「「「・・・」」」」
養っていただけない?
パーティに入りたい奴のいう台詞ではないな。
「あっ、いえ、お世話になるわけにはいかないでしょうか?」
自分の失言に気づいたらしい。
「あんな目に遭っておきながら、初対面のウチのパーティに入りたいと?」
「はい。命の恩人ですので、恩返しがしたいと思いまして。」
鶴か?おまえの名前は「おつう」かよっ?
たしか魔法も使えたし、多少は使えるだろうか。
壽眼でレベル三を確認してみる。
[名前]ルドラ・ミョルニル
ドゥエルフ(父ドワーフ・母エルフ)・♀・十三歳・自由民・レベル3
[筋力]二五
[精神力]三〇
[器用度]二〇
[敏捷度]二〇
[耐久力]三〇
[抵抗値]一〇
[幸運度]一〇
[魅力値]二〇
[LP(生命力)]二〇/二〇
[MP(魔力)]四〇/四〇
[HP(信仰力)]三〇/三〇
[スキル] ポイント 5P
「魔法」風魔法1、土魔法1、補助魔法(リフレッシュ、種火、軽量化)
「戦闘」短剣1
「非戦闘」回復促進(LP1、MP1)、夜目1、隠密1
[装備]青銅の短剣、木綿のローブ、黒水晶のイヤリング2((身代わり)・(空き))
えっ?!
ドゥエルフってドワーフとエルフのハーフなん?
父ドワーフ、母エルフ。
逆なら「エワーフ」とかになるのかな?
それよりなにより、
♀????
コイツ、女???
レベル三の見た感じは美少年ってのがふさわしい。
ショタにはタマラナイ感じの。
髪は、ショートまでもいかない、男でも良くある長さ。
少しとがった耳が見えるし、うなじがギリ見えない長さだ。
体つきも華奢で、胸もほとんど無い。
よく見て、気づくかどうか、といった感じだ。
あの良いにおいは、そのせいか。
三人がつれなかったのもそのせいか?
三人に聞いてみる。
「あぁっと、コイツが♀だって知ってた?」
「「「はい!!!!」」」
「気づいてなかったのは俺だけ?」
「なにも無ければ良いんですよ。なにも無ければ。順番ってモノがありますから。」
怖いよイルさん。どす黒いオーラが。
「そこの害虫は駆除しても良いですよね?(ニコッ)」
満面の笑顔のサミーが怖い。眼だけが別の次元の生き物みたいだ。
「何かしてたら極刑です。何もしてなくても有罪です。」
ヒルダさん冤罪です。何もしてなければ無罪でしょうよ。
レベル三は既に泪目で腰が抜けている。
ガクブルどころか、すでに観念しているレベルだ。
ダンジョンで見捨てられたときよりも絶望的な顔だ。
「「「で?何かあったんdeathか??」」」
あぁ、俺死ぬんだ・・・・。
「殺るならボクを。」
レベル三が三人に向かって宣言する。
ボクって・・・
しかもバーサーカー状態の三人に向かってよく言えた。
褒めてつかわす。
さらに、俺をかばうように俺の前に腰の抜けた体で、両手を広げて。
おぢさん感動のあまり泪が滲んできたよ。
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。
三人の歯軋りの音が響く。
こめかみには血管が浮いている。
三対の眼は魔王のソレだ。
「俺の奴隷にするってことで、許してもらえないだろうか?」
あまりにも哀れだ。
俺くらいは庇ってあげないと、あっという間に骨も残らぬように存在を消されるだろう。
怒り狂った死神に切り裂きに鉄拳が前にいるのだ。
殺されるくらいなら奴隷堕ちでも我慢してくれないかな。
「それで一緒にいられるなら喜んで。」
おいおいレベル三。本当にいいのか?
言い出した俺が言うのも何だが、奴隷堕ちだぞ?
しかもこの空気の中でよく言えた。褒めてつかわそう。
「くっ。ご主人様の奴隷になるのであればしかた有りませんか。」
「順位はどうなんですか。順位は。」
「別に殺れないわけじゃないし。」
もう一息で助かりそうだ。
「何も無かったし、順位は三人の下。殺るのは禁止。
これから商館にいって奴隷契約する。それで勘弁して。」




