第62話
翌日冒険者ギルドに行くと、いつもの美人受付嬢が、
「バラエティの皆さんに、副支部長からお話しがあるそうなのですが、お時間有りませんか?」
急にどうしたのだろう?
「ここでは、ちょっと。奥の応接室へご案内しますね。」
「探索者ギルドのこの街の支部長は領主の一人娘でな。
この街の主要ギルド会議でも、我が物顔でイチャモンをつけるなどの地位を背景にした問題行動が多かったのだよ。
ギャフンといわせてくれて溜飲が下がった。」
応接室にやって来た、くすんだ緑色のローブを着た四十代の陸人族のおじさんは、昨日の俺の行動を絶賛してくれた。
そりゃ、あの態度で接していたら周りはむかつくよな。
そうかあのオバハン、苗字が領主と同じだから一族だとは思っていたが、領主のババァ伯爵夫人の子供だってことは、やっぱり貴族だったんだ。
そりゃ、偉そうにふるまうよな。
っていうか教育に失敗してんじゃねぇのか?
「特別に、探索者ギルドを辞めた三人を冒険者ギルドで同ランクで登録できるがどうする?」
「これですぐに冒険者ギルドに登録したら、迷惑が掛かるんじゃないですか?」
「いやいや、犬猿の仲なのは今に始まったことじゃないし、どうかね?」
うーん。悪い話じゃないな。
「そういえば、この三人は俺の奴隷なんですが、奴隷の身分証明っているんですか?」
身分証明のためにギルドに登録してるだけだから、不要なら別に登録しなくても不便は無い。
「主人と一緒に行動している限り、いらないな。
主人の身分証に記載されている奴隷であれば、主人の身分証だけで十分だ。
お使いなどで主人と別に街を出入りするなら必要だが。」
いらないのか。
そりゃそうかもな。
奴隷の身分を証明って。
「うーん。考えておきます。二、三日中の返事でいいですか?」
「あぁ、問題ない。ウチは探索者ギルドなんかとは組織の規模が違うから、買い渋りなんてないから、売ってくれるなら買い取りカウンターに行ってくれ。」
冒険者ギルドは世界規模の大組織。
探索者ギルドは、ダンジョンがある周辺だけにある組織。
ということは、日本で言えば、一部上場の複合大企業と地方の金持ちの一族経営の中小企業位の差になるんだろうか。
であるとすれば買い取り資金には格段の差があるだろう。
ダンジョンで手に入れた物も冒険者ギルドで買い取ってくれるし、探索者でなければダンジョンに入れないわけでもない。
「そうですね。とりあえず半分くらい引き取ってもらおうかと思います。」
貴魔魂石は、一個十万ゴルもした。
そりゃあ資金も不安になるか。
とりあえず五個を残して三十個を三百万ゴルで買い取ってもらった。
俺基準で言えば、日本円で三千万円。
いまのところ、金に困ることはなくなったから、レベル上げと、旅に時間を使える身になった。
パーティメンバーも足りているどころか、街で働かせている奴隷までいるので、今のところ、新しく奴隷を買うことも無いし、もうすぐチョーシ村に屋敷ができる予定だし、装備の更新と、新しい拠点購入費用のために取っておいてもいいんじゃないだろうか。