第46話
しかし、身体の傷が癒えてしまえば、いつまでもこんな危険なところで寝ているわけにはいかない。
「地上に出るから、みんなに俺のパーティに入ってもらうように伝えて。」
イルに頼んで、伝えてもらう。
今は直接口をきくなんてとてもできない。
みんなで地上に出る。
地上に出ると雨が降っていた。
「どっか雨のしのげるトコで話しをしようか。」
雨ざらしの野原はダンジョンより話し合いには向かない。
宿か居酒屋かどこかに場所を移したい。
「みんなで公衆浴場の貸切風呂に行きましょう。」
立ち上がり、右手を上に突き上げて、ヒルダの無駄に凛々しい宣言がされた。
どうしたもんだろうか。
たしかに他に入ってくる人は居ないし、ダンジョン探索でデロデロに汚れ、疲れた身体には良いだろうけどさ。
「それでいい?」
反対の声が上がらないのを確認して[フィールド移動]でデスタの街に戻る。
風呂道具や着替えは全部俺のストレージに入っているので、そのまま公衆浴場に向かう。
「四人。貸切風呂で。」
受付のすでになじみになっているおばちゃんに言うと、
「ようやくですか。湯には出さないでくださいね。」
と、わけの分からない台詞と共に、入場券をくれる。
今までに無い番号だ。
なんでも1~3人までと、4~10人までとか貸切風呂の規模も変わるらしい。
ってことは、広い風呂に四人で貸切ってことか。
半分死にかけていた俺は、金を払うと番号どおりの風呂に一目散だ。
みんなの血肉まみれの服と身体は[リフレッシュ]をかけたが、もう精神の限界だ。
装備も服も脱ぎ捨て、マナー違反だが身体を洗う前に湯船にダイブしたい。
ようやく個室に行くと。
あぁこれは。
広い。
貸切露天風呂だ。
二十畳程のスペースを木の塀で囲ってあり、浴槽だけで六畳程の広さがある。
塀際には竹やモミジのような植え込みがあり風情が感じられる。
今後は追加料金を払ってもここに来たい。
溶ける。
疲れきった身体で入る風呂は、風呂上りの冷たいビールや、真夏のアイスや、真冬の鍋物、サカリの時期の性交、徹夜明けの惰眠のように身体をとろけさせる。
大きさもさすが4~10人用。浴槽が六畳ほどの広さがある。
寝そうになって、溺れかけそうになったところでみんなが入って来る。
思わず、隠密スキルを発動させてしまった。
別な意味で溺れたらどうしてくれる。
そんな体力は残ってないけど、じゃまにならないように隠密スキルは発動しておく。
みんなは、バスタオル様の大きな布で胸とお尻までを覆っている。
とはいっても日本のバスタオルのような立派なものではない。
手ぬぐいではなく身体ぬぐいって感じの布だ。
隠している範囲も長さも膝上二十センチ、かがめば中が見える程度の長さだ。
胸のさくらんぼもうっすら薄っすらウッスラ透けてる気がする。
俺の高性能大口径速射砲(予定)も対空砲火に角度をあげている。
発砲予定が無いのが非常に残念だ。
よく考えてみれば、一人と三人の違いはあれど、未踏破のダンジョンを数階層踏破してきたのだ。
みんなも疲れていないはずは無い。
少しの間だけは無言だったが、そのうちキャッキャウフフの声がしてくる。
なぜか分からないが隠密スキルも発動したまま、まったりしていると。
本格的にいつもの通りというか、俺の存在が忘れられてしまったらしい。
「で?どういうことなのよサミー?」
やはりそういうことが大好きそうなイルが問い詰めている。
「なんのことですか?」
「ご主人様から告白されて断った件よ。」
「そうです、信じられません。なにが不満なんですか?」
問い詰められている。
当事者が風呂の隅に居ることは、隠密効果で本当に忘れられたらしい。
忘れてないんだとしたら鬼だこいつら。
「今まで、手を出してこなかったってことは、同情ってことでしょうし。」
サミーが反論するも即座に否定される。
「失踪はどう説明するのよ?ぜぇ~ったいに違うわ。」
「もしそうなら腕枕もしませんよ?」
女子のそれに関する直感ハンパねぇ。
「あの黒いツナギ着てると、後ろからサミーのお尻ずっと見てたよ。」
「キスするとき、赤くなってたし、心臓もドキドキしてた。」
男のチラ見ってのは、そういうのに敏感な女にとってはかぶりつき位に感じるんだろう。
バレバレでした。
「でも、商館では習ったかぎりでは。」
「サミー。あなたはご主人様が普通の陸人族だとは思いませんよね?」
「それはそうですが。」
普通の庶民ですが、なにかまずかったでしょうか?
「普通十五歳で奴隷を三人もまとめて一度に買うような人は居ませんよね?」
「それもそうですが。」
「商館でも超上級者って初めてらしいですよ。」
その二つ名で呼ぶの、止めていただいてよろしいでしょうか
「奴隷を解放して、お前が大事だとか、自分を切れとか、恋人になれとかいう陸人族の男って。」
「「聞いたこともありませんよ。」」
「・・・」
サミーは、無言だ。
俺は恥ずかしさで声も出せない。
「いくら抜け駆け禁止の約束をしたとはいえ、ご主人様からの告白を断れとまでは言ってませんよ。」
「・・・」
そんな約束してたんだ?
ん?
抜け駆け禁止ってことは?
「正直に言っていいですか。」
「遠慮せずに言ってください。」
「「リア充爆ぜろ。」」
「ひどくないですか?」
「「サミーが爆ぜれば、わたしにも可能性が。」」
それが本音かお前ら。
というか、みんな平等に好きだよ。
たまたまサミーが最初になっただけで、ハーレム予定だったんだよ。
根性無しで意気地なしなので実現できてなかっただけで。
「やっぱり小さかったり大きかったりしすぎるとダメなんですかね。」
ヒルダがサミーの布を奪い取る。
「このちょうどいい感じがご主人様好みなんでしょうか?」
イルがサミーの胸を揉みしだく。
推定Cの美乳が、推定Fの巨乳に揉みしだかれる。
目の保養、いや、目の毒だ。
いやヒルダさん、自分の胸を見て絶望的な表情を浮かべなくてもいいですよ。
そういう需要も根深くありますから。
今の俺は空気扱い。
ってことは参加できないだろうか?
[隠密]スキルと、闇魔法の[透明化][静音]全部を使えば?
いかんいかん。
フラレたばかりだ、おとなしくしておこう。
今度こそ立ち直れないダメージを食らうだろう。
揉んだり暴れたりで、身体拭いが大変なことになってきた三人。
ハラッ。
ハラッ。
限界寸前のところにワンツーでいい攻撃を貰ってしまい、思わず後ずさる。
今は[隠密]スキルしか発動していない。
ってことは、気配の無いところから「ザバザバザバ」という湯を切る音がしたわけだ。
三人が一斉にこっちを見る。
「あ、あの、最初から居たんですけど、みんなが気づいてくれなくて。」
とりあえず。とりあえず処刑前に言い訳だけはしてみる。
「覗きですか。」
「聞いていましたか?」
「有罪」
さまざまな台詞と、さまざまな殺気が向かってくる。
「あべしっ」
「ひでぶっ」
「おわたっ」
気絶した俺を引きずって野獣(♀)三匹が風呂を上がる。
素っ裸の俺の両足と髪をつかんで引きずる。
対空速射砲は発射されないままだが、射手の意識が無いのだ。
いつの間にか服はきせられていた。
もうお婿にいけない。
受けた怪我を治さないまま、公衆浴場を後にする。
気絶中にあのオタクがまた出てきた。
「パート2乙。続編希望も込めて5P。提供は美少女神でした。」
いつかぶん殴る。




