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第45話

いつもは少しのダメージでも俺が治していた。


そもそもダメージをくらうような無茶はさせなかった。


なので回復薬などは俺が渡した薬草や毒消草しかもっていない。


三人はろくな回復手段を持っていない。


こんなところにパーティの弱点があったんだ。


俺がやられたらおしまい。


深層階で俺がやられたら最後、うちのパーティは地上に戻りつけない可能性が高い。


考えてもみなかった。


回復系か、空間系の魔法使いをもう一人準備するか、上級の回復薬を準備しておかないといけなかった。


他にそんなパーティ見たことは無いが。


特に回復系が複数いるようなパーティは。


一般的なのは前衛系が4、5人。


弓使いなどの後衛系が1人ってとこだ。


魔法使いが一人居れば良い方で、居ないパーティのほうが圧倒的多数だ。


だから皆ダンジョンの深層階には複数泊で薬草や回復薬を大量に準備して入る。


たいてい十階層より深い階層に入るパーティはダンジョン泊だ。


それに、複数パーティが同盟を組んで潜ることもある。


レイドというらしい。


俺のこのパーティでの役割。


攻撃魔法使い、回復魔法使い、アッシー君、財布、荷物持ち、ストレス発散対象。


兼ご主人様。




詠唱が必要だったら俺は、たぶん月単位で回復できなかっただろう。


それどころか多分気絶したまま魔物に殺されていたかもしれない。


なにせ、顔はアンパン○ン並に腫れ、口内は切れ、アゴは骨折れてたんじゃないだろうか?


切り傷打撲は全身で動けないといった具合だ。


硬い岩の地面でマウントポジションで気絶するほど殴られたのだ。



俺が気絶から目を覚ますとさほど離れていない右側でイルが焚き火をしていた。


少し離れた左側では、ヒルダがサミーに説教中のようだ。


ボソボソと声が聞こえる。


身体が動かないのでそれ以上は分からない。


気配察知では近くには魔物は居ないようだけど。


[中級回復]を無詠唱で発動する。


ようやく生き返れた。


「イル?」


イルの方に顔を向け、他の二人に聞こえないように呼びかける。


「お気づきになられましたか。」




「ご主人様がいないと何もできないということがわかりました。」


イルが俺の看護を装って、濡れ手ぬぐいで額を拭きながら小声で話しかけてくる。



「俺が居なくても二十階層までたどり着けたじゃないか?」


イルにだけ聞こえるように小声で答える。


「灯りも無ければ、回復も、地上への帰還手段も、戦利品の運搬手段も何も無い。

 ただ到達するだけならできましたけれども。」


経験値だけ、到達地点だけなら、なんとかなるらしい。


ヒルダとサミーに見えないようにこっそりキスをするのは止めて欲しい。


また、死に掛けたらどうしてくれる?


「こちらにご主人様がいらっしゃらなければ、私達はこのダンジョンの餌になっていたことでしょう。」


そりゃそうだ。


撤退手段も無しに、自分達の分不相応な階層まで来たらそうなるだろう。


それ以前にこちらにいらっしゃったせいで、俺はダンジョンの餌になりかけたんだけど、それについてはおいておこう。


「なんでここに?」


ヒルダによるサミーへの説教は熱を帯びているので、起きるに起きれない。


標的が俺に来ることは目に見えている。


「今朝方サミーが暴走しまして。」


聞くところによると、昨日は三人で散々飲み食いをして、俺のネタで盛り上がったらしい。


ネタが悪口や、あのことについての根掘り葉掘りでないことを願うだけだが。


金が尽きたので宿に帰って、俺の部屋に忍び込もうとした奴も居たらしいが、鍵と閂のおかげでそれはできなかったらしい。


朝、いつまでも起きてこない俺を襲撃するためにイルとヒルダが部屋に来たらしい。


扉を蹴破って。


で、珍しくサミーがそれに参加してこないと思ったら俺の書置きだ。


イルとヒルダの二人でサミーを問い詰め、全て。


全てを聞き出したらしい。


ということは。


全部知られてしまったらしい。


「何を聞いた?」


「「サミーには、ショック療法を受けてもらいます」とか。」


「「俺には君が必要だ、大切だ。」とか」


「「ごめんなさい。」とか」


サミー側の感情まで全部全部取り調べたらしい。


どこの敏腕刑事だよ。


「そっ、そうなんだ。」


俺の逃避行動が無ければ取り調べは無かったはずなので、俺のせいで俺の恥部が拡散されたのだ。


ううぅぅぅぅぅぅ死んでしまいたい。死にたくないけど。


落ち込んでる隙に、ヒルダとサミーの居る方から、魔物の気配がする。


俺が注意する前に、二人に瞬殺される。


二人とも素手だよね? しかも右拳の一撃だったよね?


ここ何階層だったっけ?


「今とても、困ったことになっています。」


イルがもうお手上げとでもいうような感じで言って来る。


「サミーは自分のせいでご主人様が自殺でも図ったように思っています。」


うっ、そんなことは無いんだが、現状だけ見ればそうも見えるか。


「ヒルダは自分の全てであるご主人様をそこまで追い込んだサミーに怒り心頭です。」


私の全てですって宣言してたしな。


「実は、私もいろいろ溜まってるんです。」


え?


「サミーを解放したそうですね?」


はい?


はい。それも聞き出したのね。


「サミーを恋人にしようとしたそうですね?」


はい。告白しましたが。それ以上は止めていただけませんか?


「サミーに『ごめんなさい』と言われましたね?」


もう勘弁してください。


このまま深層階に突っ込んでいきたくなってきました。


「ご主人様は、女心が分かっていません。」


は?


なにを言ってるの?


だめなの。いまは何を言われてもネガなの。


「サミーは天邪鬼です。自分の想いを素直には言えない娘なのはご存知ですか?」


は?ただのツンツン、デレ無しの娘ですよね?


俺の心も切り裂く『切り裂き魔』ですよね。


「あの娘は商館にいる頃からずっとそうなのですが。」


イルは、商館にいるころのサミーのことを教えてくれる。


「あの娘は、あの陸人族の経営する商館ではロクに口も利きませんでした。

 同じ奴隷でも陸人族や、他種族でも♂とは口を利きませんでした。

 数少ない森人族や獣人族の♀とほんの少し口を利く程度でした。」


そうだったんだ。


「奴隷のくせに陸人族の商館の男には、触れさせることすらしませんでした。」


潔癖か重度の対人障害だな。


「なのにご主人様には、普通に口を利くどころか、抱きつく、キスする、腕枕する、一緒に風呂に入る、寝込みを襲う。食いちぎる。殴る蹴る、なんでもありです。」


よく考えたら何してくれてんねん。


「それに、狼や犬の獣人は特にそうなのですが、一度決めたリーダーや恋人や主人には大層忠実なの

 です。

 素直じゃないサミーはそれを認めていませんでしょうが、周りから見ればバレバレです。

 あれは、好きな人しか見えなくなっている乙女そのものです。」


そうなんですか?


対人スキルのない私には分かりませんが。


違うんじゃないでしょうか?


「ご主人さまが言われた「ごめんなさい」は、彼女に限っては「ありがとうよろこんで」と同義語と

 思っていただいて結構です。」


いやいや言いすぎでしょう?


「根性無しの上に意気地なしの朴念仁で、甲斐性無しでどうしようもないご主人様ですね。」


おいこら。暴言が過ぎるぞ?


甲斐性はあるだろ?三人も養って、飢えさせてないぞ。多分。


たしかに奴隷契約時に言動の自由についてはかなりゆるくしたけど。


「ご主人様がご自分をどう思っているかは大体想像がつきますが、サミーとヒルダはご主人様にメロ

 メロです。

 奴隷契約を解くとか言えば、捨てられると勘違いして暴走するレベルです。」


今回のも暴走ですか?


「ヒルダは、命の恩人ですからもちろんですが、サミーの場合は精神の恩人です。」


あなたはどうなんですか?


「サミーから聞きました。」


問い詰めたとか聞き出したが正しそうだけどな。


「トラウマになる全てを取り払うとおっしゃったそうで。」


なにからなにまで知られてしまったのね。


だれか助けてください。


逃げてきても俺のトラウマが追ってきます。


虎と馬の獣人じゃないだろうか。


しかしどうやって俺の居場所が?


「奴隷でいる限りパーティを外れても、なんとなくご主人様を感じてられますから。」


奴隷はご主人様の方向や距離がなんとなくわかるらしい。


すげぇな。


「それにサミーの鼻は特別効くようです。特にご主人様には。」


はあ、そうですか。加齢臭はまだだと思うんですが。


でも、ひどい扱いを受けてる奴隷は主人が居ないのを見計らってサボる理由にならないのか?


と思ったら、奴隷間にも格差があって、筆頭とか主席とか一番とか長とか呼ばれる奴隷が奴隷を統率しているらしい。


軍隊と一緒か。


ピラミッド方式で管理する。


上位奴隷(士官)が中位奴隷(下士官)を統率する。


中位奴隷(下士官)が下位奴隷(兵卒)を統率する。


筆頭は部隊長か。


どこぞの軍隊だな。





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