表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◤◸ある異世界は劇場で◹◥― 出演:勇者|演出:魔王 ―  作者: Awa_Pika


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/8

第六演目   ◤◸僕、”勇者”になりました◹◥ ※

 ――昔の夢を見た。

 ()がまだ、剣術学校に通っていた頃の話だ。

 当時の僕は孤児院を飛び出し、ギルドで生計を立てていた。

 稼いだお金の一部を使って、剣術を学ぶ。

 同じ年の子達より、実力はあったと思う。

 そのせいか、親しい友人と呼べるほど仲良くなった相手はいない。

 それでも、まだそこにいることを許されていた。


 ――事件が起こったのは、剣術を習い始めて3年が経つ頃。

 僕に嫌がらせをする子達がいた。

 僕は、関わらない方がいいと判断。

 どんな嫌がらせも、片手間であしらっていた。


 ある日のことだ。

 水中訓練が終わり、男子だけの教室。

 例の嫌がらせ君達が、妙なことを言い出した。

 

「お前、○○ちゃんのパンツ盗んだだろっ!」

 ガサゴソッ!

「あ、コイツの棚にありましたよ。キャプテン!」

「キャプテンッ!コイツ、先生に言いつけて退校にしてもらいましょうよ!」


 何を言っているんだろう……?

 心からそう思った。


 ……すると、女子達が着替えを終え帰ってきた。

 女子の中の一人が泣いている。


「テメーらん中に、ゴミ野郎がいるよなぁ?出てこいっ!私がぶん殴ってやる」


 女子の一人は怒っていた。

 ……なるほど。

 泣いている子のパンツが盗まれて、代わりに犯人を捜しているのか。

 ならば、目の前の嫌がらせ君達を吊るしあげればいい。

 それで、この騒動は解決するだろう。

 僕は犯人を突き出そうとした。

 ――しかし、その前にキャプテンと呼ばれている子が声をあげた。


「それなら、()()()が盗んでたぜ?俺たちがさっき取り返したんだ」

 怒っている女子が睨みつけてくる。

「テメェか?」


 ここで僕には疑問が浮かんだ。

 弁明とともに、訊いてみることにした。

 

「僕じゃないよ――第一、何故()()()()()をする必要があるんだ……?」


 周囲がざわつく。

 すると、キャプテン君が応えてくれた。


「そんなのっ!……み、見たいからだろっ!」

 

 ――みたい……か。

 ふむ。

 雰囲気的に、まだ僕が疑われている……か。

 このままだと、犯人にされてしまうな。

 気は進まないが、変に間違えられても困る。

 ……しょうがないな。

 

 ――僕は、証拠を提示した。

 

「もし僕がパンツを見たいと思ったなら、そんなことはしないよ――

()()()()()いいだけだからね」


 ザァンッ!

 その瞬間、教室にいるメイト以外の服が切り飛ばされる。


「――これで、僕が犯人じゃないと分かったろう?」

 

「きゃ――――――――っ!」


 各地で悲鳴があがる。

 次の瞬間、涙目で殴りかかってくる女子がいた。

 僕は当然それを躱した。

 

「何をっ……ああ、服のことなら謝るよ。ごめんね……弁償もするよ。」


 教室が静寂に包れる。

 あんなにうるさかった嫌がらせ君達も、唖然としたまま動かない。

「もらうね」

 僕は嫌がらせ君達からパンツを取り返し、うずくまっている持ち主に返した。


「はいコレ。ごめんね、君を巻き込んでしまって……」


 正直、僕以外に嫌がらせが飛び火するとは考えていなかった。

 女の子は泣かせてはいけないと。

 そう、孤児院で教わったのに……

 これからは、もう少し気をつけることにしよう。


 ゴ――――ン!ゴ――――ン!


 次の訓練の鐘が鳴る。

 僕は遅れないように教室を後にした。


   ○○○

 

 次の日、学校の様子は変わっていた。

 なんだろう……向けられる視線が冷たい。

 僕は何があったのか、周りに聞いてみた。


「ねぇ、君。何かあったのかい?」

 返事はない。

 一人、また一人と僕から離れていく。

 周りの様子がおかしいのは明らかだった。

 気になった僕は、手当たり次第に声をかけた。


 ……しかし、誰とも”会話”にはならなかった。


 ――その日から、僕と話してくれる生徒はいなくなった。

 次の日も。

 その次の日も。

 どんなに話しかけても、返事はない。

 日に日に視線も冷たくなっていった……


 そんな状態で数日が経過したある日。

 先生から、こんなことを告げられる。


「メイト・ペングル。他生徒の総意により、其方を退校とする」


 ――ここで僕は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と学んだ。

 ……僕は嫌だった。

 人に迷惑をかけるのも。

 あんなに冷たくされるのも。

 こうして僕は、剣術学校を離れることになった……


 ……。

 

 ――なら、一人で生きていけばいいだけじゃないか。

 結論が出た。

 食料確保、調理、寝床の設営。

 うん。

 全部できるな。

 剣術学校で学びたかった事は大体習得した。

 あとは実戦形式の方がいいかもしれない。

 こうして、僕は集落を後にしたんだ。


    ○○○


 ――夢から覚めた。

 ……と、思ったのだが。

 ここは……?


 ……夜?

 にしては明るく、青色に輝いている。

 足元を見ると、鏡のように星空を反射していた。

 すごく綺麗だ。

 見惚れていると、光の霊のようなものが前に出現(あらわ)れる。

 光の霊は言葉のようなものを放つ。

 

「あなたは『勇者』になりました」


 勇者……?

 そういえば100年周期くらいで魔王が誕生するって聞いた覚えがある。

 勇者は魔王を倒す役割……だったかな?

 光の霊は手のようなものを広げる。

 

『あなたの”()()”の全てを禁止します』


 何を言っているんだ……?

 僕は会話を試みる。

「聞いてもいいかな……君は……」


 ブォゥンッ!

 ……


 ――勇者は元居た場所で目を覚ます。

 時は、魔王誕生の2日前。

 ここは……?

 師匠の声がする。


「おい、いつまで寝ぼけてやがる」

 蹴られて意識がはっきりする。

 夢……?

 いや、後半のアレは夢にしては……

 ……。

 ”勇者”……か。

 今起こったことを、師匠に伝えてみようかな。


「師匠。僕、”勇者”になりました」

「あ?なに言ってんだ?」

 

「師匠。僕、”勇者”になりました」

「聞こえてねぇわけじゃねぇよ!……おう、そうか。お前が……」


 師匠の顔つきが変わる。

 僕はそんなこと気にも留めず、師匠に問う。


「師匠。勇者って魔王を倒せばいいだけですか?」

「うん?ああ――だが、魔王は並の魔族とはわけが違う。まだお前にゃ無理だ」

「分かった――師匠の言う基準は当てにならないから、とりあえず倒してくるよ」


 僕は、魔王の城へ向かう準備を始める。

 後ろで師匠が何か言っているが、無視をした。

 すると、師匠に蹴り飛ばされた。


「オイ、クソ弟子……無視してんじゃねぇぞ?大人の話はちゃぁんと聞くもんだって教えたよなぁ!」

「確かにそうですね。僕が間違えました。で、なんでしょうか?」

「ちっ……まず、なんで一人で行こうとしてる?」


「そのほうが――()()()だから」


 師匠はため息を吐いた。


「あのなぁ。代々、勇者は()()()()()()()()魔王城に向かう決まりがあんのっ!」

「いや、必要ないよ。一人でいい」

「ダメだ。拒否するなっ!そろそろお前も、俺以外と関わる時が来たんだよ」


 確かに、6年くらい師匠以外と会話はしていない。

 会ってすらいない。

 ――なぜか?

 する必要がないからだ。

 まあ、師匠ともする必要はないのだが……


 「そうだっ。勇者になったんなら、勇者の『能力(スキル)』がもらえるはずだが――使えるか?」

 「『能力(スキル)』?……ああ、これのことかな」


 能力がある感覚を信じ、使用してみる。

 すると、勇者の前にウィンドウが開いた。




 挿絵(By みてみん)


 デンッ!

 ――――――――――あなたは勇者です。――――――――――

 

 デンッ!

 ――――――――勇者の固有魔法『驚』を習得しました。――――――――


 へぇ。驚魔法……ね。

 よく分からないな。

 他にも色々書いてあるようだ。

 この宙に浮く半透明な紙に触れれば、操作できるのか。

 勇者はウィンドウを触れる。


 デンッ!

 ――――――――”聖王”に王城へ招待されました。――――――――

 デンッ!

 ――――――明日の12時丁度、王城内部に転移します。――――――


 まずいな……。

「師匠……本当に一人で魔王討伐してはダメですか?」

「観念しろ。それに、さんざん会話の仕方は教えてやっただろ」

「師匠の言う事は半分しか信じてませんので」


 蹴り飛ばされた。

 僕も受け身が随分と上手くなった。


 ――人と関わるしかない……

 敬語の使い方、会話の仕方、女性との接し方。

 確かに師匠から教わったような気がする。

 

「お前、女に興味ありそうだったじゃねぇか。それとも、ビビったのか?」


 僕が、ビビっている……か。

 確かに、少しは過去に失敗したかもしれない。

 僕と関わったら、周りを不幸にしてしまう。

 そう思い、なるべく人との接触を避けてきた。


 ――だが、今は違う。

 僕は同じ失敗はしない。

 実戦経験が一番学びを得られることを知っている。

 どうせいつかは、人と関わらなけらばならない。

 いい機会……なのだろう。

 


「そうだね。女性がもしパーティにいたら、みんなを抱いてくるよ」

「お……おう。そうだ……その息だっ!パーティメンバー全員抱いてこいっ!」



 ――この時、”勇者”は知らなかった。

 

 ()()に、ハグする以外の意味があることを……。


 師匠と呼ばれる男が、()()()()にエッチな話をしていたことを……。

 

 ……欲のない野生の少年。

 ――それを面白がり、どんどん”()”が”()()()()()()”していったことを――

 

 

泡でございます。

今回から、勇者編が始まります。

一応、ダブル主人公システムでいこうかなと考えております。

ちょっと物語の本筋から外れて進行が遅れますが、

必ず面白くしますので、ご愛嬌です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ