表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◤◸ある異世界は劇場で◹◥― 出演:勇者|演出:魔王 ―  作者: Awa_Pika


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/8

第七演目   ◤◸対魔王討伐部隊”勇者パーティ”◹◥ ※

 ――時は、魔王誕生の1日前。

 勇者は元居た場所から、忽然と姿を消した。

 そして、勇者は頭から落下した。


 ゴテンッ!


 痛い。

 王城内部って書いてあったけど、まさか空中とはね……

 さて、どうしようか。

 少し悩んでいると、後ろから足音がした。

 咄嗟に樽の中に身を潜める。


「こちらで王がお待ちです。アードラ様」

「分かったわ」


 二つの足音が、通り過ぎていく……

 なるほど、王はこの方向にいるのか。

 というか何故、僕は隠れたんだ?

 事情を説明して、案内してもらえばいいだけじゃないか。

 すると、また後ろから足音が近づいてくる。


「神様。王はこちらでございます。足元にお気をつけください」

「はいっ!お気遣いありがとうございますっ♪」


 ――気が付くと、僕は反射的に樽の中にいた。

 足音はどんどん遠ざかっていく……

 

 何をしているんだ……僕は。

 ……いや、いままで散々人を避け続けてきた癖か。

 よし、今度人に会ったらその人に聞こう。

 癖で足音を殺し、王のいる方向へ向かい始める。

 その道中の曲がり角。

 

 ゴチンッ!


「……ッ⁉」

「あ痛~☆」

 

 ……しまった。

 人にぶつかってしまった。

 どうする……

 どうするではない。

 まずは、謝罪をすべきだろう。


「……ごめんね。大丈夫かい?立てるかな?」

 

 勇者の6年ぶりの他人との会話であった。

 ぶつかった少女は立ち上がり、不思議そうにこちらを見ている。


「わぁ~、全然気が付かなかったよ!こっちこそごめんね☆」


 とりあえず、話しかけてはみた。

 しかし、どんな言葉を返せば自然な会話だろうか?

 師匠と同じように喋るのは悪いだろうし。

 そうこう考えていると、少女は早足にここを去ってしまった。


「あ!急いでるんだった。ぶつかっちゃってごめんね☆ほぃではっ!」

 ビュンッ!


 ……。

 なんだ。

 僕は全然人と喋れるじゃないか。

 人と上手く関われるようになっている。


 ――よし、聖王のところに行こう。


 勇者は王のいるであろう方角へ駆け出した。

 ……

 迷路のような廊下を進むと兵士らしき人がいた。

 僕は勇者になったんだ。

 王の居場所を聞いてみようか。


「僕は勇者です。聖王はどこですか?」

「何?勇者……?では、”勇者の証拠”を見せて頂けますか?」


 来た……。

 ここで自然な返答をすればいいだけだ。

 うん、大丈夫。

 

「証拠って何を見せればいいのかな?」

「勇者の証拠と言えば、『驚』の魔法に決まっているだろう」


「ああ、驚の魔法ね……」

 驚の魔法……?

 使えるらしいけど、やり方が分からないな。


「分からないよ」


 兵士の目が鋭くなった。

 ……まずいな、会話が上手くいっていない気がする。

 でも、僕も長年野生で生活して来たんだ。

 困った時の対処法くらい、いくつも持っている。

 自分では対処不能な事態に陥ったときは……

 

 ――よし、逃げよう。

 

 タッタッタッ!

 ――勇者は逃げ出したっ!


「城の中に賊が入り込んでいるぞぉぉ――!!!」

 兵士が大声をあげると、続々と人が集まってくる。

 ……なにかがおかしい。

 何故、僕は追われているんだろう……

 やっぱり逃げるのは間違いだったかな。

 ちゃんと話をしよう。

 師匠も言っていた。


「人と会話する時は相手の心の内を読め」

 と。

 さっきの兵士は、僕が賊に見えていたのか。

 ならばそうではないと、そう伝えれば解決するかな。

 勇者は先ほどの兵士の前に、忽然と姿を現す。


「僕が間違っていたよ。兵士さん。僕は賊じゃない――勇者だ」

「捕らえろぉ――――!」


 勇者は、迫りくる手を全て回避した。

 そのまま誤解を解く。


「驚魔法はちょっと使えないけど、僕が勇者なんだ。信じてほしい」

「コイツ……全然捕まらないぞ……!」

「そんなに遅かったら、僕は捕まえられないよ。それと、聖王のところに案内してほしいな」

「ふざけるな!王に何をする気だっ!」

「何をする気もないし、帰っていいなら僕は帰るよ」



 ザッバ――――ンッ!



 突然、何かが見えたと思った瞬間、身体が吹き飛んでいた。

 壁にめり込みながら、状況を確認する。

 そこには、巨大な水球を浮かせる、魔法使いらしき少女が立っていた。




 

 挿絵(By みてみん)


「城に入り込んんだ賊って、()()()よね?」

「はい、手を貸して頂き感謝します。アードラ様」


 ……驚いたな。

 まさか、僕が反応できないとは思わなかった。

 この子、相当に強い。

 なんなら、師匠よりも強いんじゃないか?

 僕は、壁から抜け出して弁明を続ける。


「えーっと……君は話が通じるのかな?僕が勇者なんだけど」

「は?魔王が誕生したなんて話、聞いてないわよ。悪あがきはやめてお縄に付きなさい」

 

「困ったな。君も会話にならないのか……」

「会話ができないのはアンタでしょ?そもそも()()()()()()が古いのよ」

 

 ダメだ……怒っている。

 女の子を怒らせてしまった時は、褒めればいい。

 ……師匠は、そう言っていたけど……

 半信半疑だったから、試してみようかな。

 

「君はなんで怒っているんだ?せっかくの可愛い顔が勿体ないじゃないか」

 

「なっ……//////――はぁ?!」


 あ、少女の顔が赤くなった。

 師匠の言ったことだけど、これは正しいみたいだ。


 「なんなの……!?アンタ何がしたいのっ⁉」

 「……何がしたい……か。うーん……帰りたいかな」

 

 「はぁ?」

 

 ドンッ!

 「あーいたいた。ちょっと借りてくからなー」

 

 「え?」

 気づけば、僕は鹿のような何かに担がれていた。

 「えっ」

 怒っていた少女も担がれた。

 「ちょっと!?」


 ――そのまま僕たちは、王城をものすごい勢いで駆け抜けた。


   ○○○


「よく来たのぉ~フォッフォッフォッフォッ!」


 目の前には、すごい顎鬚を生やした老人がいた。

 全身を赤と白の衣装で包み、玉座にて笑う。

 

 ――ハイリヒ王国国王 兼 聖王”コルニウス・デア”。

 

 王の後ろには、僕達を担いできたムキムキの鹿が腕を組んでいる。

 なんだあの生き物は……二足歩行……?

 僕の右には、怒っていた子。

 城内でぶつかった子。

 あとは……さらにもう一回り小さな女の子がいた。

 この子達がパーティメンバーなのか……?

 状況を整理していると、聖王が長い髭を触りだす。

 

「では早速本題に入るがの~、明日――魔王が誕生してしまうのじゃよ」

 

「はいっ⁉」

 怒っていた子が声をあげた。


「待って下さい聖王。じゃあ、()()魔王が生まれ始めるの?」

「それは、また100年ほど経ってみんと分からんのぉ~」

 

「じゃあ何故、前周期の魔王は()()()()()()()の?もう魔王は生まれてこないんじゃ……?」

「生まれちゃうもんはしかたないじゃろうて。勇者も既に決まっておるわけじゃし」


 聖王に視線を向けられる。

 周囲からも視線が集まる。

 僕はどうすればいいんだろうか……

 すると、怒っていた子が信じられないものを見る目で……


「アンタが……ほんとうに勇者……?」

「うん。ようやく理解(わか)ってくれたかな?」

「そして、今日ここに集められたのが、対魔王討伐部隊”勇者パーティ”というわけじゃ」

 

 ……やはりそうなのか。

 この子達と魔王を倒しにいく……?

 でも、僕以外女の子じゃないか。

 この子達を守りながら、魔王を倒せるのだろうか?

 やっぱり一人の方が……

 

「ほれ、皆自己紹介せんか。まずは、”フルス・アードラ”其方からじゃ」


「……はぁ、まだ状況に納得いってないんだけど……

 深海階級(アビスクラス)魔法使い(メイジ)、”フルス・アードラ”よ。……よろしく」

「次は、”ルシュネ・キルシュ”!」

 ぶつかった子が手をあげ、自己紹介を始める。


「は~い☆極寒階級(クライオクラス)盗賊(シーフ)の”ルシュネ・キルシュ”だよー!ルシュネはね~、生き物の捕獲とかが得意かな~☆あとは隠密行動とかも!魔王も捕まえれそうだったら、捕まえてみたいかなぁ☆これからよろしくねー!」

 魔王の捕獲か……

 いや、どう考えても危険だ。

 後で説得してやめてもらおう。

「では、神様。……ではなく、”ホルン・アイン”!」

 一番小さい子か。


「はいっ!神様ですっ!よろしくお願いします」

 …………。

 ……神様?

 何を言っているんだこの子は。

 でも、自己紹介の仕方は勉強になった。

 このぐらい短くてもいいのか……

「では最後に、”メイト・ペングル”!」


 僕の番だな。

 えーっと、ギルドの階級(ランク)は確か……

「”メイト・ペングル”――勇者。砂漠階級(デザートクラス)。仲良くしてもらえると嬉しいかな」

 

「……は?」

 フルスが聖王を睨みつける。

砂漠階級(デザートクラス)の勇者?それで魔王が倒せるの?聖王」

「問題なしじゃよ。」


「でも――」

 昔の階級(ランク)だから実力が心配されているのか。

 なら――

 

「大丈夫。少なくとも、()()()()強いと思うよ」

 

「……へぇ~…………。随分、自信があるようね……」


 あれ?また怒っている……?

 僕が起こらせてしまったのか……?

 ならここは、師匠の教えを使って――


「決闘しなさい勇者っ!アンタがどれ程の者なのか、みせてもらおうじゃない」


「ちょっと待ってよ。それじゃあ、君の()()()()が台無しになっちゃうじゃないか」

 フルスは、にっこりと笑顔になった。

 しかし、なぜだろう。

 笑っている気が感じられない。


「勝てる気でいるの?いいわよ。叩き潰してあげるから」

「僕は君を傷つけたくないんだけどな……」


()()()()()つけてみなさいよ」

 

「……?傷つけたくないんだ――分かってもらえるかな?」

 


「聖王……場所借りるわよ」

「う、うむ……」

 

 聖王が圧されている……?

 これは良くない流れだ。

 このままだと決闘することになってしまう。

 もちろん、そんなことはしたくない。

 どうしようか……

 戦いたくないって言っても話が通じないしな……

 よしっ――


 


 タッタッタッ!

 ――勇者はその場から逃げ出したっ!

 

本日の演目、お楽しみいただけましたでしょうか。


それでは――最後に、皆様からの拍手を。

……の代わりに、

評価・ブックマークという形で応援いただけましたら、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ