第七演目 ◤◸対魔王討伐部隊”勇者パーティ”◹◥ ※
――時は、魔王誕生の1日前。
勇者は元居た場所から、忽然と姿を消した。
そして、勇者は頭から落下した。
ゴテンッ!
痛い。
王城内部って書いてあったけど、まさか空中とはね……
さて、どうしようか。
少し悩んでいると、後ろから足音がした。
咄嗟に樽の中に身を潜める。
「こちらで王がお待ちです。アードラ様」
「分かったわ」
二つの足音が、通り過ぎていく……
なるほど、王はこの方向にいるのか。
というか何故、僕は隠れたんだ?
事情を説明して、案内してもらえばいいだけじゃないか。
すると、また後ろから足音が近づいてくる。
「神様。王はこちらでございます。足元にお気をつけください」
「はいっ!お気遣いありがとうございますっ♪」
――気が付くと、僕は反射的に樽の中にいた。
足音はどんどん遠ざかっていく……
何をしているんだ……僕は。
……いや、いままで散々人を避け続けてきた癖か。
よし、今度人に会ったらその人に聞こう。
癖で足音を殺し、王のいる方向へ向かい始める。
その道中の曲がり角。
ゴチンッ!
「……ッ⁉」
「あ痛~☆」
……しまった。
人にぶつかってしまった。
どうする……
どうするではない。
まずは、謝罪をすべきだろう。
「……ごめんね。大丈夫かい?立てるかな?」
勇者の6年ぶりの他人との会話であった。
ぶつかった少女は立ち上がり、不思議そうにこちらを見ている。
「わぁ~、全然気が付かなかったよ!こっちこそごめんね☆」
とりあえず、話しかけてはみた。
しかし、どんな言葉を返せば自然な会話だろうか?
師匠と同じように喋るのは悪いだろうし。
そうこう考えていると、少女は早足にここを去ってしまった。
「あ!急いでるんだった。ぶつかっちゃってごめんね☆ほぃではっ!」
ビュンッ!
……。
なんだ。
僕は全然人と喋れるじゃないか。
人と上手く関われるようになっている。
――よし、聖王のところに行こう。
勇者は王のいるであろう方角へ駆け出した。
……
迷路のような廊下を進むと兵士らしき人がいた。
僕は勇者になったんだ。
王の居場所を聞いてみようか。
「僕は勇者です。聖王はどこですか?」
「何?勇者……?では、”勇者の証拠”を見せて頂けますか?」
来た……。
ここで自然な返答をすればいいだけだ。
うん、大丈夫。
「証拠って何を見せればいいのかな?」
「勇者の証拠と言えば、『驚』の魔法に決まっているだろう」
「ああ、驚の魔法ね……」
驚の魔法……?
使えるらしいけど、やり方が分からないな。
「分からないよ」
兵士の目が鋭くなった。
……まずいな、会話が上手くいっていない気がする。
でも、僕も長年野生で生活して来たんだ。
困った時の対処法くらい、いくつも持っている。
自分では対処不能な事態に陥ったときは……
――よし、逃げよう。
タッタッタッ!
――勇者は逃げ出したっ!
「城の中に賊が入り込んでいるぞぉぉ――!!!」
兵士が大声をあげると、続々と人が集まってくる。
……なにかがおかしい。
何故、僕は追われているんだろう……
やっぱり逃げるのは間違いだったかな。
ちゃんと話をしよう。
師匠も言っていた。
「人と会話する時は相手の心の内を読め」
と。
さっきの兵士は、僕が賊に見えていたのか。
ならばそうではないと、そう伝えれば解決するかな。
勇者は先ほどの兵士の前に、忽然と姿を現す。
「僕が間違っていたよ。兵士さん。僕は賊じゃない――勇者だ」
「捕らえろぉ――――!」
勇者は、迫りくる手を全て回避した。
そのまま誤解を解く。
「驚魔法はちょっと使えないけど、僕が勇者なんだ。信じてほしい」
「コイツ……全然捕まらないぞ……!」
「そんなに遅かったら、僕は捕まえられないよ。それと、聖王のところに案内してほしいな」
「ふざけるな!王に何をする気だっ!」
「何をする気もないし、帰っていいなら僕は帰るよ」
ザッバ――――ンッ!
突然、何かが見えたと思った瞬間、身体が吹き飛んでいた。
壁にめり込みながら、状況を確認する。
そこには、巨大な水球を浮かせる、魔法使いらしき少女が立っていた。
「城に入り込んんだ賊って、コイツよね?」
「はい、手を貸して頂き感謝します。アードラ様」
……驚いたな。
まさか、僕が反応できないとは思わなかった。
この子、相当に強い。
なんなら、師匠よりも強いんじゃないか?
僕は、壁から抜け出して弁明を続ける。
「えーっと……君は話が通じるのかな?僕が勇者なんだけど」
「は?魔王が誕生したなんて話、聞いてないわよ。悪あがきはやめてお縄に付きなさい」
「困ったな。君も会話にならないのか……」
「会話ができないのはアンタでしょ?そもそも勇者なんて手が古いのよ」
ダメだ……怒っている。
女の子を怒らせてしまった時は、褒めればいい。
……師匠は、そう言っていたけど……
半信半疑だったから、試してみようかな。
「君はなんで怒っているんだ?せっかくの可愛い顔が勿体ないじゃないか」
「なっ……//////――はぁ?!」
あ、少女の顔が赤くなった。
師匠の言ったことだけど、これは正しいみたいだ。
「なんなの……!?アンタ何がしたいのっ⁉」
「……何がしたい……か。うーん……帰りたいかな」
「はぁ?」
ドンッ!
「あーいたいた。ちょっと借りてくからなー」
「え?」
気づけば、僕は鹿のような何かに担がれていた。
「えっ」
怒っていた少女も担がれた。
「ちょっと!?」
――そのまま僕たちは、王城をものすごい勢いで駆け抜けた。
○○○
「よく来たのぉ~フォッフォッフォッフォッ!」
目の前には、すごい顎鬚を生やした老人がいた。
全身を赤と白の衣装で包み、玉座にて笑う。
――ハイリヒ王国国王 兼 聖王”コルニウス・デア”。
王の後ろには、僕達を担いできたムキムキの鹿が腕を組んでいる。
なんだあの生き物は……二足歩行……?
僕の右には、怒っていた子。
城内でぶつかった子。
あとは……さらにもう一回り小さな女の子がいた。
この子達がパーティメンバーなのか……?
状況を整理していると、聖王が長い髭を触りだす。
「では早速本題に入るがの~、明日――魔王が誕生してしまうのじゃよ」
「はいっ⁉」
怒っていた子が声をあげた。
「待って下さい聖王。じゃあ、また魔王が生まれ始めるの?」
「それは、また100年ほど経ってみんと分からんのぉ~」
「じゃあ何故、前周期の魔王は誕生しなかったの?もう魔王は生まれてこないんじゃ……?」
「生まれちゃうもんはしかたないじゃろうて。勇者も既に決まっておるわけじゃし」
聖王に視線を向けられる。
周囲からも視線が集まる。
僕はどうすればいいんだろうか……
すると、怒っていた子が信じられないものを見る目で……
「アンタが……ほんとうに勇者……?」
「うん。ようやく理解ってくれたかな?」
「そして、今日ここに集められたのが、対魔王討伐部隊”勇者パーティ”というわけじゃ」
……やはりそうなのか。
この子達と魔王を倒しにいく……?
でも、僕以外女の子じゃないか。
この子達を守りながら、魔王を倒せるのだろうか?
やっぱり一人の方が……
「ほれ、皆自己紹介せんか。まずは、”フルス・アードラ”其方からじゃ」
「……はぁ、まだ状況に納得いってないんだけど……
深海階級の魔法使い、”フルス・アードラ”よ。……よろしく」
「次は、”ルシュネ・キルシュ”!」
ぶつかった子が手をあげ、自己紹介を始める。
「は~い☆極寒階級で盗賊の”ルシュネ・キルシュ”だよー!ルシュネはね~、生き物の捕獲とかが得意かな~☆あとは隠密行動とかも!魔王も捕まえれそうだったら、捕まえてみたいかなぁ☆これからよろしくねー!」
魔王の捕獲か……
いや、どう考えても危険だ。
後で説得してやめてもらおう。
「では、神様。……ではなく、”ホルン・アイン”!」
一番小さい子か。
「はいっ!神様ですっ!よろしくお願いします」
…………。
……神様?
何を言っているんだこの子は。
でも、自己紹介の仕方は勉強になった。
このぐらい短くてもいいのか……
「では最後に、”メイト・ペングル”!」
僕の番だな。
えーっと、ギルドの階級は確か……
「”メイト・ペングル”――勇者。砂漠階級。仲良くしてもらえると嬉しいかな」
「……は?」
フルスが聖王を睨みつける。
「砂漠階級の勇者?それで魔王が倒せるの?聖王」
「問題なしじゃよ。」
「でも――」
昔の階級だから実力が心配されているのか。
なら――
「大丈夫。少なくとも、君よりは強いと思うよ」
「……へぇ~…………。随分、自信があるようね……」
あれ?また怒っている……?
僕が起こらせてしまったのか……?
ならここは、師匠の教えを使って――
「決闘しなさい勇者っ!アンタがどれ程の者なのか、みせてもらおうじゃない」
「ちょっと待ってよ。それじゃあ、君の可愛い顔が台無しになっちゃうじゃないか」
フルスは、にっこりと笑顔になった。
しかし、なぜだろう。
笑っている気が感じられない。
「勝てる気でいるの?いいわよ。叩き潰してあげるから」
「僕は君を傷つけたくないんだけどな……」
「傷一つでもつけてみなさいよ」
「……?傷つけたくないんだ――分かってもらえるかな?」
「聖王……場所借りるわよ」
「う、うむ……」
聖王が圧されている……?
これは良くない流れだ。
このままだと決闘することになってしまう。
もちろん、そんなことはしたくない。
どうしようか……
戦いたくないって言っても話が通じないしな……
よしっ――
タッタッタッ!
――勇者はその場から逃げ出したっ!
本日の演目、お楽しみいただけましたでしょうか。
それでは――最後に、皆様からの拍手を。
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