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◤◸ある異世界は劇場で◹◥― 出演:勇者|演出:魔王 ―  作者: Awa_Pika


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6/7

第五演目   ◤◸ボクの”名”は……◹◥

 ——魔王に転生した日から"5日"が経過した。

 勇者パーティとの決戦の日は”()()”ということである。

 ——この5日間、ボクらがどんな対策をしてきたか……


 ——"何も()()()()()でした"。


 分かる。分かるよ。

 まじめにやれと。そう言いたいんだよね。

 でも聞いてほしい。

 

 ——”()()()()()()()”んじゃない。

 ——”()()()()()()”んだよ。

 

 何があったか、5日間を振り返ってみよう。

 まず、転生1日目に発生していた問題。

 ——普通に遭難している件について。

 そう、食料が無かったのだ。

 ——因みに、魔王は餓死しないらしい。

 ——飢餓感を味わいながら、魔力を消費し続けることでね……

 

 そんな状態で人を楽しませることなどできるわけがない。

 ——ゴードンはどうしたって?

 やってみたよ。頼んでみたよ?

 そんでもって()()も取ってきたよ?

 

 ”()()()()”。

 

 元一般男子高校生です。

 大型トラックほどの猪の調理法を、知ってると思うかい……?

 

 ”分かるわけがない”。

 

 ——え?ゴードンはどうしたって?

 焼いて、そのまま食らいついてたよ。

 この小さな口で同じ芸当をやれと?

 

 ……”無理”。

 

 ——ということで、ボクは2回目の『設定(キャラクリ)』をした。

 ボクの身の回りのお世話を全てしてくれる存在。

 名前がないと言うので、”執事といえば”の名前をもじってこう名付けた。

 

 ——”セワス・チャン”と。

 

 召喚前はミイラだったらしい。

 白髪を包帯で結んだ、何かを極めていそうな老人。

 白い燕尾服を着たその姿は、執事というより白衣を着た闇医者にしか見えない。

 彼が今、身の回りすべての世話をしてくれている。

 そのおかげで、この5日間無事に生き残れた。


 ——じゃあ、何も”できなかった”とは?

 

 うん。当然の疑問だ。

 それを詳しく語るには、これを知ってもらわなければならない。

 そう。


 あの時のように……

 

 

 ——セワスも”()()()()()”だったのだ……。


 

 ——————『設定(キャラクリ)』の能力について。—————— 

 

 ——”魔界”から”設定”に最も相応しい者が自動で選ばれる。

 ——()()()()()を消費し、設定・召喚を行う。

 ——()()()()()は、自分の魔力とは別に、最大魔力の半分程度の量で存在する。

 ——()()()()()が空になると、『設定(キャラクリ)』が一定値回復するまで使用不能になる。

 ——()()()()()は時間経過で回復する。

 ——魔王の呼び出したい位置に召喚できる。

 

 ——”()()()()()()”にして。

 

 ……。

 

 

 ——”()()()()()()()()”……。


 

 ゴードンを変態と罵った魔王。

 勇者一行に変態の集まりだと、嫌悪を示した魔王。

 ……。

 

 ——”ボクが変態だったぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!”

 

 少女(魔王)はこれを知ったとき、それは綺麗な土下座をしたそうな……

 そういう趣味かと勘違いされてたし……

 

 ——で。

 本題はここじゃなくて。

 ——”設定用魔力が空になると、『設定(キャラクリ)』が()()()()()するまで使用不能になる”。


 ——そう、ボクの設定用魔力が”()”なのだ。

 原因は、言うまでもない。

 ——”()()()()()()()。”なんて設定したゴードンに、8割近く魔力を持っていかれて。

 ——”魔王(ボク)()()()()()()()()()()()”と設定したセワスに、残りを全て搾り取られたのだ。

 そして、設定用魔力が一定値まで回復するのが、勇者パーティの出発の日なのである。


 ——これが、”何もできませんでした。”の理由である。

 

 最初に言ってほしかったよね……

 このぐらい魔力を消費します。

 よろしいですか?って……

 そもそもこの世界、”よろしいですか?”がないんだよね……

 

 ——少女(魔王)が理不尽耐性を獲得した頃、白い執事が現れる。

()()()。お食事の用意ができました。」

 白い執事は、高級フレンチ並に飾り付けられたステーキを運んでくる。

 

「本日のメニューは、

アイジヒボアのハチャメチャ盛~メチャクチャゴチャゴチャ焼き~

にございます。

すごく栄養価が高いと耳にしましたので、焼いてみました。

この神々しいまでに美しい色つやは、

そうっ!まるで魔王様のようでございます。」

 

 この見た目と、ギャップがありすぎる発言をするのがセワスだ。

 元々は釣りをしていたらしく、もちろん執事の経験などない。

 『設定(キャラクリ)』でスペックだけ与えられた結果、このそれっぽ残念執事が爆誕してしまったのだ。

 ——どうしてこの発言するやつから、こんなに美味しそうな料理が出てくるっ!

 くそっ!少女(魔王)は肉を口いっぱいにほおばった。

 

 ……そういえば、ボロ小屋(魔王城)の変化について語るのを忘れていた。

 ほぼ異世界辞書と化した自分の能力ウィンドウによると……

 ——このボロ小屋(魔王城)は、本当に”()()()”らしい。

 現在は、内装だけ城っぽい見た目になっている。

 

 ……小さくないか?魔王城。


 一間(ひとま)

 LとDとKはっ?

 すると、こんな記載もみつけた。

 

 ————魔王城は”()()()()()()”で、破壊・改変は不可能————

 

 ……あとはまあ、ね?

 ほら、別にこのままでも快適だからね。

 勇者が来た時、ベッドとかの生活感バレるやつはカーテンで隠そう。

 因みに、家具などはセワスが作ってくれた。

 ……ここで、1つの疑問が浮かぶかもしれない。

 

 ——なぜ、こんな一部屋のみで生活しているのか。

 

 ゴードンが言っていた。

「現在は”聖界”の”極寒区域(クライオゾーン)”と呼ばれる場所にいます。」

 

 と。

 ……今、”聖界”なんだ。

 外は地獄のような吹雪だけど、ここ”聖界”なんだっ。

 そもそも、魔王がいるの”魔界”じゃないんだっ!

 もちろんツッコんだ。

 ……なんでも、魔王は魔力が多すぎて、”魔界”から弾き出されてしまうのだとか……

 ——つまりは、住める場所がここ(魔王城)しかないのだ……

 

 完食して自分と会話をしていると、”魔界”から人工魔王(ゴードン)が戻ってくる。

 ゴードンは、創作(つく)られた魔王だからか、魔力を全力で抑え込めば、少しの時間だけ入れるようだった。

 ついでに表向きにはゴードンが魔王なので、魔王城(ここ)で暮らす準備をしてもらっていた。

 

 セワスがもう一人の主を迎える。

「お帰りなさいませ。()()()。」

 ゴードンが魔王の玉座に座り、応える。

「うむ。ところで、()()()。我より、勇者を楽しませる()()()()()があるのですが……」

 違和感を覚えた少女(魔王)は思わず発言する。

 

「なぁ、ちょっと待ってくれ。おかしいと思わないか?」

「これは、失礼しましたっ!魔王様に魔界での報告を忘れておりました!」

 ゴードンは不格好な土下座をした。

 前のボクを真似たんだろう。

 

 「……ふっ、いや、そうじゃなくて。」

 つい笑いがこぼれた。

 笑い……?

 ……そういえば、転生してから笑ったことなんてあったっけ?

 余命宣告だの、ふざけた情報だの。

 こんなのが続いてツッコミっぱなしだったな……

 あれ……?


 ——いつの間にか、素が自然に出せている。

 

 ——魔王キャラを演じなくても会話ができている。

 

 当然だが、元の自分をこいつ等は知らない。

 だからだろうか。

 誰も、ボクに「こうあってほしい」という像が無い。

 だから、無理に演じなくてもいい。

 とても喋りやすい。

 少女(魔王)は微笑み、違和感を伝えた。

 

「”()()()”だよ。魔王が二人もいるとごちゃつかないか?」

 ゴードンが何かに気付いたような表情をする。

「確かにそうですね……それでは、魔王様。ご芳名を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 ——あ。


 ボクも何かに気付いたような表情になる。

 ボクの名前……?

 鹿田 真面目(しかだ まじめ)ですが。

 でもこれは元の世界の名前だし……

 この世界のボクの名前……?

 ……。

 

 ——”ボク、名前ないわ”。


 さて、どうしようか。

 ……名前かぁ。

 ——魔王という()で。

 ——()()()()()()寿()()しかない女の子。

 蝉かぁ……蝉といえば、海外にこんな種類の蝉がいたな。

 十数年を地中で過ごし、殻を脱ぐ日をただ待ち続ける。

 そして、最後の一時(ひととき)だけを地上で生き、その羽を広げる。

 そんな、魔法のような蝉。

 

 ——()()()()()()()()()()()

 

 

「よしっ、ごーどんっ!」

 

 少女(魔王)は突然立ち上がる。

 そして、高らかに名を宣言した。


「ボクの名は、”ロルム・ツィカーデ”!これからは、魔王様禁止だっ!セワスもな!」

 

「御意にっ!」

「承りました。」


 ——やりたいように演じて(やって)みよう。

 ——偽りのない自分で。

 ——身を守る殻は必要ない。

 ——羽さえあれば、どこまでも飛んでいけるのだから……


 魔王ロルムか……

 うん。我ながらいい名前だ。

 でも、表向きには幹部ロルムになるのかな?魔王はゴードンだし。


 ——魔王が名前を宣言すると、ウィンドウに()()()()()が増えていた。


 ん?なんだこれ?

 ロルムは、特に何も気にしないまま、確認する。

 

 

 デンッ!

 ———————————魔王の名前が設定されました。———————————

 

 

 

 デンッ!

 ——————あなたは”魔王ロルム・ツィカーデ”になりました。——————

 

 

 

 デンッ!

 ————————”これより、()()()()()()()()します。”————————

 

 

 

 

「………………なぁ、異世界。」

 

 

 

「”()()()()()()()?”を聞けぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇええッ!!!!」

 


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