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◤◸ある異世界は劇場で◹◥― 出演:勇者|演出:魔王 ―  作者: Awa_Pika


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5/7

第四演目   ◤◸こんな”勇者一行”は嫌だ。◹◥

 ——『勇者』とはなんだろうか。

 それは、弱者のために強者を討つ存在。

 それは、魔王を倒す存在。

 それは、世界を救う存在。

 そんな感じのイメージでした。少し前までは……。

 

 デンッ!

 ————————勇者の情報について。————————


 ——勇者。

 ——男。

 ——十六歳。

 ——名は、"メイト・ペングル"。

 ——身長176cm。

 

 ここまではいい。問題はコレ。


 ————『パーティメンバー()()とえっちしたい。』と思っている。————


 事件ですか、事故ですか……?

 事故だし、事件だよ。ボクの心が撥ねられたよ。

 なんなんだ、この一文は。

 ——()()()を楽しませる……?

 ……嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。やりたくないぃぃぃぃぃぃ。

 

 突然、部屋の隅で丸くなった魔王に、ゴードンは戸惑う。

「魔王様?どうされたのですか?ご気分でも優れませんか?」

 初見じゃない体など忘れ、魔王は愚痴る。

「勇者がね……”クズ”だったんだ……最悪、”()()”とかならまだ救えたんだけどね……」

「人間とはそういうものです魔王様。それに勇者の情報には、まだ続きがございます。」

 ……続き?どうせろくでもないよ。

 この負の印象から勇者が逆転できるなら、弁護士が強すぎるよ。

 そうしていじけていると、ゴードンに猫のように持ち上げられ、椅子(棺桶)に座らせられた。

 ボクは、勇者のプロフィールの続きを渋々読み始めた。

 

 ——勇者の戦闘スタイルは、伸縮自由な糸を変幻自在に編み、それを凍らせて形を作り、剣にも盾にもして戦う。 

 ……へぇ。なんかカッコつけてるなぁ。

 ——魔法は氷、雷、驚の三属性を扱える。

 ……驚?

 ——九歳の時に、剣術学校で全生徒に嫌われ、居場所がなくなる。

 ……ん?

 ——そして、人と関わる事を避けるようになり、集落を離れる。

 …………。

 ——その後、誰に会う事もなく、サバイバルをしていた。

 ……おぉ、ワイルド。

 ——しかし、十歳になる日。彼に転機が訪れる。

 ……物語かな?

 ——”()()”と呼べる人物と出会ったのだ。彼はそれ以降、師匠と二人旅を続けた。

 ……うん。

 ——彼の師匠は”()()()()()”。度々、夜の街へに行っては、話を弟子に語った。

 ……うん?

 ——彼の中で、人は怖い。しかし、六年間聞き続けた桃色話に()()()が湧いていた。

 ……おい。

 ——その湧いた()()()を勇気に変え、師匠に「パーティメンバー()()抱いてこいっ!」と送り出された勇者の旅が……

 ——()()()()()………………


 ………………

 

「”今、始まるっ………………” じゃ、ねぇぇぇ――――――よっ!!!」

 鳴り上がる萌え声が、ボロ小屋(魔王城)内部に反響する。

 

 うまいこと言ったみたいなのやめろ、何も始まってないよ。むしろ終わったよ。勇者の性格が終わったよ。

 まず、どんな師匠だよ……。師匠のせいだから、勇者はわるくないから。ってならないからね?

 ……いや、でもなぁ。子供が悪い大人に誘拐されたかぁ。う――――――ん。

 そうこう悩んでいるうちに、ゴードンが話しかけてくる。

「魔王様、勇者は孤独だったようです。こんな勇者なら、楽しませてやってもよいかもしれません。」

 どこでノリ気なったゴードンっ!さっき、人間は”そういうもの”とか言ってたよね?

 というか人間に情とかあるのか魔王っ!

「わかったよぉ。やるよぉ。とりあえず、勇者を楽しませる方向でいく。他のパーティメンバーの情報もみせてくれ。」

 椅子(棺桶)に座ったまま、ゴードンに命じ、ウィンドウを操作させる。

 

 

 デンッ!

 ————————盗賊(シーフ)の情報について。————————

 

 ——盗賊(シーフ)

 ——女。

 ——十四歳。

 ——名は、"ルシュネ・キルシュ"。

 ——身長145cm。

 ——デバフ大好き盗賊(シーフ)

 ——デバフの付いた敵にデバフをつける。

 ——さらにつける。

 ——もっと漬ける。

 ——浸す。

 ——デバフで動けなくなり苦しんでいる敵を、鑑賞する。

 ——その後、漬けたデバフの量だけ致命を招くナイフで……

 

 …………。

「ゴードン、どう思う?」

「厄介ですね。本来、あまり苦しまずに消滅できるところを、苦しんで消滅することになります。デバフへの耐性をどれだけ鍛えれるかが、安楽死のカギになりそうです。」

 ……冷静な分析だね。

 ……。

 よし、えーっと。

 少女(魔王)は一旦冷静に考えてみることにした。


 ——コイツには、問題が()()ある。

 まず第一印象で、コイツと勇者とのラブコメして楽しい大作戦は無理そうだ。

 明らかに性格が悪く、恋愛に無関係すぎる。勇者は勇者で()()()()狙ってるしっ……


 ——そして、コッチが()()

 コイツと戦わせる魔族……というか勇者パーティにいるから、基本的に勇者との戦闘に配置する魔族が、”()()()()()()”ことになる。

 ”()()()”――――――――!!!——おかえり。

 いや、本当にどうしようね。『設定(キャラクリ)』でデバフ耐性付けたら、どうにかなるかなぁ。

 あれ?ボク今、プロフィール見てるだけだよね。なんでこんなに気疲れするんだろう。しかも、まだ半分だよ?

 魔王は、未来を見据えた判断を下した。


「ごーどん、次を見せてくれ。そいつは後にしよう。なんか疲れるっ!」

「御意にっ!」

 ゴードンは次の画面に切り替えた。

 

 

 デンッ!

 ————————魔法使い(メイジ)の情報について。————————


 ——魔法使い(メイジ)

 ——女。

 ——十四歳。

 ——名は、"フルス・アードラ"。

 ——身長144cm。

 ——水魔法を得意とする魔法使い。風・光属性も扱える。

 ——圧倒的な才を持って産まれたため、他人に期待できず、その分自分に期待する。

 ——魔法の発動が異常に早く、魔法使いとの決闘ではまず負けない。

 ——できない人間を煽るのが好き。見るのも好き。ついでに液体も好き。

 ——あとめっちゃ冷笑する。

 ——服を着ているように見えるが、魔法をそれっぽく纏っているだけで、

 ”実は()()()()()”。


 …………プロフィールって、後半にオチ付けないといけないものだったっけ?

 最初はまともなんだよね。なんかこう……途中から雲行きが怪しくなっていって。毎回オチが付く。

 あれ?人間ってこういう生き物だっけ。人間やめたから分からないや。


「ごーどん……次。」

「御意に。」

 

 

 デンッ!

 ————————僧侶(プリースト)の情報について。————————


 ——僧侶(プリースト)

 ——女。

 ——十歳。

 ——名は、"ホルン・アイン"。

 ——身長133cm。

 ——回復魔法と蘇生魔法を使えるパーティのヒーラー役。

 ——おもに蘇生魔法に長けており、ほぼ死霊術師(ネクロマンサー)のようにも戦える。

 ——通称”()()”。しかし、紛れもなく()()である。

 ——過剰に回復した時の快感が好きで、少しのダメージでも魔力を大量に消費して、”過剰回復(オーバーヒール)"する。

 ——ダメージを受けないと快感が得られないので、少しのダメージならわざと受けようとする癖がある。

 ——なお、本人に”()()”はない。

 

 ……。

 やっぱりそうだっ!謎が解けたっ!人間って、プロフィールでオチつけないといけないんだ!

 ……いやー。すっきりしたぁー。今日はゆっくり眠れるなぁ~。

 

「じゃ、ねぇぇぇ――――――よっ!!!」

 魔王は爆発した。

「今のところ、クズ・陰湿・露出・変人なんですがぁ⁉”ボクの勇者一行”これぇぇぇえ?」

 魔王は悔しかった。

 現実は厳しかった。

 こんな”勇者一行”は嫌だ。

 魔王はそう思った。

 でも、どんな現実でも受け止め、前に進まなくてはならない。

 ——だって、”何もしないと死ぬ”のだから。


 仏のような顔で、全てを受け入れている最中、ゴードンから一報が届く。

「魔王様、勇者パーティの情報はこれで全てですが、まだ()()あるようです。」

「まだあるの……?もういいよ。どうせ()()でしょ?わかってるよぉ。」

 このプロフィールを経て経験したこと。

 だんだん読み進める度に()()に向かう。

 ——その終わりにあるモノ?

 ”()()”がある以外に考えられない。


「ご覧にならないのですか?」

「いや、みる。」

 どのみち、魔王に選択権などないのだ。

 

 

 デンッ!

 ——————あなたの寿命は残り7日です。——————


 あれ?もう知ってる情報だ。


 デンッ!

 ——————勇者パーティが旅立つのは6日後です。——————


 

 魔王は棺桶を叩き、こう叫んだ!

 

 

 バンッ!

「——”1日しかねぇじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!”」

 

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