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◤◸ある異世界は劇場で◹◥ ― 出演:勇者|演出:魔王 ―  作者: Awa_Pika


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3/7

第二演目   ◤◸お前の”設定”を開始する!◹◥

 まずは現状の確認から。

 ——俺は、『魔王』になりました。

 それも、飛びきりかわいく、幼い魔王に。

 スペックは膨大なステータス。


 ——それと『設定(キャラクリ)』という、簡単に言うと、対象にキャラクター性を設定し、自由に立ち回らせることができるっぽい能力。

 あとは、魔王である自分に設定された”この命令”。


 ——『勇者が魔王討伐の旅をどのくらい楽しんでいるか』によって、自分の寿命が決まるらしい……

 

 …………。

 

「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ――――!」

 魔王は嘆いた。

 

 何故、自分を殺しに来まーす!——ってやつを楽しませなければならないっ!

 これから世界を平和にするぞ♪魔王頑張って倒すぞ♪

 ——って準備しているそこの勇者君っ!


 何もしなかったら勝手に死にますっ!

 助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ――――っ!倒しに来てぇぇぇぇぇぇぇ――――!

 でも、殺さないでぇ!許してくれぇ……

 無害だからっ!悪いことしないからっ!

 

 ——そんでもっての、このもう一文。


 『勇者が死亡すると、あなたも死にます。』


 ………………。

 

「生きてぇぇぇぇぇぇぇえ――――!」


 ある程度楽しませて、寿命を伸ばした後、”返り討ち”にして余生を過ごす。

 魔王の勝ち。

 ……は、ダメですか?

 保護しなきゃじゃん。戦えないじゃん。負けしかないじゃん。


 ……これ何?

 ……魔王って何?

 そもそも旅の終わりに死ぬこと確定してますよね?

 何を希望にこれから生きていけばいいのですか……?

 

 ——いや、待て。

 そうだった。俺はいつも冷静なんだった。

 ふぅ。

 深呼吸をする。

 大丈夫だ。なんとかなる。

 その流れで、落ち着いてウィンドウに目を向ける。

 

 『あなたの寿命は残り7日です。』


 ……。


「んー……セミかっ!」


 いや、セミの方が地中で長く生きている分、これはひどいよ?

 短いよ。

 考える暇がないよ。

 セミだって地中で何年も、地上に出たらどう鳴こうかなぁ~って考えてるよ?


 そんな、”お笑い芸人でもない俺”が。

 ”一週間以内”に。

 ”見ず知らずの相手”を。

 ”楽しませるようなこと”を考え。

 ”実行”する。

 ”命”を賭して。

 もう一度言う。……これ何?


 ——”旅に出ない”が魔王を倒す一番の近道な勇者に、魔王は奴隷のようにエンタメを届けなくてはならない?

 関係が平等じゃ無くない?

 どうするの?勇者が目の前に来た時。

 ご足労いただきありがとうございます~。

 今までの旅は楽しめました?あれ、魔王軍で用意させてもらったんですけど……


「どんな魔王だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 吹雪の中の小さなボロ小屋(魔王城)で、一通りの理不尽を実にキュートな声で叫んだ後。

 まあ、でも何もしないで死ぬならとりあえずやるしかないよね……と。

 しょうがないよね……と。

 ()()()()ポジティブになった。



 ——問題1:勇者の目的が魔王討伐である点。

 これを解決しないかぎり、どのみち未来はない。

 散々楽しませて、あとは殺されるだけだ。

 ——『勇者が”魔王討伐の旅”をどのくらい楽しんでいるか。』 

 ()()()()()()と限定されている以上、旅の目的を変えるのは不可能そうだ。


 ——ならば”()()()”しかない。

 まあ、()()()は後でやるとして……


 ——問題2:どう楽しませるか。

 これも不安だよ。人ってどうすれば楽しませられる?

 やっぱ王道RPGなら、地道にレベリングして強くなって、もっと強大な敵に立ち向かう。とか?

 そもそも世界観RPGなのかな?——うーん、分からぬ。


 ——ならばいっそ、お笑いに振るか?

 笑いと戦闘を合わせるのはどうだ?

 キャラ濃い魔族たちが襲い掛かってくる。

 全力でいい勝負だったぜ感を演出する。

 魔族は倒される。


 ——いけるか?

 分からぬ。本当に分からぬ。後回しっ!


 ——問題3:普通に助けて。

 ……現在、少女が一人、雪山で遭難しています。

 ……食料はおろか、なにもありません。

 ……周りがどうなっているか?

 分かりません。見えません。吹雪強すぎです。

 仮に、外に出ても耐えられる体だったとして。

 なにかを得たとして。

 このボロ小屋(魔王城)に帰ってこれる気がしません。

 風雪が凌げる場所が、他にあるかも分かりません。

 そもそも生き物や食べ物が周りにあるかも分かりません。


 ——つまりは、”七日を待たずして普通に餓死”します。

 ……勇者よ……よくぞ、このボロ小屋(魔王城)に辿り着いたな。

 この魔王を倒したいか……?

 ……残念だったな、貴様では我を倒せない。

 なぜならすでに、”餓死”しているのだからな!あっはっはっはっはっはっはっ!

 …………。


 ——惨めぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ――――!!

 

   ○○○

 

 とどのつまり、”自分が一番かわいい”こそ、人類の本質だと考える。

 実際に()()()()()()()わけだしね。

 死ぬのは嫌だよね。

 うん。

 自分が命の危険を冒さなくても、代わりに自分が死にますと言ってくれるやつを創造り(つくり)だせる。

 

 ——そう、俺の能力『設定(キャラクリ)』ならねっ♪


 ——正直に言うと、良心の呵責がないわけではないよ?

 だって、”殺されたくないから代わりにやられて”と命令するのだからね。

 でも、死なない方法があるのなら、手は伸ばしてみるべきじゃないだろうか?

 転生で身長は伸びた。

 ならばこの業に向かう手も伸ばせるはずだ。


 ——そして召喚すれば、問題1と3もしかしたら2も解決するかもしれない。

 ……やろう。

 今まで培ってきた”無限のキャラクター錬成”が役に立つ時が来たのだ。

 

 最終確認。


 ——『やらなければならないこと』:勇者の旅を全力で()()()()()にして、大団円を迎えさせなくてはならない。


 ——『そのために俺がやるべきこと』:大団円に魔王討伐が必要なら、()()()()()()()創作(つく)ればいい!


 ——道と腹は決まった。



「——よし、やられ役の魔王……お前の『設定(キャラクリ)』を開始する!」



 ブォゥンッ!


 瞬間、世界が静まり返り、空間は色を忘れた。

 目の前には赤い歯車のような二重の魔法陣。

 ……おっ、静かになった。

 この状態で設定を思い浮かべればいいのかな?

 思考を巡らせる。


 ——えーっと、一応魔王やってもらう訳だし。

 ・冷徹で。

 ・威厳があって。

 ・俺の次に強くて。

 あとは~そうだな。

 ・勇者に倒される運命にある。

 ・完全に魔王の代わりを演じ、元魔王の事を世界から隠す。

 ・死後、弱体化して好きなタイミング、好きな場所で復活できる。

 こうしておけば、こいつへの罪悪感も少しは無くなるかな。

 細かい設定を終え、最後の設定を打ち込む。


 ・『魔王の忠実なるしもべ』っと。

 とりあえず、こんな感じでいいかな。

 最初だし。

 

 「よし、召喚!設定(キャラクリ)完了っ!」

 

 ブォゥンッ!

 

 世界は音と色を思い出し、設定中の異質な空間は歪んで消え去った。

 騒ぎ出す吹雪の音。

 魔法陣の上に佇むシルエット。

 徐々に薄れていく魔法陣。


 魔王(少女)は、召喚されたもう一人の魔王の姿をただ見上げる。

 魔王(少女)は思う、魔王としてのオーラが違うと……

 青い髪に赤い瞳、その長身に纏うは黒きオーラ。

 彼は、闇のオーラを纏い放っていた。

 魔王(少女)の力で、召喚されたもう一人の魔王。

 整った筋肉を、尖った牙とともに見せつける魔王。

 我こそが魔の王、夜の王と……鋭い眼差しをこちらに向ける魔王。


 ——開口一番。彼はこう口にした……

 

 


 

「サ゛ム゛イ゛……………………」


 

 


 ——逆に言おう。

 

 ————彼は”()()()()()”纏っていなかったのである。————

 

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