第一演目 ◤◸あなたは”魔王”です。◹◥
——寒い。
そして、黒い。
暗闇の中、俺は意識を取り戻す。
瞼を開いても、閉じても、ともに映るは同じ闇。
体は……あまり動かせない。
狭い空間に閉じ込められているっぽい?
そして、耳さんからの情報は無いと……
——これは……一体どういう状況だ?
……大丈夫、俺は冷静だ。
一旦、覚えていることを列挙してみよう。
朝起きて、学校に向かい、無事帰宅。
階段を上り、自分の部屋の中にある、小さな作業部屋に入った。
PCを起動し、多種多様なキャラクターを創作ったり、演じたりしていた……
………………。
——ん?それからどうなったっけ?
その後、いつも食べるはずの夕食を食べた覚えはない。
ラーメン? それは昨日食べたものだ。
——この間に何かがあった……?
……。
——そうだ。
……なんか、とんでもなく綺麗な夜空を見たような……
そこでたしか、声が聞こえてきて。
「あなたの××の全てを禁止します」
そう、こう言われた。
で、俺は禁止されたんだよねアレを。
……アレをね。
……。
……あれ?
——”アレってなんだぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉”
で……
——現在、暗闇の中にいます。
「分かるかぁぁぁ――――――!」
ここに効果音をつけるなら、間違いなくドカーン!だろう。
そんなことを思いながら、俺の脳内は爆発した。
………………。
おっと……
大丈夫、俺は冷静だ。
冷静すぎて、むしろ冷たい。というか寒いっ!今、夏じゃなかったっけ?
……これは、あれか。
——雪の中に埋まっている……?
まずいな、もしそうなら15分くらいでたしか死ぬ。
急いで辺りを探る。
ズザッ!
……ん?何か押せそうな場所がある。
押す……?危険か……?助けを待つ……?
——いや、押す以外の択はないっ!
「んんぬぅぅぅ…………!!」
とりあえず全力で暗闇を押してみる。
ズザァァァ————ガタッ!
ガコンッ……!
ビュウウウ————————ゴォォォォ……!
「ほへっ?」
突然の光と爆音に目が馴染むのを少し待って、目の前の情報を何度も整理する。
周囲は薄暗く、見えるのはボロボロな木製の壁と、ひびの入った石畳の床。
今まで自分を閉じ込めていたであろう、倒れている大きい蓋?のようなもの。
そして…………
——ドアのない、この部屋の入り口から見える猛吹雪と、鳴り響く暴風音。
——それと、体の温度が急激に下がっていく感覚。
「????????????????????????????」
……っ!
——危ないっ、理解不能に埋められる所だった。
大丈夫。3分後ぐらいには間違いなく凍死するぐらいには冷静だ。
体が震える。
だが、この震えは死への恐怖によるものなのか……。
はたまた寒さによるものなのか……。
どっちかなぁ~と、考えるくらいには余裕もある。
よし。
まずは、暖だ。どうにか暖をとらないと。
——探そうっ!暖をとれる何かをっ!
ボォウ!
——熱っ!なんだぁっ⁉
突然、周囲に小さな掌サイズの火の玉がいくつも出現する。
漂う火球は、体の周りを少し巡った後、自分の体に吸い込まれていった。
それと同時に、体が少しだけオレンジに発光する。
——暖かい……?
不思議と寒さが消えていた。
さっきのは……?というか、なんだこの服?
いつ着替えた?
優先度の高い事象が終わり、後回しにされていた情報の処理が始まる。
そして、”自分が求めていた現実”がここにあることにようやく向き合う。
そう。
——なんか目線、高くね?
まさか、あり得えるのか……?
今まで実行し、裏切られてきた努力達が脳裏を巡る。
牛乳も毎日、お風呂上がりに飲んだ。
運動、勉学にも手は抜かず励んできた。
サンタさんが身長をくれるかもしれない。
そう信じ、いい子を目指して可能な限りの善行を積んだ。
それら全てを網羅した、そんな俺の身長が伸びた……?
本当に……?
もう一度目線の高さを確認する。
初等部の頃からずっと寄り添ったこの高さを……
「あっ……」
ポロッっと、何かが零れだす……
目測で6cmは伸びている……
俺は少しの間、直立無音で涙を流した。
——いや、待て違ぁぁぁぁぁぁぁあう!
『ここ』はどこだっ!
なにを今さらと、思い出したかのように紡いだその問に。
的確に、現在の状況を表した言葉を零す。
「ん?遭難した……?」
ふと、虚空に耳を傾ける。
誰かが寒い駄洒落を返してくれる事を期待して。
……返事はない。
ダメだ、温い。
なぜか、スッゴい快適な温度だ。
そりゃ、駄洒落なんて返ってこないわけだ……
○○○
——とりあえず、この部屋の調査をしてみた。
というか調査しなくても、大体はすぐに分かった。
——この部屋、物がほぼ無いのである。
——調査結果1、最初の暗闇の正体について。
俺は、背丈の二倍はあろう棺桶の中に入れられていたようだ。
現在は、蓋だけ地面に倒れている。
——調査結果2、部屋は小屋だということ。
木造で、部屋は今いる一部屋のみ。
ドアは無く、あるのは棺のみ。
幸いにも、屋根が無事なおかげで風雪は凌げている。
外に何かあるかもしれないけど、吹雪で確認に行けない。
——さて、ここまではまだ現実を受け入れられたラインだね。
それじゃあ、この情報を君に聞かせてあげよう。
調査結果3、——俺、『火の玉を自由に操作』出来るようになりました。
俺はいつから魔法使いになった?
と、火の玉を指先で躍らせながらに思う。
——以上を踏まえまして。
——多分、俺は死にました。
——で、『異世界転生しました。』
というか、『異世界転生しました。』と言われれば——
……ああ、そうなんだね。
で、大体の状況を呑み込めてしまう。
現代人のおかしなところだ。
そうと分かれば、まずしたいことは自分の姿の確認だ。
火の玉操作に気付いた時から、なんか使えそう……という感覚があれば、とりあえず色々できるっぽい。
要するに。
——”魔法”が使えそうというわけだ。
○○○
”魔法の生命”による、異世界三分メイキング~♪
嫌がる演技していたものの、実はこのあだ名は気に入ってたんだよね。
普通にカッコいいし。
まず、なんとなくで成功した”水を生み出す魔法”。
これを集めて、棺桶の蓋の上に注いでいきます。
ん~♪少し高い位置から注がれる、水音が気持ちいい~♪
……かなと思って、高めの位置から注いだが、外の暴風音に敗北しました。
……俺はそっと、水を注ぐ高さを低くした。
……。
水面ができて来ました。
波が落ち着くのを少し待ちます。
……どうやら”水鏡”が完成したようです。
やっぱりどんな姿してるか気になるよね。背も伸びてるし。
四つん這いになって、鏡に近づいて行く。
——いざっ!そうして鏡の上にひょこっと顔を出す。
「えっ……かわいい///////」
——淡い紫を帯びた白い髪。
輝く瞳はまるで紫水晶。
頭には小さな角。
ゆらゆらと揺れるしっぽ。
身には、如何にも異世界。それどうなってるの?な服。
肌はもちもちとしている。
そんな目を丸くした少女が、水面に顔をのぞかせていた。
——どうやら、”人間”ではないらしい。ついでに”男”でも。
……まあ、分かってはいたけどね。
声高かったし。男性の服じゃないし。
体の感覚明らかに違う部分あるし。なんなら、しっぽ見えてたし。
……俺、死んだんだね。
……。
——なんか、文句はあれど、死にたくはなかったかなぁ……。
………………。
いつも通り、俺は冷静なので普通に顔を上げる。
というか普通にかわいいなと、一通り自分の姿を見回した。
——その後、魔法とは別に、『能力』(?)のようなものの存在に気付く。
なんだこれ。
特に何も気にしないまま、使おうとしてみる。
デンッ!
——————あなたの寿命は残り7日です。——————
「へっ?」
当然の困惑。
急に、自分の前にウィンドウのようなものが出現する。
かと思えば、余命宣告をされた。
短くない……?
もう終わり……?
7日後死ぬの……?
折角ならもうちょい楽しみたかったんだけどなぁ。
……。
まあ、なんて冗談は置いといて。
まだいくつかタブがあるなと、もちろん気付いていましたとも。
タブの表記は、"寿命の伸ばし方について。"
いいねぇ。優しい世界だねぇ。
いや、初期値が7日の時点で優しいのかな……?
そんなことを思いながら、目の前に現れた画面をあれこれ操作していく。
……。
で、どうすれば寿命は延ばせますか?
俺は、一番手前のタブを開いた。
デンッ!
———————あなたは魔王です———————
デンッ!
……………………………………。
デンッ↑!
…………————⁉
——どうやら魔王は、『勇者を楽しませる』必要があるらしい……。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
泡です。
初めてラノベ書いてみています。
一次創作の楽しさを知り、現在はキャラデザに夢中です。
今後、魔王ちゃんのlive2dとか3dモデル作って、一人メディア化してみたいなって考えています。
"この作品とともに、自分でも沢山の笑いを届ける。"
っていうのを最終目標に設定して頑張ります。
応援して頂けると嬉しいです。




