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◤◸ある異世界は劇場で◹◥― 出演:勇者|演出:魔王 ―  作者: Awa_Pika


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1/7

幕前     ◤◸”空蝉”◹◥

※ここに、後で表紙が入ります。


本編↓

 ——暑い。

 蝉達の自由な表現に彩られた通学路。

 降り注ぐ陽射しとともに、今日もまた同じ道を歩く。

 暑さに耐え、足は自然と校舎へ引き寄せられていた。

 しばらく歩くと、見慣れた校門が近づいてくる。

 その傍らに、人影が一つ見えた。


 おっ、先生が立っているな。

 ここは、()()()()()元気な挨拶でもしようかな。

 そう思い、小さな歩幅を前に進める。

 一歩、また一歩と。

 タイミングを見計らい、口を開いた。

 ここだっ!


「……お、おはようございまーす……」

 先生は笑顔で返してくれた。

「——ん?——あい、おはよう。」

 

 ——って、違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁう!

 そう、これが()()()()()

 元気なのは”内側”だけ……

 ”外側”はあまりにつまらない。

 ——『()』と『()』は、巨大な壁で覆われているのである……


   ○○○


 ——男女比3:7の教室。


「おはよー!”魔法の生命”(マジック)。」

「今日もかわいいねぇ。」

「今度、これ着て~♡」


 これに()()な相槌を返す。

 そんな日々を送っている。

 その魔法のような容姿から、付いたあだ名は”魔法の生命”(マジック)

 え?”()()()()()()()姿()”?

 もしかして()()()()


 違う。

 そうじゃない。


 ——背が伸びなかったんだ……。

 ——顔にも変化もなかったんだ……。

 ——十六歳 男性 身長:131cm ウルトラ童顔。

 ——どう頑張ってもダメだったよ。

 ”()()”だけにね。ハハッ……

 

 ——それが、”鹿田 真面目(しかだ まじめ)”に与えられたステータスだった。



 小中高一貫校だったから、男らしくなるタイミングもなく、時間が過ぎて。

 ()()()()()()で、幅広く薄い交友関係を続けたらどうなると思う……?


 ——男子達には”マスコット”(おもちゃ)に、女子達には”マスコット”(着せ替え人形)にされていた。

 いや、正確には”自分からそうなった”。

 相手が求める自分を演じることしかできなかったんだ。

 代わりに得たのは、内なる()()と会話をする癖と、自分の中で様々なキャラクターを演じる趣味。

 

 この瞬間、自分がこの人なら、こういう言動をして……

 もっと——劇的に。

 もっと——この場面を彩れるキャラクターで。

 もっと——偽らない自分で……

 そんな理想も空しく、周囲に求められた愛嬌を振りまいていた。

 

 ……それでも、一矢報いたこともあったりしたんだ。

 今からそれを、ご覧頂こう♪

 そして、徐に椅子から立ちあがり、後ろで座る女子に話しかける。


 「……昨日は本貸してくれてありがとう。()はね、このキャラが好きだったよ!」

 その後、少しの会話をして、自分の席に戻った。

 

 ……()()()

 ——”()” を使いこなしているだろう?

 毎日、かわいいなどと言われ続け、自分は本当に男なのだろうかと。

 ——そんなことを思う日もあったよ?

 ——けど、まだ伸びると。

 ——男らしくなれると。

 そう信じ、高等部に上がる時、()から”()”にコッソリ一人称を変更したのだ。

 それが相応しいのか、誰にも指摘されていない。

 成長している。

 ——()が、俺の《《アイデンティティ》》なんだぁぁ――!

 

   ○○○


 ——少し早く家に帰ると、すぐに”作業”に取り掛かる。

 家の階段を駆け上がり、自作の防音室の中に入った。

 PCを起動させ、ペイントソフトを立ち上げた。


 ——俺は、とにかくキャラクターを作るのが好きだ。

 頭の中での『()()()()()()()』を叶えてくれるキャラ達。

 ”この瞬間”、”こんなキャラクター”が、”こんな展開”にしたら最高だろうなと。

 そう妄想し続ける。

 ……作業を続けていると、自然と口が動いてキャラのセリフがこぼれた。

 …………。


 ——いや、本当は気付いている。

 キャラクターじゃない……

 ——『()()()()()()()()()()()()』のだ。

 ——『()()()()()()()』は、『()()()()()』なのだ。

 だから今日も、孤独の防音室で、俺は喋り続けていた。

 …………。

 ……だが、それが出来ないのも分かっていて。

 自分には”勇気が無く”、”人との関係が壊れてほしくはない”。

 相手が求める自分の像を壊す。

 それは、自分が誰から必要とされなくなるのでは……?


 そう考えてしまうのだ。

 それに、今が物凄く嫌。——というわけではないしね。

 人畜無害を演じているだけで、ある程度は楽しいし、周りは優しくしてくれる。


 ——それが自分の『()()()()()()』から外れているだけで……

 

  ○○○

 

 ……設定を打ち続けたキーボードの音がやんだ。

 ————このぐらいにしておこうかな……

 ————今日は少し、熱中し過ぎたみたいだ……

 

 ……何時間ぐらい経ったのかな?

 

 ……まあ、いいや。

 …………異常に疲れた。

 

 …………瞼が重い。

 

 ………………………………


 

 ————こうして、俺の視界は暗闇に包まれた。

 満たされなかった渇きと、真夏に飾られた小さな部屋の中で……

 

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