精霊樹の大槍
ベルフェルシシスと名乗った竜は、外壁に叩きつけられたベスパを拾い上げる。
『ほう? まだ息があるのか…。苦しませるのは性に合わん。一思いに握りつぶしてやろう』
ギルドマスターのデットは瓦礫の上に立ち、竜に訴える。
「竜の王太子ベルフェルシシスよ。その子は、まだ戦いの何たるかを知らずして…竜と対峙しているのだ。それは…古の盟約が、意味するところではないはず!!」
ベルフェルシシスはベスパを握ったまま、声の主に答えた。
『もう時間がないのだ。すまぬな…人間よ…』
「ウドちゃんっ!! キィィィィック!!!!」
ベルフェルシシスが言い終わる前に、弧を描くように空を飛んできたウドちゃんMk-Ⅶのドロップキックが、竜の鼻面を蹴り飛ばした。流石の竜も態勢崩しベスパを落としてしまった。
『何奴…?』
竜の問を無視ししたウドちゃんは、武器を召喚する。
”いでよ! 精霊樹の大槍!!”
『精霊風情がぁぁぁぁっっ!!! 消し炭にしてくれるわっ!!』
街の外壁部分で、あのブレスを放たれたら街の半分が吹き飛んでしまうだろう。ギルドマスターのデットは、限りなく0%に近い生存率の中、声の限り叫ぶ、
「にげろぉぉぉっっ!!!!」
「待て。ベルフェルシシス!! 俺とお前の戦いだろ?」
散々水を差されまくっているのに、よく言えたものだと竜も感心していた。
「ウドちゃん! その槍を貸してくれ…」
「駄目じゃ、ベスパでは…竜に傷一つ付けられぬ。ベスパに…生きていて欲しいのじゃ!」
「お願いだ…」
ベスパはウドちゃんに近づくと、ぎゅっと抱きしめ、”精霊樹の大槍”を手にした。
『さぁ、もう良いであろう…。お前が人の街と命を守りたいことは、わかった…。最後の望みを叶えてやろう』
竜は自身の周りに虹色のドーム結界を張った。その中にいるのは、竜とベスパだけである。
『しかし…不思議であるな…なぜ、お前は…あれほどのダメージを受けていながら立てるのだ?』
竜は知らない。ベスパが治癒術師であることを、どらいアドちゃんに<神樹の種>でちょっぴりチートな人間になっていることを。しかし竜は、決して油断はしていなかった。少年が持つ怪しい大槍は、もしかしたら己の鱗を貫く力を秘めているのではないかと思っているからだ。
ドーム結界を張ったのは失敗であったと竜は後悔する。人間にとって広いドームでも、竜にとっては狭いのだ。この狭いドーム内でブレスを放てば、己にもダメージを受けてしまのだ。竜は、尻尾による攻撃で、何度も何度もベスパを弾き飛ばすのだが、まるでゾンビのように立ち上がってくるのだ。
『なっ。何なのだ。お前は…』
少年の狙いは明らかであり、その手に持つ大槍を、竜の胴体に突き刺すことだ。最強の名を欲しいがままにする竜が…ほんの少しだけ…恐怖を感じ始めていたのだ。




