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個別ギルド設立へ

半泣きのベスパの前に、ウドちゃんが怪しい人物を連行してきた。居酒屋と冒険者ギルドは同じホール内にあり、その怪しい男はギルド側から居酒屋で騒いでいたベスパ達を、舐め回すように見ていたのだという。怪しいならベスパに近づけるなと、その場にいた全員が思っていたのは内緒だ。その人物とは、懐かしのカーデル教官だった。


「神殿からの圧力に屈した学園からリストラされたところを、ギルドマスターのデットに拾われ、彼からの提案で…ベスパを中心とする…厄介…いや…問題児…いや、将来有望な若者を集めたギルドを作り、育成していくことになった」


ベスパ達は何とも言い難い空気になったが、代表するようにアルネが尋ねた。


「えっと…。ギルドの利点って、何だっけ?」


ベスパの周囲に答えられる者がいないことを確認すると、カーデルが代わりに答える。


「別ギルドには、信頼・安全・育成の利点がある。


まずは信頼。個別ギルドを設立する際には、冒険者ギルドの承認が必要であり、定期的に外部監査が入るため、クエスト依頼者側から見ると、信頼を得やすいのが特徴だ。しかし冒険者ギルドにも負担がかかるためクエスト報酬が通常より減らされることを理解して欲しい。


次に安全。ギルドホームの設置が許可される。場所の指定はない。だがギルドホームにしていた場所には、国立魔法研究所から派遣される魔術師によって、複数の防御結界が付与される。またギルドメンバー個人に対しても、別費用になるが武器や防具に各種付呪依頼が可能となる。


最後に育成。通常の冒険者は15歳が条件だが、個別ギルドでは年齢制限が撤廃される。これは冒険者同士の間に生まれた子などを早い段階から育成するためである。また貴族や冒険者ギルドからの指名依頼を拒否しやすいように権限を与えている。これも個別ギルドを守るため、メンバーを守るための優遇処置だ。


以上だ」


「ということは…。個別ギルドを設立すると、10歳のカスーレイナでも冒険者として、一緒にクエストを受けられるのですね」


神殿の聖女であるルミナリアの説明に、ベスパの表情も明るくなる。


「そうだ。で、個別ギルドを設立するためには、ある程度の資金が必要なのだが、これは…とある人物から融資してもらったから問題ないのだが、このカーデルがギルドマスターになることが条件だ。どうだ? ベスパ、それで問題ないか?」


話を振られたベスパは考える…。


(別に人の上に立つ気もない。ギルド運営なんて、どうして良いかわからないし面倒だ。しかしカーデルさんは…結構、無茶振りしそうで怖いな。)


「はい。問題ないどころか、是非、お願いします」


「次にギルドホームなのだが、これまたギルドマスターのデットからの提案であるが、居酒屋の二階の大部屋を指定してきた。これも問題ないか?」


今現在、大部屋で寝泊まりしているし、居酒屋も冒険者ギルドも同じ建屋内であり、便利過ぎる!! そこに防御結界が付与されるのなら、何が問題あるのだろう? その場にいた全員がデメリットを考えるが、メリット以外になにもなかった。


「問題ないよね…」ちょっと自信なさげにベスパが回答した。


「では、個別ギルドの命名は後にするが、まずメンバーとなる者は、全員二階の大部屋に来て欲しい」


「ま、待って!! ご、ご主人様。ミニンも冒険者になる!! ご主人様が居酒屋で働くならミニンも居酒屋で働く。でもご主人様が冒険者なら、ミニンも冒険者になる!!」


居酒屋で接客しながらも、犬亜人特有の耳の良さを活かして、ベスパ達の会話を聞いていたのだ。

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