真実を
「奴隷商人なのか? なら…瓦礫を退かして、怪我も治療してやる。その代わり、その犬亜人の奴隷を俺に譲れ」
足が潰され感覚がない。このままでは出血多量で死んでしまうだろう…。奴隷商人のモドレノーズは、死んだか、死にかけか…知らないが、こんな商品価値も無くなった犬亜人の奴隷で助かるならと承諾する。
「助けた後で、そんな約束はしていないと言われる可能性もあるな…」
「無い! 無いぞ!! 絶対に無い。は、早く助けてくれ…」
ベスパは中年の男性と犬亜人の少女を押しつぶす瓦礫を退かした。
カスーレイナは、ぐったりとしている犬亜人の少女を抱きかかえる。
「さぁ、約束だ。奴隷の権限を俺に譲れ。そうすれば怪我も治療してやろう」
奴隷商人モドレノーズは、建屋の外に聖女ルミナリアがいることを知っていた。
(そうか、そうか…。奴隷の権限を渡せば、あの聖女ルミナリアが…治癒してくれるのか)
モドレノーズは瓦礫が退かされて痛みが蘇ってきたのだが、我慢して奴隷魔法を発動させ、奴隷の契約をベスパに譲渡した。
「これが…奴隷の契約か」魔法によって作り出された契約書を手にした。
ベスパは、モドレノーズと犬亜人の少女の怪我をあっという間に治療する。モドレノーズは、まさかこんな小僧が治癒をするとも、犬亜人の奴隷まで治療するとも、思ってもいなかったのだ。しかし…契約を譲渡してしまっては、何も言えないのである。
「カスーレイナちゃん、もう…その子は大丈夫だ。気を失っているが、命に別状はない」
カスーレイナは大粒の涙をボロボロ流しながら、「ありがとう」と何度も呟いた。
「ウドちゃん、この犬亜人の少女をお願い」
5人は避難所の怪我人を治療しながら、冒険者ギルドに向かうことにした。
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冒険者ギルドのマスターのデットは、聖女ルミナリアがいることに驚かない。既に避難所へ情報収集のために向かわせた冒険者から、ベスパとルミナリアの活躍を聞いていたからだ。
「お疲れ。ベスパ。とりあえず避難所からの救援要請はない。お前らの活躍のおかげだ」
ベスパの労をねぎらうと、続けてルミナリアに挨拶をした。
「聖女ルミナリア様、冒険者ギルドのマスターのデットです。以後お見知りおきを」
「おう、ベスパに、お嬢ちゃんたち。二階の大部屋で休んでくれ。食べ物は後からリリルに運ばせる」
居酒屋の店主アルバは、何故か余裕だ。それもそのはず、今回の買い付けでは、割れない木のグラスや食器を購入していたのだ。
大部屋で犬亜人の女の子ミニンを寝かせて、しばらくすると食事をリリルとデットが運んできた。
「ルミナリア。神殿に帰るなら、送っていくけど?」
ベスパは神殿の聖女であるルミナリアは、戻りたいのだろうと考えていた。しかし…ルミナリアは、首を横に振り、ギルドマスターのデットに質問をした。
「ベスパ暗殺の件、詳しく教えて頂けませんか?」




