下水道から抜け出せ!
ルミナリアは、夢でも見ているのかと思うほど、信じられない事が連続で起こった。自分と同じ年齢の男の子が、私の腕に乗るキングサイズのベッド以上の大きさの岩盤を…軽々しくではないが持ち上げ、私を助けてくれたのだ。
(この男の子は? ひ弱そうに見えて、戦士なのかしら?)
折角助けてもらったのだ、痛みに耐えて…治癒魔法を唱えようとするが、集中できずに魔法が発動しないのだ。悔しくて、涙が出そうになる。
すると男の子は、潰れた私の腕を一瞬にして再生してしまった…。
(えっ!? あ…この子が…例の…)
「あ、あなたは…もしかして? ベスパ?」
「うん。君たちが暗殺したがっている…ベスパだ」
ルミナリアはベスパが何を言っているのか? 冗談を言っているのか? それとも?? と、悩んだ挙句、やはり初対面で、そんな冗談は失礼だろうと、説教することにしたのだ。
二人の噛み合わない会話も、時間と共に…歯車が噛み合ってきた。ルミナリアも、ベスパが訴える暗殺というキーワードを素直に受け入れると、最近起こっている不思議な状況にも、納得がいくことが多いのだ。
「ごめんなさい。ベスパが言っていることが、もしかしたら正しいのかも知れない。でも…それを受け入れるためには、確たる証拠が欲しいわ。そうじゃないと…。私は、何を信じていけばいいのか…」
「うん。それをね…。今、大人たちが、必死に探しているんだ」
二人は街の地下に張り巡らされている下水道から抜け出すため歩き始める。ベスパは自身のクラスとルミナリアのクラスの違いを痛感させられる。ベスパの治癒術師は、治療のみのクラスであるが、ルミナリアの巫女よりも、特に回復魔法が優れているわけでもない。寧ろ、巫女の回復魔法以外を、切り捨てた…ただの劣化クラスが、治癒術師なのだ。
聖女ルミナリアは、光の魔法で辺りを照らし、神託の魔法で出口の方向を探す。魔物が立ちはだかれば、破邪の魔法で撃退してしまう。
「凄いね。流石、聖女ルミナリア様!!」
「なんか、あなたに聖女と言われるのが恥ずかしいわ。ルミナリアでいいわ」
順調に出口に近づく二人に、さらなるトラブルが…。
黒い外套の男に遭遇するのだが、「見られたからには…死んでもらう」と、先制攻撃を仕掛けてきたのだ。
ベスパは異様な男の雰囲気に、ルミナリアを庇うように盾となった。
「ベスパっ!! 駄目っ! 逃げてっ!!」
ルミナリアの悲痛な叫び声が、下水道内に木霊した。
(駄目っ! ベスパっ! あなたは…とても…可愛いです…死なせないわっ!!)
「この男は、闇を操るのか......?」
ベスパの体を複数の闇が貫く。
「貴様…なぜ生きている!?」
黒い外套の男と、聖女ルミナリアは、信じられないと目を見開くのであった。




