異端者
「それでは、リリルさんには、即退院して頂きたく、こちらにサインを。それと…金貨3枚の支払いをお願いします」
治療を終え喜ぶリリルに、なんとも冷たい事務的な言葉で、退去を命じられた。
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そんな事を言われる20分前…。
神殿直轄の病院は、オルデン神聖寺院と言う名で神聖地区にあった。ベスパたちが、リリルに面会を申し込み病室に行く。そこにはカーデル教官と面識がない学園の教師が、痩せこけた顔のリリルと真剣な顔で話していた。
ベスパが到着すると、待ち構えていたようにカーデル教官が、担当医を呼んだ。どうやら、ベスパの治療を直に見てみたいと、事前に打ち合わせされていたようだ。
(今日来ることを、アルネ以外には話していないんだけどな)
ベスパは怪訝な表情になった。
リリルも事前にカーデル教官から、ジュエルスの罪状と刑罰の説明を受けていた。
「兄は妹の私を助けるためとは言え、償いきれない程の罪を犯してしまいました。今後は…兄を私が助ける番です。そのために…ベスタさん、どうか力を貸してください」
(うわっ。これは駄目なやつだ。治せないなんて言えない状況に追い込まれているじゃないかっ! アレーラさんから診断と治療を買っておいてよかった。でも、治療が完了したわけじゃない。俺の魔法で直るのだろうか?)
ベスパは、リリルの手を握り、緊張しながらも初めての診断Lv1を発動させる。すると、リリルを蝕む病名が判明した。”無限魔増症”という、臓器の一つが勝手に魔力を生み続けて、健康な細胞を疲弊させてしまう病気だ。
「”無限魔増症”だと? 馬鹿な。彼女は”闇侵食型不全症”と診断されているのだ。素人が遊びで命を暑かった結果が、これだ」
やれやれと言った様子の担当医だったが、リリルはベスパの手を握り返し「治せますか?」と質問した。
ベスパは、正直に「わからないと」だけ言うと、治癒Lv1、再生Lv2、回復Lv2を発動する。そして再度、診断Lv1で状態を確認すると、”特になし”と頭の中に状態が浮かんできた。ベスパは念の為にアルネの手を握り診断するが、同じように”特になし”と出たため、リリルの治療が完了したと確信した。
リリルの顔色も劇的に回復して、顔も気持ちふっくらした感じになっていた。この変化を感じ取った担当医は、自ら診断魔法を発動させると、驚き、そして…信じられないと、ベスパを異端者扱いし始めるのだった。
神殿から忌み嫌われるベスパと、その関係者達。神殿や聖女に関する数多くの犯罪に関係する暗殺者ジュエルスの妹リリル。その犯罪を暴くため組織された第三者委員会の一人であるカーデル教官とジュエルスの担任。この病院は、この者たちと関わってはいけないと、担当医は直感で理解し、リリルの退院を命じたのだった。
一人で起き上がることも出来なかったリリルが、自分の足で歩き病院を後にしたのだ。リリルの関係者達は、一体何が起きたのだと興奮するが、神殿の特別な黒装束を着た男たちの姿を見るや否や沈黙するのであった。
ベスパ達は、第三者委員会が活動の目的で借りている建屋に入ると、第三者委員会の委員長であり、領王直轄の第一騎士団団長ヴィルスレイブから、命を狙われていることを告げられた。
(まぁ…今に始まったことじゃないし。神殿の聖女だっけ? それを汚したとかで命を狙われるのって、意味がわからないけど、俺が何を言っても聞く耳を持たない連中だということは、わかった。)
「という訳で、ベスパとリリルには、当分の間、護衛を付けることとする」




