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豪腕のウィルダース

「ウィルダースさん、この際です。ジュエルスも殺してしまいましょうよ。同じアサシンのあいつがいると、俺が目立たねーんですよ」


ウィルダースと呼ばれた男は、学園の生徒とは思えない熊のような体躯であった。そのウィルダースは、下らない提案をしてきた矮小な男を睨む。


「そりゃ、お前の才能と努力が足りねぇだけだ。まぁいい。勝手にしろ」


「あ…ありがとう、ございます…」


矮小な男は、ジュエルスの四肢が、明後日の方向を向いていることに気が付き、動けないと確信し、その上で提案したのだ。今なら何の苦労もなく殺せると…。


ベスパは、アルネとジュエルスの怪我の治療と体力を回復させるため、その場にしゃがみ込む。すると、無防備なベスパに、ウィルダースの取り巻きの一人が近づくが、水平に振られたアルデルの巨大なハンマーによって、上半身が吹き飛んだ。


「あ〜あ…。お前ら駄目だ。まったく駄目。話しにならねぇ」


畏怖し硬直する残り三人の中で、最もアルデルに近かった不幸な少年が、頭上から振り下ろされたアルデルの巨大なハンマーにより、一瞬にして肉塊にされてしまった。


「待って。アルデル。人殺しは良くないよ…」


「あっ? 何で、お前ら人間の価値観を押し付けられなければならねぇの? オレは、気に入らねぇから、殺すだけだぜ?」


「アルデルは、女の子なんだよ? 可愛い女の子が、人殺しなんて、絶対に駄目だ!!」


「オ、オレが…可愛い? マ、マジかよ…。オレが…可愛い…」


ドゴン! と、巨大なハンマーが床に落ちる。アルデルは夢じゃないことを確認するため、ほっぺたを両手で思いっきり引っ張っている。


「助かったぜ、ベスパ。だが…俺は、お前を殺す」


化け物じみたドワーフが、”可愛い”の一言で、戦闘不能になったのだ。この隙きを見逃すまいと、ウィルダースは、魔法を唱え始める。


「俺は、豪腕のウィルダース。腕の筋力を…成人男性の3倍まで強化できる。楽に殺してやるぜ。感謝しなっ!!」


(成人男性の? つまり腕力ある一般男性の最大STRが25だとして、STR75前後になったということか、VIT90の俺でも、まともに喰らえば…)


ベスパも防御を意識するが、相手はベスパの正拳突きとは違い、スキルを行使した攻撃を繰り出してきた。ベスパは防御力が高くても、回避できる素早さもセンスもなければ、ダメージを軽減する防御の知識も経験もない。


「クラッシュ・パンチッ!!」


ベスパは、とっさに胸の前で両腕をクロスし、ウィルダースのクラッシュ・パンチを受け止めるが、メキメキと両腕の骨が粉砕され、体ごと地面に叩きつけられた。


ウィルダースは驚く。あの化け物じみたドワーフじゃないが、俺のクラッシュ・パンチは、両腕を砕くぐらいで防げるはずがないのだ。


(タイミングを間違えたか? それとも回避でダメージを軽減させたのか? わからねぇが、次でお終いだ。)


だがベスパは、何事もなかったかのように立ち上がった。しかも粉砕したはずの両腕をしっかりと上げ、ファイティングポーズを取って…。

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