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対人戦

通路から出てきたのは、自分と同じぐらいの学園の生徒だった。たいまつを見るや否や震える声で、呼びかけてきた。


「お、おい…、誰かいるんだろ? 悪い冗談は…やめてくれよ…」


ベスパは知らなかった。ベスパ達の首筋に刃を当てがてたのが、学園の生徒だったということを…。しかし、振り返ることすら許されない状況で、古代の塔へ入れられたのだ、仕方ないとも言えるだろう。ベスパは、背嚢に取り出した火付け棒とたいまつをしまうと、立ち上がり生徒の前に進んだ。


「ここにいる。学園の生徒だろ? 実習か何かか?」


ベスパを見つけると、安堵したような表情になる学園の生徒。


「よかった〜。一人じゃ、心細くてさ…」


ベスパの胸が熱くなる。ベスパには何が起こったのか、全く理解できなかった。


「あれれ〜? 疑いもせずに、近づいちゃ駄目だよ? 教わらなかったのかい? だからカーデルは、いつまで経っても、クラスを受け持つ担任になれないんだよな〜」


ベスパは、生徒が持つ短剣に目が釘付けになった。


「ふふっ。まだわからないのかい? 僕に斬られたんだよ。直ぐに死なないように、浅く斬ったんだよ? 僕、超ラッキーっ!! 君を殺せば、聖女ルミナリア様の護衛になれるんだよっ!?」


ベスパは自分の胸に手を当て、出血していることを確認した。


「なぁ…。どうせ、殺されるんだ…。教えてくれないか? 俺が、何をしたというのだ?」


ベスパは蹲ると、気付かれないように、止血Lv1、再生Lv2、回復Lv1の魔法を自分にかける。


「あっ、ごめん、痛かったよね? あれ? もしかして、死にそう? ベスパくんだっけ? 君はね。大地震の時、西地区の奴等と共謀して、神殿を貶めたでしょ? 西地区の奴等、神殿に金を払えず、治療を拒否されたからって、そりゃないよね?」


「神殿は…金がないと治療もしないのか?」


「当たり前でしょ? 支払った料金の高い順に、治療するさ。勿論、高い治療費を払えば、使用する魔法のレベルだって高位の魔法になるよ? 回復魔法が使える人間は、神に選ばれた人間であり、その努力を無償で提供しろなんて、虫が良すぎるでしょ? 僕のクラスは、アサシンだけど、聖女ルミナリア様の護衛になれれば、一生安泰だもん。頑張るよね? 普通………。 なんて、嘘だけどね。君を殺さないと、僕の妹が殺されるんだ…。ごめんよ…。君は、本当に優れた治癒術師かもしれないけど、神殿に逆らっちゃ駄目だよ…」


最初のおちゃらけた雰囲気から、謝罪するような口調になり、短剣を握り直した。


ベスパは、相手が短剣を握り直す瞬間、罪の意識からか目を閉じるのを見逃さなかった。ベスパは立ち上がりながら、正拳を繰り出した。正拳は敵が体をひねったため、鳩尾から外れ、右の胸付近にヒットした。それでも、STR:5(+96)の正拳は、まだ中級になったばかりのアサシンを倒すのに十分な攻撃力を秘めていた。


「ガハッ!!!」と空気が口から漏れ、学園の生徒は3mほと飛ばされ、地面に倒れた。


ベスパは落ちていた生徒の短剣を拾い、通路の奥へ投げ捨てると、仰向けに倒れている生徒に馬乗りになり、止血Lv1、再生Lv2、回復Lv1を生徒にかける。


「なぁ、殺し合いなんて、止めないか?」とベスパは質問する。


「悪い。妹のためだ。それはできない」と生徒に即答された。


ベスパは生徒の四肢を砕き治療する。何度、やっても生徒の意思は、決して折れることはなかった。


(恐らく、妹の命がかかっているというのは、本当なんだろうな…)

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