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パン屋の娘

(次は、あのアルネの家か…。アルネの家は…西地区だよね。また既成事実とか言い出したら、どうしよう??)


足取りも重く、ダラダラと西地区へ向かうベスパであった。実を言うと、西地区は冒険者ギルドのある北地区の隣で、どらいアドちゃんが遊んでいた公園からも近かったのだ。


1時間ほどかけて、アルネの家に着く。しかし、ドアをノックしても誰も出てこなかった。


(アレ? 留守か…通知どうしようかな?)


「その家に用かい? なら、隣のパン屋に行ってごらん」


近所のおばちゃんが、困っている俺を見かねて声をかけてくれたのだ。俺はお礼を言って、隣のパン屋に入る。


(そういえば、アルネはパン屋の娘とか言っていたもんな)


大きな木をくり抜いたような外装の思いドアを開けると、香ばしいパンの香りが出迎えてくれた。先程、お腹いっぱいに食べたのに、また食べたくなる香りだった。


「いらっ…」


白い三角巾とエプロン姿のアルネと目が合った。弓矢を持ったアルネとは全く異なる印象だ。あの全身が引き締まった裸体を思い出してしまった。アルネは顔を真っ赤にして俯いてしまうが、小走りに近づいてきた。


「え、えっちなこと…する…覚悟できたの?」アルネは馬鹿なことを聞いてきた。


「違う。いつまでそのネタを引っ張るんだよ…。これ、これ見て」と『短期冒険者講座』を渡した。


アルネは通知の内容を確認する。


「ベスパも参加するの?」


「うん。一ヶ月間、暇だからな。じゃ、また明日、学園で」


立ち去ろうとするベスパの袖をギュッと掴むアルネ。


「す、少し…は、話し良いかな??」


「既成事実の話は嫌だよ?」


「う、うん…違うの…相談が…」


アルネはベスパを連れて自宅に帰る。アルネの家に入ると、アルネの肌から感じた匂いを思い出してしまった。


(そうか、アルネの匂いって、パンの匂いも混じっていたのか。)


アルネは紅茶を淹れると、テーブルに座って待つ、ベスパの正面に座った。


「あのね…。ベスパは、冒険のパーティとか、決まってるの?」


「うん? あぁ…。決まってるよ。ウドちゃんという騎士とパーティを組むんだ」


アルネはあの時、迎えに来た騎士のことだなと理解した。


「そう…。も、もし…できればなんだけど、私も…入れて欲しいの」


すると、ドンっという音と共に、再び家のドアが開けられた。


「またお主か。ベスパの貞操を守りに来たのじゃ!!」


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