行ってみたいな短期講座
「ありがとうございました。アドバイスを元に、ボーナスポイントの振り方を考えてみます」
ベスパはお礼を言うと、席から立ち上がる。
「あっ。ベスパさん、お待ち下さい。先日の緊急クエストの報酬をお渡しするのと、冒険者ギルドの問題で、冒険者業を始められないベスパさん達への補償として、1つ提案がございます」
受付嬢のアレーラさんは、緊急クエストの報酬をテーブルの上に並べた。
「教会や神殿での治療費に換算すると、まったく足りていませんが、重症患者を全て救って頂いたお礼として、冒険者ギルドから…報酬をできる限り支払わさせて頂きます。今後もよろしくお願いしますね」
テーブルに並べられた金貨13枚、銀貨45枚、銅貨33枚に、ベスパは驚きのあまり硬直する。一般的な食事は銅貨5枚もあれば十分で、一泊の最低料金も銅貨15枚だ。最低でも銅貨30枚あれば暮らしていける。それに居酒屋で飲み食いしても、一日の宿泊費は銅貨50枚程度だろう。ベスパの給与が一ヶ月銀貨15枚なのは、そんなところからきているのだ。それにベスパの場合は、住み込みで食事まで付いているのだ。もう目茶苦茶お得なのだ。
「べ、ベスパさん?? だ、大丈夫ですか?」
アレーラさんの声で現実に引き戻されたベスパは、呆然としながらも椅子に腰を掛けた。
「あの…もしよろしければ、報酬を冒険者ギルドで預かることも可能です。いえ、防犯の観点から言っても、預かったほうがよろしいかと…」
「お、お願いします…」
「それと、もう一つ。ギルドマスターのデットが帰ってくるまでですが、それまでの補償として、ベスパさん、アロックさん、アルネさんの三人には、街の学園の『短期冒険者講座』を一ヶ月間、無償で受けて頂きたいのですが」
ベスパは昨日、偶然に出逢ったベルフォレートを思い出す。
(ちょっと行きたいかも…)
「それには、アルバさんに許可をもらう必要があります」と返事をしたら、隣の席で打ち合わせをしていたアルバから、「行って来い」と許可が飛んできた。
「それと…。アレーラ、その金。俺の許可が無いと、引き出せないようにしておいてくれ。悪い奴らに騙される可能性も十分にあるからな。いいだろベスパ?」
「えっ。あっ、はい」ベスパが答えると、「アルバさんは保護者として登録されていますから、ベスパさんの許可があれば、問題ありません。」アレーラも引き出し時の保護者確認が必要と、メモを書き残した。
「まったく、アルバは、ベスパが可愛くて仕方ねぇからな」と護衛の冒険者が笑っていた。
「それとですね。短期冒険者講座の通知の件、アロックさんとアルネさんに渡してきてもらえませんか? 大地震の影響で、配達も遅延気味なのです。勿論、内緒で、少額ですが、報酬も出しますよ」
特にすることのないベスパは、アレーラさんから通知を受け取った。
「住所は、裏に書いてありますから」
「はい。アレーラさん、相談ありがとうございました。アルバさん、行ってきます。それと護衛の皆さん、アルバさんをお願いします」
ベスパは建屋を出ると、風もなく穏やかな日差しが降り注いでいた。ベスパは歩きながら、アロックとアルネのどちらの家に先に行こうか考える。アルネの奇妙な家訓を思い出し、げんなりしたベスパは、アロックの家に向かうことにした。




