第三十一話 認めたくないけど子供です……。
「ただいま! にこぉぉおぉぉ!!」
ドタドタと聞こえる足音。
声は言わなくても分かるだろうけど、お父様。
あたしは寝そべるようにして、サッとお母様の腰に抱き着く。
それと同時にドアが開いて、正面からお父様が腕を開いた形でお母様を抱きしめた。
もう、あっと言う間の出来事だったよ……。
今、あたしの視界はお母様が着ている、赤色の小花をちらしたクリーム色のドレスでいっぱいだ。
うん。
お父様とお母様が熱烈に抱き合っているうちに逃げよ……。
そう思って、あたしはお母様の腰から手を離して、こそこそリビングから逃げることにして、成功。
二人は気づいてない。
だって、二人の世界に入ってキラキラ。
幸せオーラむんむんだからね……。
やめてよ。
認めたくないけど、子供の前だよ……。
あたし、十一歳になってるけど、世間一般だとまだ子供に分類されるよ……。
うふふふ。
二人でやっててください。
あたしを巻き込まないでくださいませね……。
本当に。
切実にお願い。
執事さん、どこ?
あたしは二人のピンクの幸せキラキラむんむんオーラに耐えられないよ……。
ふらふらしながら執事さんを探した。
まぁ。
すぐ見つけた。
玄関のカギをチェックしてる。
「執事さん!」
「おや、お嬢様。いかがなさいましたか?」
微笑みを浮かべて振り返った執事さん。
どこか疲れているように見えるのはあたしの気のせい、かな?
「ん? あー……えっと。二人の幸せオーラに耐えられなくて…………」
「そうですか。ですが。奥様も、旦那様も、幸せなのですよ?」
思ったことをそのまま言うと、執事さんは若干困った顔をした。
「うん、わかってる。ただ、子供の前でいちゃつき過ぎじゃないのかな?」
「……お嬢様。元からです」
悟りを開いたかのような笑顔になった執事さん。
とうとう悟りを開いたのかな?
そうだよね。
若いころからお父様の面倒を見てきたんだもんね……。
うん……。
納得です。
そして、思い返してみた。
うん。
お父様とお母様は昔からこうだった……。
「……そう。だった…………です……」
つい目をそらした。
執事さんはそれに追求しない。
まさに『しーん』。
つまり、沈黙……。
そう思って執事さんを見上げたら、バチッと目があった。
ど、どうしよう…………。
し、視線外す?
え。
でも感じ悪くない、かな……?
うん。
そのまま見てよう。
あたしはそう決めて、見てることにした。
――――コンコン。
決めた矢先に玄関のノック?!
ちょっと、あたしのちっぽけな覚悟は?!
ねぇ!!
意味なし?
絶対意味ないよね?!
だって執事さん、ノックと同時に目線外したからさ……。




