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変人公爵一家の義娘  作者: 双葉小鳥
第一章 変人公爵一家の義娘
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第七話 憧れの絵本の王子様

 あたしはニコラでニコなの。

 お父様たちがそう呼んでくれる限り。

 その間だけは、あたしは化け物じゃないから。

 普通の人間になれたような気がするの。

 あたしは旦那様に拾われて。

 奥様に抱きしめられて。

 若様に名前をもらった。

 使用人の皆や、レナンの人たちはあたしを無視しない。

 挨拶するとちゃんと挨拶を返してくれる。

 他の人から見ると、些細なことかもしれない。

 でも、あたしはとっても幸せ。

 でもね。

 なんでだろ。

 この幸せは長くは続かないような気がするの。

 おかしいよね。

 こんなに幸せなのに、そんな風に感じるなんて。

 でも不意に、不安に駆られるの。

 この幸せが心無い他者に壊されたら、って……。

 お爺たちの時のように、見てることしかできなかったら……。

 昔、お婆に読んでもらった絵本。

 あれに出てくる主人公は、金色の髪に赤い目の王子様。

 背中に右側だけの黒い翼。

 あたしと同じ異形。

 その王子様はある日、王様からの命令で、戦争にいくの。

 そこで、王子様は化け物の力で、敵を倒した。

 王子様はただ、大切な家族を守りたかったの。

 そして、大切な家族が守るものを守りたかった。

 例え。

 化け物と呼ばれ、恐れられ、蔑まれても。

 王子様は守るの。

 大切だから……。

 王子様は化け物としての力で、怪我をしない。

 だけど、心はボロボロになっていくの。

 人間を大勢殺すから。

 殺さなきゃ、大切な人が殺されてしまう。

 大切なものを奪われてしまうから。

 だから王子様は、迫ってくる敵を殺す。

 そして、戦争は終わった。

 でも、王子様は囚われた。

 攻めてきた、元は敵国の人間に。

 王子様静かにそれを受け入れた。

 それで平和になるならと……。

 王子様は誰よりも、平和を強く望んでいたから。

 でも、そんなこと。

 力があったから出来たこと。

 あたしは王子様のような力はない。

 それでも、強くなりたい。

 大切なみんなを守れるように。

 強く……。

 でも、誰もわかってくれない。

 『けがをしたらどうするの』ってお父様とお母様。

 黙ってあたしを見つめるお兄様と執事さん。

 結果。

 猛反対された。

 でも、お兄様が言ったの。

『護身術ぐらいは教えておいたほうがよくない?』

 って。

 そしてそれに続く縁起でもない言葉。

 一瞬でお父様とお母様が青ざめた。

 それから直ぐ、お父様に剣を習えてもらえることになった!

 とっても嬉しかったの。

 でも、子供用の怪我をしない剣を、握らせてもらえるようになったのは、つい一年前。

 お父様が、あたしが剣を握ることを渋ったから。

 だからその間。

 執事さんに護身術を教えてもらってた。

 人間の急所とか。

 ナイフの投げ方とか。

 色々なもので剣を持つ相手を倒す方法とか。

 ホントにいろいろ。

 でもその中に、包丁の磨ぎ方がある。

 護身術に必要なのかな……。 

 あたしにはわかんない。

 でも執事さんが、『便利だから覚えておくといい』って。

 だから覚えた。

 なんか護身術と違うような気がしたけどね……。

 気のせいだって、思うことにしたんだよ。

 だって聞く勇気無なかったんだもん……。

 すっごく良い笑顔で。

 真っ黒な笑顔だったんだよ……。

 あたし怖くて怖くて、首ふり人形みたいになっちゃったもん。

 でも執事さんもおかげで、少しだけど、力を手に入れた。

 他人までは守れないけど、自分を守る力。

 あたしはまだまだだけど、皆を守るために強くなるの!

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