第四話 報告
「あ、忘れてた……」
「ちゃんと言ってきな?」
「うん。じゃぁ言ってくる!」
あたしは走って、この時間ならいつもリビングにいるお母様のとこに行った。
相変わらず無駄に長い廊下。
小走りで急いでるけど全然つかないや……。
って、走ってるとこ執事さんに見つかったら怒られちゃう。
あたしは慌てて小走りをやめて、早歩きに変えた。
やっとのことでお母様のいるであろうリビングに着いた。
今は使用人じゃないから、ドアをノックしない。
――ガチャ。
あたしは室内を覗いて、ソファーの上で何かの刺繍をしてるお母様を見つけた。
真剣な顔でもなく、楽しそうな顔をしているわけじゃないお母様。
ただたんに、布と針、糸があったら刺繍してるって感じ。
なんだかちょっと声をかけにくかった。
ちょっとだけ迷ったけど、こうしてる時間がもったいないから、勇気を出してお母様に声をかけた。
「お母様」
「あら、ニコ。今日はお休みするの?」
声を掛けたら、お母様は針を動かすのをやめて、ゆっくりこっちを向いた。
向けられた微笑みは、以前のような無邪気さのようなものは無くて、陰りがあった。
あたしはそれが悲しい。
以前の明るいお母様に戻ってほしいよ。
「うん。だから、これから王都の図書館に行ってくるね」
「そうなの? 執事さんに送ってもらうの?」
「ううん。ディティナに乗せて行ってもらおうかなって。ディティナの気分転換もかねてさ」
「そうね。ニコにもディティナにも息抜きは必要よね。気を着けるのよ?」
優しい声。
でもあたしには、微笑みと同じように、陰りみたいなものがあるように感じる。
「はい、お母様」
あたしはそう返事をして、リビングの扉を閉めて、来た道を歩き出した。
ついでに、お母様たちの変化で良い事もある。
以前のように心配ばかりで、外出時に一時間以上話を聞くことがなくなったの。
とっても嬉しいことだけど、お母様たちが悲しそうなのはイヤ。
お兄様が居た時みたいに笑っててほしい。
それに、二年前。
絵本に書かれていたことが本当なら、なんとしてもお兄様を見つけたい。
それで、あたしの大切な家族がもとに戻ると思うから。
お父様に無理してじゃなくて、いつもみたいに楽しく笑ってほしい。
お母様が前みたいに、無邪気に笑う顔が見たい。
ウィルロットさんが、お兄様の髪で作った細いミサンガを見て、一人泣いてほしくない。
執事さんが朝早くから、とっても悔しそうに、髪の毛だけが入ってるお兄様のお墓掃除をしてるのも知ってる。
お兄様を知っている人は皆。
二年たった今でも、苦しんでいる。
中でもスティアナ様は、手首を切って自殺をはかった。
幸い。何かを感じたルファネスさんが見つけたから助かったんだけど、スティアナ様は言ったんだって。
『どうして死なせてくれなかったの?』
って。
ルファネスさんは『焦点の合わないうつろな目で見てくる妹が怖かった』って言ったんだ。
それと『兄貴失格だな』って、自嘲してた。
スティアナ様の自殺未遂で、レティさんが心配して四六時中彼女の傍にいる。
それは王様がルファネスさんになっても変わらないんだって。
スティアナ様の病状は、お兄様に続いて前の王様が死んじゃったこともあって、深刻らしいの。
あたしがちょっと前に見たスティアナ様は、痩せて、顔色がとても悪かった。
でも、ちょっとずつ笑顔を取り戻しつつあるって言ってたよ。
ウィルロットさんがね。
スティアナ様から、ウィルロットさんを通して手紙が届いた。
『心配かけてごめんなさい。
ニコちゃんも心配なんだよね。
ゴメンネ。
あたしもニコちゃんみたいに前を向いて、頑張ります』
そう書かれていた。
あたしは何もしていない。
でも、スティアナ様の救いになれたのなら、嬉しいな。
そんなことを考えて歩いていたら、お屋敷の外に出た。
あたしは沈んでた気分を振り払うように、頭を左右に振って、厩に向かって駆け出した。
そして、入り口に着いたとき。
ちょうどマーティさんが、ディティナを中から連れて来ているところだった。
誤字脱字いっぱいです。
編集がめんどくさいです……。
なので放置です!
脳内変換でよろしくお願いします<m(__)m>




